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7月攻勢
作:高崎 甲太



第1話 警戒勤務


 Einigkeit und Recht und Freiheit sind des Gluckes Unterpfand. 
 統一、正義そして自由は幸福の証し (ドイツ国歌の一部より)
 
 名寄市は西日本最北の都市である。そして、第3普通科連隊が駐屯することで知られている。つねに最前線の部隊は最新の装備品をあてがわれているので、この部隊を見れば10年後の九州所在部隊の姿を見ることが出来る。そして、その上に位置する第2師団は機械化歩兵師団である。つねに紋別に本拠地を置く人民軍第3方面軍とぶつかり合い、多くの犠牲を出しながらも国民の自由を守るために耐え、勝利を信じて戦ってきた。しかし、常に最新の装備品が助けてくれるわけではない。装甲車が故障・被弾したら徒歩で前進し、豪雨の中も重装備で登坂し、陣地に体一つで突撃しなければならなかった。最新の通信機は突然、故障し、若い陸士(兵士)が伝令任務で長距離を走らねばならなかった。最後に頼れるのは人間であり、それは厳しい使命感がなければ耐えられるものではなかった。

1985年6月15日 名寄市東部 下川特別区 
 「射手 目標 120 左から右へ横行中のBTR」
 川本真哉1士は84mm組長である高木吾郎3曹の射撃号令にあわせて、非武装地帯に侵入してきた武装車両にねらいを定めた。
 「弾込めよし!」
 新隊員同期の花田満男1士が無反動砲の乾いた金属音をならした。
 「射て」
 組長の号令と同時に真哉は引き金を引いた。白い煙と抜けるようだが耳を劈く「ぽん」という音があたりを支配し、84mmする金属の弾丸はまっすぐにBTR装甲人員輸送車に向かっていった。
 3人の無反動砲組(84組)は一目散に後方へと駆け足で退避した。同時に彼らがいた場所への射撃が行われた。
 BTRは炎上した。
 「班長! 前方150 BTR1両が炎上 中破!」
 観測していた早川士長は大声で班長に知らせていた。
 「了! 31,こちら33 おくれ!」
 班長である鬼塚2曹は無線機で小隊長を呼び出した。
 「あいつ、でるかなあ。運幹(運用訓練幹部)に指導されてでられなかったなんて演習の時だけにしておくれよ。」
 鬼塚2曹は、自衛隊歴3年しかないたった「1年で幹部になってしまった一般大学出身(U課程)」の桐野3尉に不安を思いながら無線の応答を待った。
 「こちら31 おくれ」
 「D地域(非武装地帯)現出のBTR 撃破 じ後の指示 おくれ」
 とりあえず不安が的中しなかったことに鬼塚は安堵の息を吐いた。
 「陣地を変えて、引き続き監視を継続せよ。」 
 「了解」
 鬼塚はすぐにあごを次に向かう場所に向けて、若い陸曹達に指示した。
 真哉はすでに無反動砲を持ちながら走ってきたので息を切らしていた。BTRを撃破したので、すこしは休まして欲しい。少なくとも彼の目はそう訴えていた。
 「真哉、満男。また走るぞ。今日は天気も良いし、駆け足日和だな。これだけ訓練すればお前達も来年はレンジャーかな?ははは。」
 高木3曹は意地悪く二人、特に真哉をみて笑って見せた。
 「そうですね。」
 内心、俺は1任期でやめる。満期金さえあれば東京に帰って大学に行って、スーツを着て仕事をするんだと自己主張していた。
 「レンジャーに行くまえにまた人民軍と衝突するんじゃないですか?」
 そんなところにいきませんと満男はその意を言葉ににじませた。
 「大丈夫。お前らの代わりは今年入ってくる2等陸士がやってくれる。安心して行ってこい。勿論、バッジつけてかえってくるよな。」
 戦闘の方が楽だったと言われるレンジャーへ行くのかと思うと、真哉も満男も胃が痛くなる思いだった。












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