挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ルームメイト 作者:帆摘
32/41

32話

しばらく忙しくて執筆できなくて、お待たせしました。11月からはファンタジーの方も進めて行く予定なので、少し更新速度が遅くなると思いますがこれからもよろしくお願いします。
ドキドキと胸の奥に響いてくる鼓動を聞きながら私は努めて平静な振りをしてうどんをつくり始めた。咄嗟に自分の口からでた言葉は昔読んだ漫画の受け売り・・ファーストキスはレモンの味・・・。なんて嘘つきなんだろう。
初めてのキスはちょっと苦い大人の味がした。自分の舌が彼のそれに絡められた瞬間、軽いショックと驚きでつい付き離してしまったが油断も隙もあったものじゃない。
そう・・本当に吃驚しただけ・・・・。
でも、何故・・?
ぐるぐると思考が回る。慣れか、一応手は手順通りに動いているが、心はここにあらずといった感じだ。だが、うどんが出来上がる頃にはその事実を心の片隅に追いやってしまっていた。

それから2週間がたった頃、いきなり兄の柾樹から電話がかかって来た。
「遥か?」
「うん、どうしたの?お兄ちゃん。珍しいね、こんな時間に。」今はまだ勤務時間のはずだ。
「ああ・・・まあな。それよりも、来週また仕事でそっち方面に行く事になった。視察も兼ねて、俺と・・あともう一人。まあ、色々あって本来ならホテルに泊まるとこだが、ちょっと気疲れする相手でな。悪いんだがお前の所に一泊させてもらえないか?」
お兄ちゃんがこういった泣き言?を漏らすのはとても珍しい。私は二つ返事で頷いた。
「わかった。忍さんにも聞いてみる。たぶん大丈夫だと思うけど。」
そういうと、兄はクスリと笑って言った。「まあ、あいつに拒否権などないけどな。」
なんだか分からないがいつの間にか親しく交流しているようだ。
「ま、俺からもメールしておくが、一応そう断っておいてくれ。」
「はーい。じゃあ、また詳細分かったら連絡してね。」そういうと遥は電話を切った。

「何なに?今のって柾樹さん?」真樹ちゃんが横から聞いてくる。
「うん、なんかお兄ちゃん、また来週うちの方に来るって。」
「遥さん、お兄さんがいらっしゃるんですか〜?」と間延びした声で質問してくるのは最近仲良くなった友人の和泉蝶子姫だ。もちろん、姫はあだ名だが、それにぴったりの華やかさと楚々とした雰囲気で人気のある彼女と友達になったのは、ある一件があったからだ。

***
上京してきてから、ずっと探していたバイト先。なんといっても、油絵の具や、キャンバス、油彩や絵の道具はお金がかかる。学費と生活費を苦しい中から親に捻出してもらっているのだから、絵の具代ぐらいは自分で働いて賄おうと職探しをしていたのだが、この不況のさなか、なかなか時間や給金に見合ったバイトは難しい。
その日も、ある仕事情報誌を見ながら歩いていると前方で言い争いが聞こえて来た。
「止めて下さい!」
「いいじゃん、俺らと一緒に遊びに行こうよ!」
「っつ!」
半目に涙を溜めた可憐な女の子が無理矢理男に手を引っ張られている。噂では聞いた事があるが実際にお目にかかるのは初めてだった。が、周りを通りすぎる人達は興味深そうにちらっと横目で見て行くだけで、誰も助けようとはしない。遥はその状況にむかっと腹がたった。もしこの場に忍がいたら無謀な事をするなと怒っていたに違いない・・がその時の遥はもっていた情報誌を丸めるといきなりそれを男に向かって投げつけた。上手い具合に丁度頭に当たって、男は短い悲鳴をあげた。
その途端に手を離した一瞬の隙を逃さず、遥はその女の子の手を取って走り出した。
「おい!まて、この糞女!」後ろで何か聞こえて来たが無視して走り続ける。私が男だったら新しい出会いの一瞬なのかも・・と考えながら。
「はあ、はあ・・あのっ、すいません、助けて頂いて。」
「気にしないで下さい。私あーいった人の事を考えない男は嫌いなんです。」
遥は改めてまじまじとその子の顔を見つめる。可愛い・・・くりくりとした茶色い巻き毛に
均整のとれた顔。さすがにナンパされるだけの事はある。
「あの・・・もしかして、中川さん?」
小さな口から出て来た言葉に私は吃驚する。私の事を知ってる・・?
「え?」
「わたし、西洋美術史のクラスを取っている和泉蝶子です。」
「和泉・・・ああ、そうだ、聞いた事がある。男の子達がすごく可愛いって騒いでいた子だ。」つい声に出して言ってしまっていた。西洋美術史のクラスは人数が多く、はっきり言って知らない人の人数の方が遥かに多い。
「え?」私の言葉に今度は目前の彼女が赤くなった。本当に可愛い。背丈も小柄な私とそう変わらないし、小動物といったイメージがしっくり来る。
「あ、あの、本当に有り難う御座いました。良ければ、お友達になってもらえませんか?」
「もちろん、こちらこそよろしくお願いします。」
***
などという、漫画の様な出会いを通して、今の関係になっている。真樹ちゃんともすぐに仲良しになって一緒に昼食を食べる事も多くなって来た。バイトの方は、とりあえず、近くのコンビニに頼み込んで来週から初仕事が始まる予定だ。
cont_access.php?citi_cont_id=582009661&size=200
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