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織田家の長男に生まれました 作者:いせひこ
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輿入れの日 夜


於大の時と同じく、評定の間に俺と於広姫は並んで座っていた。

於広姫はこの時代の女性の平均身長より更に低く、恐らく130cm代だと思われる。
俺はつい先日、婚礼衣装を新調する際に測ったら、六尺四寸(約193cm)だってさ。
まだ成長する俺の身長。
これが長身の一族、織田家の遺伝子か。それとも前世で背が高かったのか。

まぁ、身長差がもの凄いんだよな。マジで大人と子供だよ。
ついでに言えば、俺20歳だけど、於広姫は12歳だ。
ちなみに数えだから、前世的には於広姫11歳だ。
小学生だよ。前世だと完璧犯罪だよ。
外国とかでは8歳を孕ませた80歳とかニュースで見た記憶があるから、人類的にはセーフなのかな?

となれば、現在の日の本では法律あるいは分国法で禁止されてないから、セーフだな。

於大は年齢にしては色気があって、この時代の常識にある程度慣れていたのもあって、抱くのに躊躇しなかったけど、於広姫は普通に子供だからな。
マジで小学生がおめかししてちょこんと座ってる感じだ。

しかも於広姫は、俺との婚礼が決まってから髪結い、つまり男子で言うところの元服を済ませたので、それこの時代基準でも子供なんじゃ? と思わなくもない。

「不束者ですが、よろしくお願いします!」

そう言って頭を下げる於広姫は、いかにも子供らしい、元気溌剌さを発揮していた。
明るく、活発な女性が好まれるこの時代において、この性格は評価が高いんだろうな。
外見も瓜実顔に切れ長の細い目、通った鼻筋、小さな唇、白い肌、とこの時代の美人の基準を満たしている。
体型? これからに期待かなー?

「こちらこそ、よろしく頼む。聞いているとは思うが……」

「はい。先達の方がいらっしゃるんですよね」

「うむ。其方には悪いが儂は……」

「いえ、全て父上より聞き及んでおります。私も武家の娘。それが婚姻を結ぶための条件なら、受け入れるのに吝かではございません」

「そうか、そう言って貰えると助かる」

「はい! これから色々、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします!」

うーん、本当に元気な子だ。

婚礼の儀は滞りなく進み、俺と於広は目出度さに騒ぐ家臣達を評定の間に残し、俺の寝室へと来ていた。
評定の間はほぼ宴会会場になっていたからな。
ちなみに婚礼の儀の出席者は、俺の家臣達に加えて、水野近守が居た。

一応礼儀として、今度佐久間全孝の娘と結婚します、的な書状を送ったんだけど、正直、書状の返事さえ期待していなかったんだよな。
なのに何故来るかね? この義兄は。

まぁ、当主の信元でも、刈谷城主の信近でもなく、近守が来た事で、水野家側の態度は想像できる。
文句は言わないが祝福もしない、というスタンスだな。

家格も弾正忠家との繋がりも、佐久間家の方が上とは言え、やっぱり自分の所の娘が側室で居るところへ、他所の娘が正室として入ってきたら良い気はしないよなぁ。

水野家へのお詫びは後で考えるとして、今はもっと重要な事がある。
結婚初日の夫婦がする事なんて一つだけだ。

ザ・初夜!

なんだが……。

「うーん、もう食べられません……」

ベタなのか、それとも数世紀早いのか、よくわからん寝言を口にして、俺の布団に横たわる於広。

うん、12歳だからね。
三々九度の盃で酔い潰れても仕方ないよな。

流石に酔って寝てる子に何かするほど俺も鬼畜じゃない。
酔い潰れてなかったら何かするつもりだったのか? と聞かれたら、イエスと答えるだろう。

だってもう俺の奥さんじゃん。
巨乳もいいけどツルペタもね。

むしろ、前世では犯罪だったし、絶対に手を出してはいけない存在だけに、こういう時には倫理観なんて邪魔なだけなんですよ。
道徳も引っ込んでやがれ。

「ふむ……」

眠る於広の髪を撫でる。
ふむ、サラサラだな。この時代だと女性は髪を洗わないって事多いんだけど、この日の為に準備したんかね?

