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アンナリーザは今日も元気 ~私の娘は規格外~ 作者:和久井 透夏

第4章 魔法の学校は町の中♪

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#34 アンナリーザは期待している

「いよいよ明日から魔術学院の入学試験ね! 楽しみだわぁ~!」
 ウキウキした様子で母が言う。

 今日は魔術学院の入学試験を前に、母達やリアの家族と一緒に以前来た店で食事会をしている。
 今回からはクリスとニコラスも一緒だ。

「毎年この季節になると町全体が賑やかになるわよね~」
「年に一度の一大イベントだからな」
 リアとブルーノさんがニコニコと話す。

「レーナ、その入学試験とはそんなに大々的なものなのですか?」
 ずっと大人しく話を聞いていたニコラスが不思議そうに首を傾げながら私に尋ねてきた。

「ええ、魔術学院の入試は不正が無いよう衆人監視の状態で行うのだけれど、毎年それに合わせて出店が出たりしてちょっとしたお祭り騒ぎなの」
 その昔、魔術による不正が横行して問題になった結果の対策だったらしいのだけれど、私の代では既にただのお祭りと化していた。

「へー、だから最近町が活気づいてたんだね」
「入試が始まったら、一ヶ月位この調子よ。毎年二十人の募集に対して受験者が一万人前後いるけど、各地の予選で百二十八人まで絞られて、最終試験を学院のあるこの町でやるんだけど、この町でも予選があるから、ずっとこの調子なの」
「一万人!? かなり集まるんだね……」
 驚きの声をクリスがあげる。

「まあ、国内にある他の十一の魔術学院の予備試験も兼ねてるし、記念受験者も多いもの。毎年だいたい基礎的な内容の一次試験と二次試験で二千五百人ちょっとまで削られるわ」
「何次試験まで残れたかが魔術予備校のクラス分けの目安にもなってるんだよ~」
「二次試験まで合格したら、他の魔術学院の入学試験の受験資格がもらえるんだ!」
 私が説明すれば、デボラちゃんやダリアちゃんも横から話に入ってくる。

「ちなみに、この町にあるオフィーリア魔術学院が最難関と言われていて、最終試験まで残れれば他の魔術学院ではまず受かるって言われてるわ」
 私は補足説明を入れる。

「最終試験まで残ったなら、浪人してオフィーリアを受けるって人が多いんだけどね~あ、ちなみに私とダリアは去年最終試験までいったんだよ~」
「今年こそ絶対受かるんだからっ!」

 デボラちゃんの言葉を受けて、ダリアちゃんが元気に意気込む。
 それは初耳だった。
 毎年最終試験までいっても残念な事になる人は多いけれど、今年はぜひとも頑張ってほしい。
 多分、アンナリーザは今年の試験で受かるから、二人が一緒なら何かと安心だ。

「そういえば、レーナは十歳でその最難関な魔術学院に入ったらしいけど、普通は何歳くらいで入るものなの?」
「入学試験は年齢制限もないし、六十代の新入生とかもたまにいるけど、私の時は十三歳以上だったらちらほらいたかしら?」
 だけど、年齢の分布も本当に年度によってまちまちなので、具体的に何歳くらいとは言えない。
 私の最年少合格記録は未だに塗り替えられてはいないらしいけれど。

「受験生は予備校に通ってる人の他にも魔術師の家系で、家庭で魔術を教わってきた人や、特定の魔術師に師事してる人とか、既に冒険者として活動している人とか結構まちまちかしらね」
「一回受験してみてから予備校に入る人も多いけどね。既に魔術学院に在籍しているか卒業している以外の魔法の素養がある人なら、誰でも受験できるから毎年多くの人が受験するんだよ」
 リアやブルーノさんまで横から話に入ってくる。

「それにしても、アンちゃんはどこまでいってくれるかしらね~、この歳で上級魔法を使うくらいだし、いきなり四次試験くらいまで残って予備校の特進クラスに入りして、もし翌年合格したら、レーナの最年少記録を更新しちゃうわね!」
 目をキラキラさせながら母が言う。

「お母さん、流石にそれは夢見すぎよ。でも、アンナリーザちゃんはのみこみも早いみたいだし、再来年くらいには受かるかもしれないわね」
 リアは母をたしなめつつアンナリーザに笑顔を向ける。

 まあ、アンナリーザの年齢を考えれば、そう考えるのが普通だろう。
 むしろ、身内の欲目が入ってこれかもしれない。
 けれど、私はいきなりアンナリーザが合格してもおかしくはないと、本気でそう思っている。

「ちなみにレーナは何回くらい受験したの?」
 ワインを傾けながらクリスが尋ねてきた。

「六歳から予備校に通ってたから5回かしらね。八歳になる頃には毎年最終試験まで残ってたわ」
「レーナは予備校でも飛び級を重ねて七歳の頃には特進クラス入りしてたわね~早朝から夜遅くまで予備校に通って、休みの日も朝から晩まで図書館で勉強したり、外で魔法の練習したりしてたわ~」

 懐かしそうに母が言うけれど、私がそうなったのは単純に家にいたくなかったからだし、日々の鬱憤を攻撃魔法の習得するためのエネルギーに変えた結果でもある。
 まあ、その経験のおかげで後に気に入らない大人を隙をついて倒せるようになったので、よしとしよう。

 だけど、当時十歳の頃の私よりもアンナリーザは高度な魔法を十分に使いこなしているし、魔術の理解度も高いと思う。
 現時点で十分合格水準に達していると私は思っている。

