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ルームメイト 作者:帆摘
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35/41

35話

「そう、それで、住所の方は判ったのかしら?」
「ええ、こちらになります。」そういって男は1枚の紙を提示した。
「それと、もう一つ情報なのですが、どうやらその住所にお住まいなのは二人のようですね。」
「二人・・・?」
「ええ、流石にセキュリティーのしっかりしたマンションなので、うかつに聞き回ると言った事が難しくてですね、ハイ・・、ですが一応写真は撮れましたんで、お渡ししときます。」
「・・この子が?」写真に映っているのは、あの子とそして彼に手を引っ張られうつむきがちに歩いている娘だった。
二人と聞いて真っ先に思い浮かべたのは、あのこうるさい小娘だったのだが、提示された写真に映っている人物は自分の想像とはかけ離れた貧弱な娘だ。一瞬新しい女かと考えたが、今までに彼が付き合って来た女達とは見た目からして一線を画している。
「この子についての情報は?」
「いや、これ以上は流石に最初に契約していた内容以上の事になりますので。」とにやりと笑う男を前に女は小さく舌打ちした。
「まあいいわ。ありがとう。これは後金よ。」そういって女はバックの中から茶封筒を取り出すと目前の男に突きつけた。
男は静かに封筒の中身を確認すると、おちゃらけた笑い顔で「どうも」と言った。

女は組んでいた足を元に戻すと立ち上がり、颯爽とオフィスを出て行った。

***

その日、遥は夕方近くまで校内で制作をしているとポケットに入れてあったシルバーの携帯が勢い良く鳴りだした。このメロディーは忍からのものだ。遥はあまり携帯をいじるのが好きではなく、携帯でやる事と言えば、通話と、メールのみだ。普通友人達からかかってくる携帯のトーンも皆同じなのだが、以前忍が遥の携帯に自分のアドレスと電話番号を入れた時御丁寧に自分の分の着メロまで変えておいてくれたらしい。その為、忍からの電話だけは着メロですぐに判るようになっていて、また自分だけが特別な着メロになっている事に忍が痛く満足している事を遥は知る由もない。

「はい、遥です。」
「あ、遥、今何処にいる?」
遥はさっと腕時計に目を走らせた。もう7時を過ぎている。
「あ、すみません。お夕飯の支度して来てなくて・・えっと」続けようとする遥の声を遮るように忍が言った。
「夕飯は心配しなくてもいい、それより、今日は済まないが秋本の家に1晩泊まってくれないか?」
「・・真樹ちゃんの家に?何かあったんですか?」
「いや、まあちょっと色々あって。」
「色々・・・ですか。いいですけど、いきなり真樹ちゃんのお宅にお邪魔したら迷惑じゃないかな・・。」
「問題ない、秋本にはこちらから既に連絡してある。着替えとか必要なものは後で俺が精算するから買っておいてくれ。秋本から電話連絡があると思うから。」
「わかりました。・・・本当に大丈夫なんですね、忍さん?」
受話器の向こう側ではっと息を飲む様な音が聞こえる、そして数秒後、優しげな声が耳を打つ。「大丈夫だ。ありがとう、遥。秋本にもよろしく伝えておいてくれ。」

電話が切れた後、暫く無言で考える。そう、彼が電話を切る前に微かに聞こえた女性の声のことを・・・。小さく首を振るとまた手元の携帯が鳴りだした。
電話の主は真樹ちゃんで、待ち合わせ場所を簡単に決めた後、私はゆっくりと画材の片付けを始めたのだった。

***

「今の電話の相手が新しい彼女なのかしら?」
「・・あなたには関係ないでしょう?それにしてもよくここが分かりましたね?調べたんですか?」
「あら・・コワイ。いつからそんな表情に出す様になったのかしら・・。」
「茶化さないで下さい。それよりも一体何の用ですか?俺とあなたは、もうとっくに関係ないはずですが?」

遡る事約30分前、玄関のチャイムが鳴り響いた。一瞬遥が帰って来たのかと思ったが、遥はわざわざチャイムを鳴らす様な事はしない。遥にはいつも客が来た時には必ずカメラでチェックしろとうるさく言っている割に、その時の自分は何気なしに誰が来たのかも確認せずドアを不用意に開けてしまった事を後悔する事になる。

いかにも出来る秘書と言った様なファッションに身を包んだ女を一目見た時、俺は激しく後悔すると同時に大きくため息をつく事となる。
そう、其処に立っていたのはここ数日、いや数週間前に柾樹さんとの会話にでてきた本人、桐生真弓だった。
彼女の第一声は玄関から無遠慮に部屋を観察しながらの一言だった。
「なかなか良い所に住んでいるのね。」

いつかは向こうからコンタクトをとってくるだろうとは思っていたがまさかこんなに早くにやってくるとは思わなかった。そして、今ここに遥がいない事を心の片隅で安堵する自分がいる事に気付いていた。

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