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ルームメイト 作者:帆摘
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38/41

38話

あと1回で回想部分は終わりになります。ちょっと暗い展開が続きますが、話の展開上必要部分なのでおつきあい下さい。
ある週末の午後、俺は久しぶりに桐生真弓のコンパートメントを訪れていた。近頃、イライラが治まってきていた為か、あまり女を抱く欲求がなりを潜めていたが、真弓がしつこく電話をかけてくるので、出てきたのだ。
今まで色んな女を抱いてきたが、この女を抱くとまるで自分が捕食者ではなく獲物になった気分にさせられる。一番最初にメイドだった女に手ほどきを受けてから、女性経験は少ない方ではない。
だが、この女を抱く時は決まって最後には手綱を握られた気分に陥る。アジア系にしては目鼻立ちが整っているが冷たい眼差し、獲物をなぶるような愛撫の仕方、性の一滴でも逃さないと言った執拗で巧みなセックスに溺れながらもどこか薄ら寒いような感覚を覚えていた。

本能のどこかで、この女は危ないと警報をならしているにも関わらず、結局彼女との関係を切るまでには至らなかった。この事を後の俺がどれほど後悔したか筆舌に尽くしがたい。

「最近、あまり顔を見せないのね・・?何かあったの?」情事の後、Queen sizeのベットに起き上がった彼女が俺の顔を覗き込むようにして妖艶な笑顔を見せる。
「別に・・・。何でもないよ。」
「ふうん、そういえばこの間街で貴方を見かけたけど、あまり見ない感じの子と一緒だったわね。地味な感じの・・・。」
その言葉にぎょっとして俺は唾を飲み込んだ。
「・・・ただのクラスメートだよ。つーか俺が誰とつきあおうがあんたに関係ないだろ?」
「そう・・ね。」何やら考え込んだように俺を舐め回すように見つめながら彼女はつぶやいた。

それからしばらくは何事もなく、俺の人生にとって凪とも言える静かで穏やかな日が続いた。だが、今考えるとそれは本当に嵐の前の静けさだった。
今までつきあってきた女達とは今までのように頻繁にあってヤル事がなくなり、代わりにユリアと会う時間は比例して増えていった。今までとは違った俺の様子に女達がどういう反応を示していたかなどその時の俺は知る由もなかった。その頃からユリアの屈託のない笑顔が曇り、見えない所で傷が増えていたことなんて知らなかったんだ。

***

家に帰ってくると、幼なじみのゾフィーが俺を出迎えた。"Gifted"と呼ばれる天才的な彼女だが、俺に対する態度は年相応のそれに近い。ゾフィーの母親曰く、俺をしたって甘えているからだそうだが、小姑的な所だけは勘弁してほしい。
「またあの女の所に行ってたの?」開口一番ゾフィーは咎めるような口ぶりで俺に詰問してくる。もちろん何の事を言っているのかわかってはいたが、めんどくさいので適当にはぐらかそうと口を開く。
「何の事だよ?」
「わかってるんでしょう?あの桐生真弓っていう女の事よ。前にも言ったけど、あの女だけは止めといた方がいいよ?それに最近、忍ちょっと変わってきたし、、、何もあの女じゃなくても・・・」そういってゾフィーは少し何かを含んだように言いとどまった。
俺は深く考えずに切り返す。「まったく、お前は心配性だな。まあ、あれだ、別にお前が心配しなくても俺は俺でちゃんとやってるって。それよりも腹減ったな、なんか食いに行くか?」そういって俺はごまかすようにゾフィーの柔らかい頭をなぜた。

結局、その日は近くの店からピザを配達してもらい、食べていると、またゾフィーが口を開いた。
「ねえ、忍。この間、教授とのレッスンの帰りにユリアさんを見たんだけど・・・。」
「ん?何処で・・。」
「セントトーマス病院の入り口からふらふら出てきたのを車内からちらっと見えたの。」
「病院?見間違えじゃないのか?」
ゾフィーはその言葉に小さく首を振る。そして何かもの言いたげに俺を見つめるが俺にはさっぱりだ。
「フウン・・先週あった時は別になんでもなさそうだったけどな。風邪でも引いたんじゃねーの?」そう返しつつ、ゾフィーが俺の女に珍しく興味を示しているのが驚きだった。俺は自分のポリシーとしてつきあっている女をいっさい家に入れないようにしているが、何処から聞きつけているのか、(まあ別に隠している訳ではないから知ろうと思えば簡単だが)ゾフィーはその時々俺がつきあっている女達の事を大抵把握しているようだった。
つきあっているといってもユリアとは性的な関係はまだ持っていない。一度からかい半分にキスをしたらリンゴみたいに真っ赤になって、そういう反応を示す彼女がなんともおかしくて、いや、それよりも彼女と居ると何とはなしにほっとする自分が居る事を最近は認めつつ、俺なりに接してきたつもりだった。自分としてはかなりプラトニックだと思いながらも、上げた安物のペンダントを喜んでくれる彼女を愛しいと思い始めていた。

結局ゾフィーが何を言いたかったのかわからなかったが、執拗に、ユリアの事を気にするので、俺は明日学校に行った時にでもそれとはなしに聞いてみようと思ったのだが、それから1週間、俺は彼女の姿を見る事が無かった。さすがに気になって何度か電話をかけてみたりもしたのだが、全然繋がらない。

学内でユリアの事を知っていそうなやつはいないかと考えたが、その時俺は初めて、自分が彼女の交友関係や学内でどういった生活を送っていたかなど、いっさい知らなかった自分に気がついた。

次の週に入ってからもいっさい彼女と連絡が取れずにいらついていた俺の耳にある同級生の会話が飛び込んできた。大抵ランチタイムは女達と一緒に食べている事が多いのだが、俺のいらつきを感じ取ったのか、今日に限っては俺は遅めの昼食を一人で取っていた。
「おい、聞いたか?あの噂。」
「あん?」
「ほら、あれだよ、うちの学校の女がレイプされたってやつ。」
「ああ、あれってマジな話だったんだ?何?お前詳細知ってんの?」
「俺の親父が警察に居るからさー、ちょろっとおふくろと話てんの小耳に挟んだんだよ。結構ひどかったみたいたぜ?何人ものやつに廻されたらしいし・・。」
「うっわ最悪だな。犯人捕まった訳?」
「さあ、そこまでは知らない。でもやられた女は知ってるぜ。」
「マジで?誰だよ。」
「えーっと、なんてったかな・・1学年下の地味な女、ユリア・・ウィーデンバック?」
その言葉に俺は固まりついた。
「ちょ、おい、今の話本当か?!」俺は話していた二人の間に割り込み肩を揺さぶる。
「うわっ、な、何だよ、吃驚するじゃねーか!」
「今の話は本当かと聞いてるんだ!」
「は?つーか、何知らなかったの?まあ表沙汰にはなってねーけど、結構裏では噂になってるぜ。」
「そうそう、何?忍その女の事知ってんの?」
「いや・・・」俺は一気に脱力してふらふらと校門へ向かって歩き出した。悠長に授業を受けている場合ではない。そんな俺を不思議そうに二人の学友が眺めていたが、また自分たちの会話へと戻っていった。
学内ではユリアが極力俺と会っている事を知られるのを嫌がっていたので知られないようにはしていたが、それでも気づく奴は気づく・・。誰かユリアの家を知っているやつは居ないのかと考え込んでいた俺の耳に甲高い声が響いた。
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