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ルームメイト 作者:帆摘
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6話

「ああ、3日前に帰ってきた。それよりも今ちょっといいか?」
「いいわよ〜。忍のお願いなら何だって聞いちゃう!」そう言いつつ、奥の扉から出て来たその男ははたと私に視線を落とす。
「これ、何とかしてやってくれ。」そういって奴は私を指さした。
「はあ?!」私の素っ頓狂な声が店内に響く。サロンの奥でヘアカットを受けている客と店員が一気に振り向いた。
「ふうん・・・、忍がここに女を連れてくるなんてね。まあ、いいわ。ここじゃあ目立って仕方がないし。奥にいきましょ。」
そう言って、一見イケメンなのに言葉遣いが女っぽい男の人が私の肩を抱いて強引に歩きだす。
「ちょ、ちょっと!」言いかけた私の言葉を鋭い視線でねじ伏せた忍が一緒についてくる。またまた店の中でも大量の視線を浴びつつ私は奥の部屋へと拉致された。

パタンと扉が閉まる。其処には沢山のマネキンとウィッグ、それとヘアカットの練習でもしていたのだろうか、切りかけのウィッグらしき物まで置いてある。部屋に入ってすぐ、オカマっぽいお兄さんが私の顎に手をかけ強引に上を向かせた。なんでこんな事をされるのか泣きたくなってくる。大体今日は買い物に来たはずなのに!

「へえ・・なかなかね。確かにあんたがほっとけないのも分かるわねぇ。お嬢ちゃん、名前はなんて言うの?」
お嬢ちゃんって・・・私はむっとしながら答える。「中川・・・遥です。」
「遥ちゃん?可愛い名前ね〜。私のことはジェリーって呼んでちょうだい♪今中学生ぐらいかしら?」ガンッと殴られた様な衝撃を受ける。いくら童顔でも今年から大学生に向かって中学生はないだろう。
「大学一年です!」明日からだけど・・。
「あら?そうなの?まあいいわ、ともかく其処に座ってちょうだい。」手早く私にてるてる坊主の様なマントを被せ、眼鏡を取られた。いきなり視野が悪くなる。
「あの、一体なんなんですか?眼鏡返して下さい!」
「ああ、心配しなくて大丈夫よ。すぐに終わるから・・」こいつも奴の同類か?人の話を聞かないにもほどがある。
「ヘアトリートメントは必要なさそうね。癖のない良い髪質だわ。それに、綺麗なうりざね顔ね。肌質も良さそうだし・・こういうタイプってメイクも映えるのよね。ねえ、私の好みにしちゃっていいのかしら?」そう言って男は忍に声をかける。
「ああ、頼む。」忍は壁にもたれたまま腕を組んで答える。
さすがの私もここまで来ると、自分がどういう状況にいるのか分かってくる。それと同時に少し怖くなって来た。こんな高そうなサロンでヘアカットなどした日にはいくら請求されるか。

一気に青くなった私を見て、私の髪をもてあそんでいたジェリーが口を開く。
「あら、どうしたの?心配しなくていいわよ?わたしがちゃ〜んと綺麗にしてあげるから。」そういうと後ろから、また忍の声が聞こえてくる。
「ああ、こいつの腕はモデル界やセレブの間でも定評があるから心配するな。」

いや・・だからそうじゃなくて・・・
「私、お金持ってません・・・。」だって、今日は食材の買い物に来たのだ。確か私の財布には入っていて1万円ぐらいの現金しかない。
ぷっと頭の上で吹き出す音が聞こえた。
「ああ、そういう心配してたの?大丈夫よ。このお返しはしっかり忍から貰うから・・・ねえ、しのぶ?」そういって笑いを含んだ声で壁際に立つ男にちらっと目を向ける。
一瞬いやそうな表情を顔に浮かべたが、忍は「ああ」とだけ短く答えた。

それからあっという間に私は髪を切られ、化粧までしてもらっていた。人に化粧をしてもらうのなんて初めてだ。いつも外に出るときは、日焼け止めぐらいで化粧らしき化粧などした事もなかった。だが、人に肌を触られるのがこんなに気持ちよいとは驚きだった。
「・・・どうかしら?」暫くしてジェリーの声が響いた。
「上出来」満足そうな忍の声が返ってくる。

はっとして目を開けるが、眼鏡を取ったままだと、何も見えない。
ジェリーがゆっくりと眼鏡をかけてくれた。「本当は眼鏡じゃなくてコンタクトにして欲しい所だけど、今日は仕方ないわね。」
そこに映ったものを見た途端、夢かと思った。鏡に映った見慣れた眼鏡、だがまったく違う自分が其処にいた。
「可愛い系のメイクも似合うとは思ったけど、こういうゴージャスなのも良いかと思って。どう、気に入った?」何処か遠くで声が聞こえる様な感覚に囚われながら私はゆっくりと頷いた。
「あとは、洋服ね。」「そうだな」と二人の声が聞こえる。
つい余りにも違う自分の姿にぼーっとしてしまったが、これでは奴らの思うつぼだ。色々言いたい事はあるのだが、何から切り出せば良いのか迷っていると忍がまた強引に手を引っ張って歩き始めた。
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