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織田家の長男に生まれました 作者:いせひこ
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悲運の武将、松平広忠 壱

三人称視点です

松平広忠は大永6年、三河を支配する松平家の嫡男として生まれる。
しかし十歳の時に父清康が死去。若くして家督を継ぐも、後見となった大叔父の信定による岡崎城乗っ取りが開始される。

今川から臣従を強いられ、織田弾正忠家から圧迫されている状況では、若過ぎる当主に不安を抱いても仕方ないと言えたかもしれない。
それでも、幼い広忠は大叔父の行動が理解できなかった。
自分が頼りないというのは理解できる。
ならば何故、自分を支えてくれないのか?

天文6年には岡崎城を完全に手中に収め、松平家家臣もほぼ掌握した信定は、広忠の殺害を企てるようになる。
危険を感じた広忠は、天文8年、阿部大蔵定吉の協力を得て、伊勢に逃走する。
伊勢国、神戸に領地を持つ吉良持広の庇護を得て、同地にて匿われる事となった。

そして1月11日、その地にて元服の儀を執り行う。持広より一字を拝領して広忠と名乗る。
しかし同年9月、持広が死去し、その養嗣子である吉良義安が織田氏と通じており、広忠は庇護者を失う事になった。
信定が既に死去していた事もあって、大蔵定吉と共に三河に逃れる。

岡崎帰参は叶わず、長篠にて潜伏生活を余儀なくされる。
その後、岡崎帰参を願い、今川を尋ね、暫く滞在する事になる。

天文9年は広忠にとって激動の一年となった。
今川義元の計らいで牟呂城に移り、その後、松平信孝、康孝兄弟の協力により、岡崎帰参が叶う。

譜代家臣らは広忠を三河松平家の正当なる後継者として歓迎するが、やはり広忠は、大叔父信定に居城を奪われた過去を嘆いていた。
その過去が、彼に当主は強くあらねばならないという妄執を抱かせる事となる。
岡崎での地盤固めもそこそこに、広忠は兵を率いて隣国尾張国の鳴海城に向かって進軍を開始した。

長年抗争中であり、父清康を敗退せしめた織田弾正忠家の城を奪う事で、家臣達に自らの力を見せつけようとしたのだ。

しかし失敗する。
数こそ約三千と揃えたものの、多くは突然戦に駆り出された農民達であり、この進軍を支える軍備も整っていなかった。
しかも相手は広忠出陣の情報をかなり前から入手しており、鳴海城には城主の山口教嗣だけでなく、その主君である織田信秀の軍まで控えていたのだ。

兵力も士気も、そして将の才能も全て劣る広忠が勝てる道理は無く、彼は這う這うの体で撤退。
岡崎城を守るため、尾張からの途上にある安祥城の守りを固める。
ここで、自分が入って追撃してくるであろう織田軍を迎え撃てればこの後の展開は違っていたのかもしれない。

しかし広忠は、城代を父清康の大叔父である松平長清に任せ、千名の守備兵を置いて岡崎城に戻ってしまった。

ここに、織田信秀、刈谷城の水野忠政率いる約三千の兵が襲い掛かる。
主力は信秀率いる騎馬隊二千。
信秀は騎馬隊を北から、水野率いる歩兵一千を別動隊として南から攻撃を仕掛けさせた。

城攻めには三倍から五倍の兵力が必要と言われているが、南北からの挟撃に加え、先の敗戦で士気の落ちていた安祥城守備兵は劣勢に追い込まれる。
それでも松平勢は、部隊を南北に分け、北の騎馬隊を押さえている間に、南の水野隊へ逆襲を仕掛けるなど、壮絶な戦いとなった。

この時初陣として参加していた信秀の長男、織田信広は、自らの手勢十名と、信秀から借りた騎馬隊五十、合わせてわずか六十騎のみで安祥城西側から攻撃をかけ、城内への突入を果たした。

安祥城は森と深田に囲まれ、平地にありながら攻めにくい城であったが、西側は湿地帯ではなかったため、弱点となっていたのだ。

この一撃により城内は混乱に陥り、安祥城は陥落、織田弾正忠家に奪われる事になる。

松平勢は城代の長清を始め、五十名もの家臣が討死。
両軍合わせて千名を超える犠牲を出した凄惨な戦いとなった。

勝利したものの損害が大きい信秀は、信広に武功の報奨として安祥城を預け、古渡城に撤退。

天文10年、水野忠政は娘の於大を広忠に嫁がせ和睦を成立させる事に成功する。

こうして後に第一次安城合戦と呼ばれる戦いは終結した。
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