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ルームメイト 作者:帆摘
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18/41

18話

低い足音に水音を響かせながら柾樹が方眉を少し上げて問い返す。「友達・・?」
長い付き合いだ、その一言の中に様々な思惑が含まれているのを遥は敏感に感じとる。何も、今日に限って友達を呼ばなくても・・とそう考えているのだろう。
「うん、その、今日お兄ちゃんがくる事話したら是非あいたいって・・・。」
「女か?」若干嫌そうな響きを含ませ即座にそう聞いてくる兄の端正な横顔を覗き見る。高校時代、生徒会会長を務め、全学年の幅広い人望を集めていた兄の元には様々な女子からの熱い視線が注がれ、妹である私を通して兄に近づこうとする女の子達も少なくはなかった。
表面上、優しく紳士的に接してはいたが、中には勘違いから暴走してしまう女子もいて、度々面倒に巻き込まれた兄の脳裏には昔の苦い思い出が甦ったのだろう。
「ううん、えっと、お友達は両方とも男の人で、一人は学部の先輩で、もう一人は・・その・・・」頭の中で猛烈に忍さんとは学部も違うしどうやって説明しようかと考えていると、兄の少し冷ややかな声が帰って来た。

「男・・なのか?」その声にはっと顔を上げると、若干驚いた様な兄の顔が目に映った。
「あ、うん。」
「そうか・・・。」と兄は少し考え込んだまま歩を進めた。

***
そう、なぜか、今日家には二人の男性が待っている。一人は忍さん、そしてもう一人は・・
数日前、ランチタイムに兄が来る時の詳しい打ち合わせをしていた時、何故か庭園の垣根に隠れるようにしていた先輩がひょっこりと顔を出して来た。
「き〜ちゃった・・。まさか遥ちゃんが、建築学科のあのイケメン君と一緒に暮らしてるなんて・・・俺の可愛い遥ちゃんが、まさかねえぇ・・・・。」
「せ、先輩!」
「いつから其処に・・というか、なんでそんなところに隠れてるんですか?!」
「ん〜?遥ちゃんたちのくる前からだけど・・・逃げてたからに決まってんじゃん、あの鬼教授から。」
「また何かやらかしたんですか?」呆れたように真樹ちゃんが冷たい視線を落とす。
「そんな事はどうでも良いけどさ、遥ちゃん・・・」
「な、なんですか?」私はずずっと寄って来た沢田先輩から逃れるように若干身体を引く。
「今の話、本当なの?てか、あれだけ深刻そうに話してたら嘘じゃないよね〜。あーマジ俺ショックだわ。つーか、遥ちゃんあいつと付き合ってんの?」
全部聞かれていた・・と思った途端に自分でも顔色が青ざめたのが分かる。
「ちょっと先輩!」真樹ちゃんが止めに入る前に私は決意を決めて言った。
「別に付き合ってるとかじゃないです。只のルームメイトですから。」
「ふ〜ん・・・?そうなんだ・・・。で、まあ遥ちゃんのお兄さんがくるのに、ルームメイトが男だということがばれたらやばいってこと?」
「そうです・・。」
「なるほど、そっか、そっか。」そして先輩は目元まで隠れている長い前髪をかきあげて、切れ長の綺麗な瞳で私を見つめ、にっこりと笑った。
「じゃあさ、俺も遥ちゃんのお友達ってことで、そのお兄さんと合わせてよ。そしたら、この事は秘密にしとくからさ。」

変人だとは聞いていたが、何故秘密にするという駆け引きで、自分の兄に会いたいというのか、まったく遥にはわからなかったのだが、真樹ちゃんもため息をついて仕方ないと言うように私を見ている。
私は緊急連絡用に教えてもらっている、忍さんの携帯に連絡を入れ、簡潔に事情を説明すると、忍さんも嫌そうな雰囲気が声に現れていたが、最終的に何故か、二人一緒に兄を迎える事となったのだった。

***
「ここか?結構良い所に住んでるんだな。俺の所とは大違いだ。」マンションにつくと兄が笑って言った。確かに、今お兄ちゃんは、会社の社宅のアパートに住んでいる。一度母と訪れた事があるが、お世辞にも綺麗な建物とはいいがたかった。
エレベーターを上がり、部屋の前までやってくると、チャイムを押す。はーいと中から真樹ちゃんの声がして、扉が開かれた。
「あ、忍さん、えっと、うちの兄です。」玄関先で、私がとりあえず兄を紹介する。
「どうも、遥がいつもお世話になっております。遥の兄の中川柾樹と言います。」ぺこりと兄が頭を下げた。
「初めまして、笹塚 忍と言います。どうぞ宜しく。あの、玄関で挨拶もなんですから、リビングの方へどうぞ。今、遥と私の共通の友人も二名ほど来てるんですが・・・。」そう言って真樹ちゃんはちらっと奥のリビングに視線を走らせた。

「ああ、先ほど遥から聞きました。すみませんね、急にお邪魔してしまって。」靴を脱いでそろえると、真樹ちゃんに案内されて、兄がリビングの方へ移動する。私もうゆっくりとその後をついて歩いて行く。よしよし、今の所、兄は少しも疑ってはいなさそうだった。
「気になさらないで下さい。ちょっと課題の事で一緒に勉強しようという事になって来てるんですよ。今日、遥のお兄さんがくる事は知ってたんですが、それでもかまわないと言うので・・。遥は人気者だから、そのお兄さんにも是非あってみたいって。」真樹ちゃんの返答に私は、胸の中で賞賛する、なるほど、勉強会って言っとけば良かったのだ。さすが真樹ちゃん、頭がいい!でも、私が人気者っていうのは少し違うと思うけど・・・。
「そうですか・・・。」兄が小さく頷いた。
そしてリビングとダイニングキッチンに繋がる扉が開かれた。
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