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ルームメイト 作者:帆摘
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3話

やたら顔の良い男の口から出て来た最初の言葉は「・・あんた誰?」という物だった。
それはこっちの台詞である。部屋番号はちゃんと確認したし、家の鍵だってちゃんと、預かっていた鍵で開いたのだ。ということはつまり、この男が不法侵入したと言う事だ。
私は男を睨みつけて言った。
「私は今日からこの部屋に住む事になっている者です!あ、あなたこそ、一体誰なんですか?」
男はゆっくりと首をかしげて暫く考え込むようにしていたが、やがてぽんと手のひらを打つとにやっと笑って形の良い唇を開いた。何だかやけにお色気ムンムンである。
「ああ、じゃあ、君がおばさんの言ってた子か、確かなんだっけ・・・中川・・はるか?」
私はびっくりしてまじまじと目の前の男を見つめる。何故この男が私の名前を知っているのか、それよりも今、おばさんって言った・・・?

「え・・?あなたは・・・?」
男はふっとかがんで私の頬に軽くキスをすると面白そうに言った。「俺の事、聞いてない?俺の名前、忍って言うんだけど・・・。」
いきなりキスをされた事にも驚いたがそれ以上に彼の放った一言は私の脳天を突き上げるような錯覚をおこさせた。
「しのぶ・・・さん?え?だってお父さんは姪だって・・・」
「ん?ああ、もしかして俺の名前で間違えちゃった?」
「じゃ、じゃあ、あなたが私のルームメイトなんですか?!」私は頭痛を抱えつつ聞き返す。

「そう。これからよろしくね、はるかちゃん♪」
一瞬目の前が真っ暗になったようだった。18年半生きて来てこの方、周りの友人らのように彼氏を作る事もなく、唯一接する異性は兄と両親のみという、ある意味箱入りで育てられた自分がまさか男と一緒に住むようになるなんて・・・嫌、待てよ、まだ今からなら探せば何処かアパートとか見つけられるかもしれない。
とふいに目の前の男がクスリと笑った。何だというのだろう。
「はるかちゃんって、考えてる事がすぐに顔に出るんだね。見てて飽きない。本当に君がルームメイトで良かったよ。」
「ちょ、ちょっと待って下さい!私まさかルームメイトが男だなんて思ってなくて、その、私困ります・・・。」慌てて反論しかけた私を制して忍さんが言った。
「はいはい、とりあえず落ち着いて、一緒にお茶でも飲まない?」
そう言われて気がついたが喉はからからに乾いている。私がゆっくりと頷くと、彼は私の手を取ってリビングへと戻っていく。先ほどからいきなりキスをされたり、大きな手で掴まれたりと私の許容量を超える振る舞いに私は翻弄されっぱなしだった。

イギリス製の茶葉だろうか、紅茶を入れてもらってほっと一息つく。たかが紅茶、嫌されど紅茶なのか、紅茶を入れる男性の手がこんなにも綺麗だとは思ってもいなかった。それに少し落ち着いて目の前のソファーにくつろぐ彼を見ると自然に顔が赤く染まるのが自分でも分かる。
本当になんて綺麗な人なんだろう。男に綺麗というのは少し間違っているかもしれないが、目の前にいる男性はぴったりとそれに当てはまる。ちょっとした仕草や何もかもが様になっていて、まるで一つの動く絵画を見ているようだった。

私の視線に気がついたのか、彼は目を上げてにっこりと微笑む。
「少しは落ち着いた?」
「あ、ハイ・・・。」とはいえ問題は何一つ片付いてはいない。これからどうしようか・・まずは家に電話して・・などと考えていると彼がゆっくりと話しだした。

「ねえ、まさか、ここを出て行こうと思ってる?」
私は目を上げて彼を見つめる。「え、あの、それはどういう意味ですか?」
「どういう意味もこういう意味も、そのままだよ。今君がここをでていっても、住むとこを見つけるのは難しいと思うよ?大学から立地の良いアパートなんかは既に埋まってるだろうし、それに君は油絵をやるんだろう?君にとってもこの部屋は理想だと思ってたけど、違うの?」

「そりゃそうですけどっ!でもいくらなんでも男の人と二人で住むなんて・・」と私はうつむきがちに抗議する。
「ああ、何、俺が君を襲うとでも?」
瞬間顔が真っ赤になる。「そんなことは言ってません!それにあなたのおばさんだって男女二人でこの部屋を使うって知ってたんですか?」

「ああ、あの人はそんな事気にしないよ。むしろ面白がってるぐらいじゃない?それに別に珍しい事じゃないでしょ?一緒に住むぐらい。」
「そりゃ外国とかならそうかもしれないですけど、ここは、日本です!」
彼はびっくりしたように私を見つめ、それから笑い出した。いきなり理由も分からず笑われた事に少し腹が立ってむすっとした私に彼は言った。
「日本人の女の子ってもっと色々とオープンだと思ってたけど、君みたいな子もいるんだ。まあ俺は相手してくれる女には困ってないし、君に手を出す事はないから安心して?そんな固く考えることないよ、マンションのお隣さんぐらいに思っといてくれればいいんだし。
あ、そうそう、アトリエは君の部屋から繋がっているし、俺は使う事ないから君一人で使ってくれていいよ。バスルームも二つあるから、プライベート守れるだろ?そのかわり、こっちのリビングとキッチンは共同って事で。」

この人・・・いくら顔とスタイルは良くても人の話を聞かない奴は最悪だ。とはいえ、確かに彼の言う通り、今から部屋を見つけるのは大変だし、こんな最高の条件はありえないだろう。なんだか、むかつく事も言われた様な気もするが、お互いに無関心で居れば済む事だ。
私は意を決意して言った。
「わかりました。これからルームメイトのお隣さんってことでよろしくお願いします。」
中川遥18歳、これが波乱の幕開けであった。
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