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ルームメイト 作者:帆摘
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12話

家に戻るとすぐに忍さんが氷を包んだ袋にタオルを巻いて持って来て頬を冷やしてくれたが、その場には重い雰囲気が漂う。
「あの・・氷ありがとうございます。もう大分腫れも引いたので私は大丈夫です。」
「まだひいてないじゃないか・・。それに擦り傷も・・。」
そう、頬をひっぱたかれた時、彼女の鋭い爪で擦り傷も出来てしまっている。冷やすと気持ちよいが擦り傷がぴりりと痛い。

「本当に大丈夫です。それより、本当に良いんですか?彼女さん。」
「もう別れたんだから彼女でも何でも無いよ。」
本当にそんな事で良いのだろうか・・憮然とした彼の綺麗な横顔を眺めつつ小さく息を吐いた。曲がりなりにも彼女は私との事で誤解してああいう態度を取ったのだとすれば、いくらでも説明すれば済む事なのに。私は忍さんの彼女でも何でもないのだから。まあ、一緒に暮らしている事は黙っていた方が良いと思うけど。やましい事は何も無いけどね・・・。
私はゆっくりと立ち上がりつつ、むすっとソファーに腰掛ける忍さんに私は声をかけた。
「それじゃ、私、今晩中に課題を仕上げないと行けないので失礼しますね。」
実際こんな遅くなるとは思わなかった。寝てしまった事もあるが思わぬ時間を食ってしまい10時を過ぎたというのにまだ何も手をつけていない状態だ。

「あ、ああ・・」
様子のおかしい忍さんの事も少し気になるが、課題を仕上げないと、後が大変だ。
部屋から続くアトリエに入ると、バタンと扉の閉まる音がした。
(・・・出て行った?気を紛らわせに行ったのかな・・・。気になるけど、本当に真面目にやらないと課題終わらないかも。)
必死に課題を終わらせて寝たのは明け方だったが出て行ったルームメイトは帰って来なかった。一人で朝ご飯を住ませると鍵をかけ大学へと向かう。
昨日の腫れはほとんど引いていたが引っ掻かれた爪の跡は赤い筋となって残っている。いつもは化粧などしないが今日は傷を隠す為に薄化粧をしてきた。

教室に入ると真樹ちゃんが声をかけてきた。
「おはよ、遥。あれ・・・?今日なんか違うと思ったら化粧してる?どうしたの?すごい可愛い〜!」そういって私の顔を覗き込んで抱きしめてくる。
「ん?ちょっと遥、どうしたのよ、その傷?」
「あ、やっぱり目立ちますか・・・?」
「化粧してたのってそのせい?」
「はい・・ちょっと不注意で引っ掻いてしまって・・・はは」
「本当に・・・?」
う・・・やっぱり真樹ちゃんって結構鋭い所あるな・・。まだ知り合って間もないけど、彼女には隠し事とか出来ない雰囲気がある。どうしようかと迷っていると真樹ちゃんがは〜っと大げさにため息をついて言った。
「まあ、いいわ。今回は聞かないでおいたげる。遥ってすぐに顔にでるからこういうのって向いてないわよね。でも、何か困ったことあればいつでも私に相談してよ?」
心強い友の言葉に少し胸が熱くなる。
「はい。真樹ちゃん、ありがとう!」

あの夜の事があってから3日間、忍さんは家に帰って来なかった。もしかしたら私が居ない時に戻っているのかもしれないが、私が家に居る時はまったく出くわす事がない。一人で住むには広すぎるリビングはなんだか寂しい感じがする。
「今日も帰って来ないのかな・・・。」一応毎日夕食を作っていたが、もう既に3日分の夕飯の残りが冷蔵庫に入っている。3日前のものはさすがに食べてしまわないとやばそうだ。
私は冷蔵庫から残りものを出すと、レンジで温め夕飯を済ませてしまう。
洗い物を済ますと、丁度タイミング良く携帯に電話がかかって来た。
この着信音は、実家のものだ。私はあわてて手を拭くと鞄の中から携帯を取り出す。
「もしもし?」受話器の向こうから懐かしい母の声が聞こえて来た。
「ああ、遥?電話とるの遅かったわね、何してたの?」
「洗い物してたんだ。お母さんは元気?」
「もちろんよ。どう、大学の方は?念願の学生生活を楽しんでる?」
「うん、すごく楽しいよ。新しいお友達もできたし、すごい先輩とかも居るし・・」
「そう、それは良かった。そうそう、今あなたのルームメイトのしのぶさんはいらっしゃるの?忙しくて御挨拶しそこねたから、電話ででも御挨拶しとかないとね。」
「あ・・・えっと・・・忍さん、今忙しくて家に居ないんだ。」
「あら、そうなの?残念だわ。まあ、御挨拶はお兄ちゃんに任せとこうかしら。」
「え?」
「お兄ちゃんが丁度1週間後に東京に出張に行くから、その時に遥の所にも寄るって言ってたから。何も聞いてない?」
「う、うん・・・。」
「そうなの?まったくあの子ったら、いきなり行って驚かせるつもりだったのかしら・・」

電話を切ったあと、少しの間心臓がバクバクとしていた。お兄ちゃんが一週間後にやってくる・・?本当なら嬉しいはずなのだが、家族には忍さんが男だったという事実はもちろん伝えていない。それに、今は・・・。私は大きく深いため息をついた。
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