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ルームメイト 作者:帆摘
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11話

まさか見られているとは思わなかった。今までならこんな事ぐらいで動揺する自分ではないはずなのだが、すっと血の気が引いたのが分かる。
「見てたの・・・?」
「え?ああ、はい。すみません。ちょっと遠目からだったんですけどすごく素敵で一枚の絵を見ている様でした。」
「そう・・。」返事をしながらむくむくと苛立ちが募る。自分でもさっきまで機嫌が良かったのにまたこんな風に苛立つのが解せない。
「えっと、なんて言えば良いのか分からないですが、とりあえずいっぱいご飯食べて眠ったら元気になると思うんですよ。」
目の前の彼女は何も分かっていない。分かってはいるがイライラしたまま口を開く。
「別に、彼女と別れたとか、付き合ってるとかそういう話じゃないよ。そんな事君が気にしなくてもいい。」何故か冷たい口調で突き放してしまう。
一瞬彼女の顔が少し曇る。そんな顔をさせたかった訳ではないのに・・だが一度芽生えてしまった刺は己の口からもっと大きくなっていく。
「君も・・・誰かいい人ができたんじゃないの?講堂に向かってやたら目立つ男の人と歩いてたでしょ?」

彼女の白い肌がほんのりと赤身を帯びた事を俺は見逃さなかった。
「もしかして、忍さん見てたんですか?あの人沢田先輩といって、3年の先輩なんですけど、すごい人なんですよ。油絵一つとっても色彩とか、テクニックとか本当にすごくて、それなのに、彫刻や日本画まで、幅広くフィールドワークしてて、すごい賞いっぱいもらってるんです。」
俺が聞きたいのはそんな話ではない。
「・・・付き合ってんの?」自分でも驚く程冷たい声が響いた。
ぎょっとした顔の彼女と目が合う。ふるふると小さく首を振って彼女が言った。
「付き合ってないですよ?あ、でも今日デートに誘われましたけど・・・でもあれもたぶん、今期出す予定の作品、それは彫刻の方なんですけど、それでフラストレーションが溜まってるから、きっと私をからかって発散してるんです。」

そんな訳無いだろうが・・・。目の前ののほほんとした彼女を見てため息をつく。と、そこに料理が運ばれて来た。
「へい、おまち!お嬢ちゃんは牛丼並盛りだね、そっちの男前の兄ちゃんは牛すき鍋定食。」
途端に目を輝かせて、彼女が言った。「おいしそうですね、忍さん。温かいうちに食べましょう。」それから一時話を中断して二人は黙々と食べ始めた。
その後、彼女を押しとどめて二人分の食事代を払って店をでる。二人で千円にも満たない。大抵女と食べに行くと、こんな安上がりにつく事は無いのだが・・。
「すみません、支払ってもらって・・。でもおいしかったです。御馳走様でした!」彼女がぺこりと頭を下げた。
「いいよ。こんな安上がりの食事で悪かったな。」
「安上がりっていっても、ここは学生の拠り所ですよ?安くておいしくて量がいっぱい!完璧じゃないですか?」

それからまた、たわいもない話をしながらマンションへと向かって歩いていると、先の電柱のあるところに今朝見た女性が立っているのが見えた。
あちらも同時にこちらを捕えたらしく、綺麗にお化粧された顔が見る見る間に歪むのが見えた。あっと思った時には彼女は走りよってきて、私はいきなり頬を叩かれた。
突然の事で驚きの方が強かったのだが、それから後、彼がすごく怒って、彼女と言い合いをした後、彼女が泣きながら去って行くのが見えた。
しばらく、ドラマを見ているような展開にぼーっとしてしまったが、すぐに私は彼の腕を引っ張って言った。
「し、しのぶさん!彼女、泣いてましたよ?追いかけなくて良いんですか?!きっと彼女私の事を誤解してますよ?!」

が、彼はじっと私に目を落とし、その大きな手で私の頬を包み込む様にして触ると、辛そうに言った。「ごめん・・・傷つけて。早く家に帰って冷やそう。」
「私の事は良いですから、早く行って下さい!」
だが、彼は一向に追いかける様子もなく、ぐいっと私の肩を引っ張って自分の方へ引き寄せるとマンションに向かってゆっくりと歩き始めた。私は、頬は痛いが、先ほど去って行った彼女の事が気になって仕方がない。なんでこの人は平然としていられるのだろう。
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