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7月攻勢
作:高崎 甲太



第6話 集結地


1985年 7月1日 0600 名寄市智恵文
 前日の非常呼集が1342にかけられたので皆は昼の外出もパチンコもやめて全て戦闘準備に励み、深夜のうちに出発した。そもそも駐屯地にだけ部隊があるわけでなく名寄市中に車両や倉庫があったので市内の各場所から装甲車や自走対戦車砲が目的地に向かって走り出した。
 第3普通科連隊は名寄北部の小さな町「智恵文」で集結して第26普通科連隊が超越(追い越す)したのを確認した後、別命により前進することになっていた。第7師団が戦闘のを走り敵の防御陣地に穴を開け、後方を追求する第2師団がその穴を拡張すべく歩兵による塹壕戦を実施する。
 「敵は1個方面軍なのに2個師団で対応できるのか?」
 「単位あたりの兵力と士気が違います。敵と相まみえれば分かります。敵は民族混成軍です。」
 藤井中隊長の問に先任の坂本が答えた。
 敵は日本人民軍と「日本」を冠しながら肝心の日本人の姿は4割から5割程度。多くは日本語が通用しないアジア系と青い目の大男が占めている。
 
 「もう第7師団は美深峠を越えているのかな?」
 美深駅の入り口の前で堂々と擬装用の草木を装着した73式APCの車長席から頭を出した小隊長の桐野3尉が同じく機関銃手席から頭を出した小隊陸曹の真嶋1曹に問いかけた。
 「そろそろ抜けても良い頃ではないですかね。当面は敵陣地にぶつかりに行くようなきつい任務もなさそうなのでいいもんです。」
 「昔はあったんですか?」
 「あったもなにも、7師団よりも前に行って前衛中隊になって敵の討ってくる方向にめがけて走っていったことが何度もありましたよ。まったく、装甲車のよく履帯が切れるからいつも徒歩だったよ、とほほ。」
 「はは。」
 小隊長は笑えない親父ギャグに愛想笑いをした。

 やがて昼も近くなるとAPCの表面は触るのもはばかれるくらい熱くなった。
 「智恵文は誰もいないな。ここの警備をする予備自衛官の奴らしか見えないぜ。」
 真哉達の車両は駅近くにある郵便局の中に半分尻を出す形で隠蔽された。
 「スーパーにまるまる入った奴らは幸せだよ。クーラー聞いてるところで店内のジュースをかけてジュージャン(ジュース賭博じゃんけん)だ。」
 「葉書じゃんしますか?」
 「やめてくれ川本。そんなに遺書なんて書けないぜ。」
 真哉と早川士長は郵便局の前で歩哨にたっていた。当面の任務は怪しげな民間人を誰何してゲリラを割り出すことだが、この静かな雰囲気の中では誰もいそうになかった。
 「しってるか?この間合コンした子でここの出身者がいたが、ありゃあ相当なおっぱいだったぜ。」
 「そんなにでかいんですか?」
 早川は相当な合コン好きで知られており、中隊の誰もが「いったいどこで網をひろげているのだか」とあきれるくらい飲み屋でコンパを開催していた。彼のうまい所は上ににらまれる前に独身幹部や単身赴任の陸曹にコンパへ誘って丸め込むところだった。
 「バストは90だ。もうメロンを下げているようなものだな。あれでパイズリしたらチンポが骨折するな。しかし、破片から身を守ってくれるだろう。きっとあの子だけは生き残れる。おっぱいがあるから。」
 「な、なんと。」
 「興味持っただろう。」
 イヤらしい目つきで確認されるとさすがに抵抗してしまいたくなるものだった
 「おまえ、受験するならここで戦っている場合じゃないだろう。夏は天王山らしいぜ。それともやめて道産子とやるか。」
 真哉は答えることができなかった。そういう道もあると考慮すると下半身が口をつぐませた。

1985年 7月1日1220 美深峠
 そのころ、第7師団の各戦車連隊は美深峠を越えようとしていた。
 「攻撃前進支援射撃最終弾、だんちゃーく…今」
 75式155mm自走砲の射撃が終わり、オホーツク海へ向かう国道沿いの森の中で隠れていた戦車の一群は一斉にエンジンを吹かし、隊列を組んだ。
 「前進用意。前進」
 7月1日1220、第7師団は予想以上の進撃速度で敵の主陣地があると目されていた美深峠を突破した。これまでに遭遇した敵はDMZ(非武装地帯)で1個機械化小隊、美深峠で1個戦車小隊程度。
 同時に第3普通科連隊にも前進命令が届いた。
 
  












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