 そして迎えた一次試験。
「結構人はいるけど、思ったより空席が目立つね」
 きょろきょろと辺りを見回しながらクリスが言う。
 その日、私は朝から母やリア達と一緒に、クリスとニコラスを連れて受験会場へと来ていた。

「まあ、一次試験は地味だもの。受験生の身内や不正がないか監視するために雇われた魔術師くらいしかいないわよ」
 一次試験はクイズ形式の基礎的な二択問題と、筆記試験からなる。

 始めに町の中心にあるスタジアムに集められた受験生は、魔術に関する基礎的な二択問題を会場で受ける。
 芝生が茂った側と地面の側があり、出された問題に対して正解だと思う側に移動して答えるという簡単なものだ。

 それを千人ちょっとの参加者が半分になるまで繰り返す。
 そして残った半分の参加者だけが筆記試験を受ける権利を得る。
 筆記試験は基礎的な内容で、六十点以上で合格となる。

「それにしても、この席は下のただ座る場所があるだけの席と違って、屋根もある上調度品も豪華なのですが、なぜなのです?」
 ニコラスが不思議そうに私に尋ねてくる。
「母のコネよ」

「ダリアちゃんデボラちゃんもアンちゃんも大丈夫かしら……」
 私が答える隣の席で、母が心配そうにスタジアムを見る。

「一次試験は基礎的な問題ばかりだし、そう心配する事もないと思うけど」
「違うわ、三人とも可愛いから悪い虫が寄ってこないか心配で……」
「毎年それ言ってるけど、三人ともちゃんと自衛は出来そうだからそっちも大丈夫よ」
「何か起こってからじゃ遅いわ」
 母の発言を受けて、リアが何言ってんだコイツという顔で母を見る。
 今日も元気に孫馬鹿が炸裂しているようだ。

「それならご安心ください、もしアンを狙うような不届き者がいれば、私が氷付けにして噛み砕いてやりましょう」
 ニコラスが、キリッとした表情でなにやら言い出したけど、その不届き者本人にそんな事言われても……という気しかしない。

「あら、随分とアンちゃんを気にかけてくれているのね」
「もちろんです! アンは私の家族ですから!」
「まあ、それは頼もしいのだけれど……」
 母が言いながら私の方をチラチラ見てくるけど、気にしない。

 それからしばらくして、二択問題が終り、筆記試験も問題なく終わり、三日後には採点結果が学院の前の掲示板や、新聞で知らされた。
 アンナリーザもダリアちゃんもデボラちゃんも合格している。

「え、それにしても、アンナリーザの点数低くない?」
 私は新聞を見て固まる。
 まさかの六十五点ギリギリ合格だった。

 試験問題も公開されていたので、アンナリーザにどう答えたのかやらせてみる。
 選択問題は満点だったけれど、穴埋め問題や記述問題が壊滅的だった。
 スペルミスが酷いうえに、字が致命的に汚い。

 しかも、『必要に応じて魔法陣を再構築する』と答えるべき所を『やりたいことにあわせてよびだすもようをビャッってかきかえる』みたいな答え方をしている。
 内容は理解できているはずなのにこれでは伝わらない。

「……アンナリーザ、試験が終ったら文字の練習しましょうか」
 そういえば、まず本を読めるようになる事を優先したせいで、文字を書かせる事については結構早い段階で切り上げてしまっていた。
 というか、そんな状態でよく魔物を召喚するための複雑な魔法陣を正確に描けたものだ。

 ……案外、私も親の欲目で見ていたのかもしれない。

 一瞬でも、そう思っていた時期が私にもある。
 一次試験を通過した際、私は娘を過大評価していたのでは、とちょっと不安になったけれど、二次試験が始まったらそんな考えも変わった。

 二次は基礎的な魔法、三次は実用的な魔法、四次実用的な魔法の応用を見る試験だったのだけれど、その全てにおいて、アンナリーザは優秀な成績で通過したのだ。

「すごいわすごいわ! この歳でもうこれだけの成績が出せるなんて! アンナリーザちゃんは天才ね!」
「えへー私えらい?」
「偉いわ~すごいわぁ!」

 新聞で四次試験通過を知った母が朝から押しかけてきてアンナリーザに抱きつきながら大喜びする一方で、ニコラスが私の後ろにソワソワした様子で並んでいる。
 これは別にアンナリーザのハグ待ちの列ではないのだけれど……。

 どうつっこんだものかと思っていると、ひとしきりアンナリーザを褒め倒した後、同じく四次試験を通過しているダリアちゃんとデボラちゃんも抱きしめてくる、と母は転移魔法で姿を消した。
 随分と楽しそうだな、と思っていると、スカートの裾を引っ張られる。

 視線を下せば、両手を広げて、目を輝かせているアンナリーザが私を見上げていた。
「ママ、私すごい? えらい?」
 そう言わんばかりにアンナリーザの目は期待に満ちている。

 いやいや、そんなに周りが甘やかしてばかりではいかがなものだろうか。
 だいたい、私は最初からアンナリーザは今回合格する事も可能だと思っていたし、だったらこれくらい通過できて当然…………。

「もうっ! すごいし偉いに決まってるじゃない! アンはママの自慢の娘なんだからっ!」
 気が付くと、私はそう言いながらアンナリーザに抱きついて頬ずりをしていた。
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