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ルームメイト 作者:帆摘
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2話

「ああ、その件なんだがな、お前、油絵をやるから、ある程度の広さがあってアトリエになる様な部屋があればって前前から言っていただろう?父さんたちの友人で、東京にその条件ぴったりの部屋を持っている人がいてな、お前の事を話したら、喜んで部屋を貸してくれるというんだよ。その人も有名な画家で、今はフランスに住んでいて、丁度部屋を誰かに貸そうと思っていた所なんだそうだ。家賃も信じられない程格安で貸してくれると言うんだが、一つ条件があるんだ。」

「条件?」
「ああ、なんでも今度ドイツからその人の姪がお前と同じ大学に留学してくるんだそうだ。それで、そのマンションには3つベットルームがあって、もう一つの部屋は合同のアトリエに、そしてあと二つの部屋は1つづつ自分達の部屋として使って欲しいとの事なんだが・・」

私はぼーっと父さんの言葉を聞いていたが、頭がはっきりしてくるに従ってそれがこの上もない条件だと考える。つまり、部屋を貸してくれる人の姪と一緒に住む代わりに部屋を安くで貸してくれるという事だ。しかもアトリエ付きの。こんな良い話は無いように思えた。
「ぜんぜん、大丈夫だよ、お父さん!同じ大学に通う友人と一緒に部屋を共有するんでしょ?あ、でもその子、私と同じ年なのかなあ?しかもドイツってまさか外国人?!私ドイツ語なんて喋れないけど大丈夫かなあ・・・。」ちょっと不安もある。

「確か、お前っより1つ年上だと言っていたな。ドイツ人の血を引くクオーターだと言っていたが、もちろん日本語は達者らしいぞ。日本の大学に進むぐらいだからな。」

「へ、へえ、そうなんだ。なんかお父さんのお友達ってインターナショナルな人なんだね。」
「元々は、私の知り合いなのよ。仕事の関係で知り合いになったんだけどね。」とお母さんが横から口を挟む。
お母さんの仕事は翻訳家だ。そんな母と知り合いなのだというと、どこかの出版社ででも出会ったのだろうか。ドイツやフランスなど、憧れはあるが未知の世界の話。だが、自分の好きな画家達の出身地であるヨーロッパには是非とも訪れて見たいという夢もある。
ドイツからやってくるというその彼女と友達になって色々と聞いて見たいと私の夢は広がった。

私の思い煩いはこの日を境にさっぱりと無くなり、それから卒業までの間、私はゆっくりと家族との交わりを楽しんだ。初めに思っていた一人暮らしとは違うが、大学がとても楽しみに思えた。
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それから数ヶ月がたち、私は一人で上京して来た。今までは、神奈川県の片田舎に住んでいたのだが、東京は高校時代に友人と遊びに来て以来だった。最初、お母さんも一緒に荷物の片付けなどの為、ついて来てくれる事になっていたが、突如、急な仕事が入り来られなくなった。
今日の昼には、私の荷物を載せたトラックが新しいマンションにつく事になっている。

私は住所をもう一度確認しつつ、駅からゆっくりと歩き始めた。この地図によると、駅から徒歩7分のところにあるらしい。駅から大学までは、乗り換え無しの1本で行ける。本当にこんな立地の良い場所を破格の値段で借りられるなんて私は幸せ者だ。
新しい土地にわくわくしながら、鼻歌を歌いつつ私は、てくてくと道を歩いて行く。
暫く歩くと、閑静な住宅地が広がり、お目当てのマンションの前に辿り着いた。
「ここかあ・・・」私は大きなマンションを見上げる。一介の学生が住むには高級すぎるマンションだと思う。もうルームメイトの子はついているんだろうか・・明後日には入学式があるのだからもう、先に部屋に入っていてもおかしくはない。

おずおずと、マンションの中に入り、私はエレベーターのボタンを押す。12階。ほとんど最上階に近い。グイ〜ンと音がして鏡ばりのエレベーターが急速に登り始めた。
エレベーターを降りて、私はある番号の部屋の前に立つ。1205室。ここが私の新しい家・・。
私は預かっていた鍵を鍵穴に差し入れゆっくりと回す。カチャリと音がして、鍵が開いた。
足下に置いていた手荷物を持って、中に入る。最初つんと鼻についたのは懐かしい油絵の具の臭い・・。玄関を入ると其処は広々としたダイニングキッチンとリビングが繋がるフロアだった。「わあ・・広い!」私は小さく叫んで、応接室へと足を運ぶ。
座り心地良さそうなソファーにモダンな家具、そしてオープンフロアーなキッチンが目につく。こんな夢の様な素敵な部屋は見た事がなかった。
部屋の両脇にそれぞれドアがついている。私はゆっくりとひとつのドアを開いた。広々とまではいかないが、ちょうど良い大きさの部屋から、またもう一つ扉があり、その先は、お父さんが言っていたアトリエになっているようだった。

アトリエの床は大理石の様なフロアになっており少し温度が低い。私は暫くの間、感動のあまり身動きひとつせず立ちすくんでいた。そう、誰かが私の肩をつかむまでは・・・。

いきなり後ろから誰かに肩を掴まれ私は小さく悲鳴を上げて振り向いた。そこには、モデルばりの長身を誇る足の長い男性がものうげに私を見下ろしていた。
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