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ルームメイト 作者:帆摘
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37/41

37話

大分間隔が空いてしまいました。。もう前回までの話忘れられてるかも・・w)
母が死んだ時、俺はまだ道理を知らない子供だった。普段から留守にしがちだった父親は母が死んだと同時にその寂しさを埋める故か、仕事に没頭し、今まで以上に逢う回数は極端に減っていった。
俺の始めての相手はその頃、おざなりに家を空けていた父親が寄越した家政婦だった。俺自身も性を知ってから、何か足りないものを埋めるかの様にそれに没頭していった。病気さえもらわなければ、相手は誰でも厭わなかった。
母の親友であった女は、ユリアが死んでから、俺を実の息子の様に、自分の子供と同じ様に扱って来た。たまに帰って来る父親と、俺の事で何度も喧嘩をしているのを耳に挟んでいる。「まだ子供なのよ?もっと自分の息子に気をかけたらどうなの?!ユリアが悲しむわ・・」
何回同じ言葉を聞いただろうか・・・。

その頃から俺は頻繁に家を空ける事が多くなった。大抵は女の家に入り浸り、飽きがくるとまた次の女へと蝶のように飛び回り、そんな中で親父が連れてきた桐生真弓という女と関係を結んだ後も、後腐れない相手を見繕ってはかりそめの快楽に浸っていた。

高校生になってからのある日の午後、学校帰りに女達とぶらぶらと繁華街を歩いていた時、何故かその日はいつも以上にイライラして無意識に振り上げた手が、対面から歩いてきた女の顔に当たり短い嗚咽と共にカチャンと音が響いた。
足下に色気も素っ気も無い黒斑の眼鏡が転がっていた。どうやら誰かの顔を意識しての事ではなかったとはいえ、殴ってしまったらしい。
さすがにまずいと思って足下にあった眼鏡を拾い上げた。
「すみません、ちょっとよそ見してしまって、あの、大丈夫ですか?」

そこに居たのは小柄な少女とも言える女だった。ぱっと見ただけで自分の周りには到底居ない地味な洋服をまとった小さな少女。が、痛むのか頬に手を当てたまま、俺を見上げたその瞳に一瞬心を奪われた。
かつて見た事のあるスミレ色の瞳・・。美しいと評判であった母とは似ても似つかぬ容貌だが、その瞳はまぎれも無く・・・。
一瞬ぼーっとした俺の脳裏に小さな声が響いた。
「大丈夫・・です。あの、その眼鏡返してもらえますか?」
はっとして、手に持った眼鏡をわたそうとしたが、片方の眼鏡のレンズにひびが入っているのを見つけ戸惑う。
「やだ、忍、それ壊れちゃってるじゃない。」一緒に居た女達の一人がめざとく傷を見つけていい募る。
「え?」眼鏡なしではあまり良く見えないのか、女達の声を聞いた小柄な少女が一瞬固まる。

「あ、その、本当にすまない。この弁償はするから。」俺は先ほどまでいらだっていた事も忘れてあわてて言い繕う。遠慮する少女を説き伏せて、そこで、一緒に居た女達と別れると、俺は強引に彼女を引っ張って近くの眼鏡屋へと連れ込んだ。

そこは大通りにある店でなかなか品揃えもよさそうな店だ。今の時代、その場で視力検査を受け、数時間で新しい眼鏡を作る事は容易だ。萎縮する彼女だったが強引な俺の態度に諦めたのか、一番安い眼鏡のフレームの所へ行くとおずおずと一つのフレームを手に取った。それは直前まで彼女がつけていたものとさほど変わらない安っぽいフレームだった。
「別に金の心配することないんだから、もっと良いのを選べばいいのに。」つい思っていた事が口をついて出てきた。
「いえ、そこまでは・・それにレンズもありますし、私半分出しますから。」と小さくつぶやく女に少しイラッとして俺は某メーカーのフレームを押し付けた。
「絶対こっちの方が似合うって。本当なら眼鏡じゃなくてコンタクトの方がいいんじゃねーの?せっかく綺麗な瞳してんだから・・。」
小動物のように萎縮する彼女を見ながら言い募る。
「いえ、コンタクトは・・。」とまた下を向いて小さくつぶやく。確かに今日自分の周りにいた女達と比べると地味な顔だが別段不細工というほどでもない。
なんだかんだと拒否する彼女を無視して、俺は自分の持っていた方のフレームを店へ預けると、眼鏡が出来上がるまでの間、時間をつぶすために彼女の手を引っ張って近くのカフェに入った。注文を終え、少し赤くなった彼女の頬を冷やす為の氷とフキンをもらって改めて俺は彼女と向き合って話しだした。

「そういえば、まだ名前聞いてなかったよな。あんた名前なんて言うの?」
「ユリア、ユリア ウィーディンバックです。」
一瞬聞き間違いかと思った。確かにユリアという名前は別段珍しい名前ではないが、まさか母と同じスミレ色の瞳をもつこの少女から同じ名前が出てくるとは思ってなかったのだ。
俺の動揺ぶりに気がついたのか、小さく首を傾げて俺を見つめる彼女に気づかれまいと俺は言葉を発する。
「そうなんだ。ユリアか、良い名前だな、この辺のミドルスクールに通ってるのか?」

少女は少し頬を染めると幼子がやるように少し口をつぼめて言った。「違います。私、貴方と同じスクールに通っているんですよ、忍さん。」
彼女がハイスクールだという認識と共にこの小柄な少女が自分の名を知っていた事にも驚く。
「なんで俺の名前・・」
「・・・・学内の有名人を知らない方が珍しいです。でも、確かに同じクラスを取った事がないので、面識はありませんが、噂は色々と聞こえてきますから。」

その噂というのが良いものではないという事は重々に承知しているが、同じ学校に通っているという事実を聞き、何故かほっとする自分におかしく思いながらその後、眼鏡が出来るまでの間、たわいもない話をしていた。
眼鏡が出来た後、困ると言い募る彼女を押さえて全額を支払い薄い銀と青のフレームをした彼女は服装はださいものの、すっきりとした顔つきに見え、俺は自己満足に浸りつつユリアと別れた。

今まで学内で俺に近寄ってくるタイプの女とはまったく違うユリアに俺は男女のしがらみを超えた何か新しいものを見つけたような気がしていた。それから、学内で彼女を見つけて話しかけようとすると、あからさまに避けられるので、ある日今まで通った事もなかった図書室で彼女を見つけてからは、時々そこで話をするようになっていた。

今まで回りに居る女というと、幼なじみで妹のようなゾフィー以外、ほとんど体の関係を持っていたが、容姿がどうこうというよりも、ユリアに対して俺はそういった感情をいっさい抱く事がなく、何故か彼女とあって話をするだけで、イライラした気持ちが穏やかになるのが不思議だった。

ゾフィーは年の割に頭の回転が早く、また俺のそういった感情の揺れを機敏に察知していたのか、今までつきあってきた女達の事ではうるさく文句を言っていたが、ユリアに関しては、もちろん手を出していなかった事もあるのだろうが、沈黙を守っていた。

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