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ルームメイト 作者:帆摘
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14話

相談・・・その言葉を聞いた時に嫌な予感がした。まさか彼女はここをでていくつもりなのかと。だがそれでは相談とは言わないかもしれないと思い返し、おそるおそる聞いてみる。
「何かあったの?俺が居ない間・・」
「いえ、そう言う訳じゃないんですが・・・。実は先ほど忍さんが帰って来られる前に家の母から電話があったんです。それでですね、兄が・・来週こちらに出張でくるんですが、こちらに挨拶に来るって言ってて。あの、家の家族まだみんな知らないんです。忍さんの事はみんな女性だと思っていたものですから・・・。」
「・・なるほど。つまり俺が男だとばれると困るって事?」
「まあ、有り体に言えばそうです。」目前のルームメイトは頷いた。

「ふうん、結構お固い家なんだね。うちの親とは大違いっても、家は親父しかいないからな・・。で、そのお兄さんってあの写真に映ってた奴だろ?」
「はい。」
自分には兄弟が居ないからわからないが、わざわざ妹の住居に挨拶に来るなんてシスコンか?などと自分の事は棚に上げて色々と失礼な事を考えていたが、どうも彼女は真面目に悩んでいるようだった。

「もし・・・、俺が男だってばれたらどうなんの?」
「それはっ・・。たぶん、この部屋を出てどこか違う場所に移る事になると思います・・。でも私、まだバイトも見つけてないし、ここより良い部屋なんて見つからないってわかってるから、本当ならここにいたいんです。」
確かに彼女がでていくなんて許せる事ではない・・・。何故自分がこんなに彼女に執着するのかまだわからないのだが、彼女がここをでていくのは断固阻止するべきだ。
「つまりさ、俺が男だってばれなきゃ良いんだろ?」
「まあ、そういうことになりますね。」
「女装・・・とかしてもばれるだろうしなあ。俺結構タッパあるし・・。」
くすっと彼女が笑う。その笑い方がとても可愛らしくてつい目を奪われた。
「忍さんの女装ですか?きっとお似合いだとは思いますけど・・でもやっぱり無理がありますよね。」

しばらく考えていた二人だったが、ふと思いつきを口に出してみる。
「じゃあさ、遥ちゃんの信用できそうな友達に頼むってのはどう?誰かいない?頼めそうな人・・。」
そう言われて頭に浮かんできたのは真樹ちゃんの顔だった。真樹ちゃんなら、頭の回転も早いし、事情を話せばなんとかしてくれるかもしれない・・・。
「そう・・ですね。ちょっと聞いて見ます。」私は後片付けをしながら頷いた。我ながら不思議だ。最初はルームメイトが男だと言う事が分かって1〜2週間は何とはなしに居心地の悪さを感じていたはずなのに、いつの間にか、ここに居るのが当たり前・・・ううん、とっても心地よく感じている自分がいる。
忍さんも、私生活の素行態度はお世辞にも良いとは言いがたいが、お互いある程度の距離を保ちつつ上手くやってきた。実際、毎月手渡される、食費もすごく助かっている。広いアトリエを自分一人で使える。こんな物件は他にはないと言う事を大学が始まって新しい友達ができると、より実感した。何も悪い事をしている訳ではない・・・でも、お兄ちゃんなら、この状況を見てどうするだろうか?自分の事を可愛がってくれているのは、十分に承知しているが、たまに過保護すぎるぐらいの執着を示す兄の事を思いため息をついた。

***
次の日の金曜日、私は講堂につくと真樹ちゃんの姿を探す。少し離れた窓際に見慣れた姿を見つけ、私は駆け寄って挨拶をする。
「おはよう、真樹ちゃん。」
「おはよ、遥〜。どうしたの?息切らしちゃって。鼻の頭が赤くなってるよ。」クスリと笑いながら真樹ちゃんが私の鼻を指で弾いた。
「ほんと?走ってたからかなぁ。まあいいや。あのね、真樹ちゃん、相談があるんだけど、後で時間ちょっと良いかな?」
真樹ちゃんはちょっと吃驚したように私を見つめて言った。「わかった。じゃあお昼時間の時で良い?いつものところで。」
「うん。」

いつものところと言うのは、大学の校舎のハズレにある、昔建てられたという今は道具置きになっている物置の横にある小さな花壇。何故かそこにピクニックテーブルが置いてあり、たまたま入学当初迷って見つけたその場所は私のお気に入りで少し気候が暖かくなってきてからはちょくちょく其処でお弁当を広げていた。
午前中の授業が終わった後、私はお弁当を片手にゆっくりと校舎のハズレに足を運ぶ。するといつものピクニックテーブルに人影が見えた。
あれ、もう真樹ちゃん来てるのかな?だが、距離が近づくと共に、それはまったく違う人物である事が分かる。
「沢田先輩?」
少し長めの前髪をくしゃくしゃにしてテーブルの上にうつぶせて先輩が寝ていた。近くまで来て私はぴたっと足を止めて考える。いくら温かくなって来たとはいえ、まだ春先だし、あんな薄着で寝ていたら風邪を引いてしまう。疲れていそうだからおこすのは偲びないし、などと考えながら、もう一歩足を踏み出した所でいきなり先輩がむくりと起き上がり私の腕をぎゅっと掴んで来た。
「・・起きてたんですか。先輩?」寝た振りするなんて質が悪い・・。
「だって、こうでもしないと遥ちゃん、逃げちゃうでしょ?」
「逃げませんよ。でもどうしたんですか?こんなところで。」
「どうしたも、こうしたも無いよ。せっかくデートの約束取り付けたっていうのに、遥ちゃん、一向に顔見せてくれないし、何処に行ったら捕まえられるかずっと考えてたんだぞ!」
いや・・・そんなこと考えなくても・・と思いつつ、私は言った。
「あれ・・冗談かと思ってたんですが本気だったんですか?」
むっとした顔で先輩が私を睨む。
「当たり前じゃん。俺がそんな嘘をつくように見えるの?遥ちゃん!」
ものごっつい、見えます・・・。とは言えないのでどうしようかと考えていると、真樹ちゃんがこちらに向かってくるのが見えた。
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