ちなみに石鹸を作る知識が俺には無かったので、この時代の基本である、蒸し風呂にぬか袋で何とか清潔を保っている。
うん。城に居る間は於大と一緒だよ?
これからは於広も一緒さ。

婚礼衣装を脱いで既に襦袢姿だ。このままだと風邪を引いてしまうかもしれないな。
この時代の掛け布団である衾をかけてやり、俺もその中に入る。
これからの寒い冬、早く綿入りの布団か羽毛布団を作りたいところだ。

木綿の栽培は行われているらしいけど、基本的に京や奈良に送られていて、地方には入って来てないんだよな。
当然畑の場所も、栽培方法も秘匿されているから、何とか自生しているものを見つけてこちらで綿花の栽培を行わないといけない。
およそ七百年前の延暦の頃に日本に入って来たけど、一年で途切れたってこっちで聞いたから、その名残がどこかにあってもおかしくないんだけどな。

枕も件の、木箱の上に布取り付けた奴だからな、寝にくくて仕方がない。
髷が崩れる? 俺は毎晩風呂で解いてるから問題無いよ。
月代? あるよ。だってこの時代の武士だもの。
茶筅髷って悪い意味で目立つからね。
大丈夫。皆月代つき髷だから、恥ずかしくなんてない。
でも一本一本抜くのは面倒だから、わざわざ刀鍛冶に頼んで剃刀作って貰ったんだよな。
俺がそれで数日おきに剃るようにしたら、家臣達も真似し出したんだよな。

流石に俺みたいに専用の剃刀を使う人間はいなくて、大体が短刀を使ってるけどな。

さておき、流石にこの枕は寝にくいので、俺は削った丸太に布を巻きつけたやつを枕代わりにしている。
戦場では丸太を枕代わりにして、非常時にはこれを蹴る事で数人を一度に起こせるようになってた。
常に戦場を忘れず、とか言えば、この妙な枕も受け入れられた。

俺はこの自作枕に頭を乗せ、於広の頭には俺の腕を差し込んでやる。
癖で右腕を下にするように寝るようになっていたけど、これ逆に利き腕痺れて使えなくなるんじゃないかな?

まあいいか。
夫婦の寝室にそれは無粋だ。
右腕で腕枕をし、左手で於広の頭を撫でているうちに、俺にも睡魔が襲って来て、抗う事無く眠りに落ちた。


「申し訳ありませんでした!」

朝起きると幼女が土下座していた。
信じられるか? この目の前で見事な土下座を決めている少女、俺の奥さんなんだぜ?

「いや、もういいから、気にするな」

「いいえ! いいえ! 婚姻のその日に酒に潰れて眠り込んでしまうなど、妻としての自覚が足りぬ証です! この場で離縁を言い渡されるどころか、斬首に処されても文句は言えません!」

そりゃ首落とされたら文句言えないだろうけどさ。

「大丈夫だ、於広。儂らはまだ夫婦めおとになったばかり。時間はこれからいくらでもある」

「しかし……!」

顔を上げた於広の目には涙が溜まっていた。
俺は肩に手を添え、もう片方の手で優しく頬に触れてやる。

「気にするなと言っている。それに、於広の可愛らしい寝顔が見られたので、むしろ得した気分だ」

「そ、そんな……」

頬を赤く染め、目を逸らす於広。
この反応、間違いなく箱入りだな。蝶よ花よと育てられたのだろうけれど、愛を囁かれた経験はあるまい。

「ん……」

そのまま俺が顔を近付けると、察した於広が目を瞑ったので、唇を重ねた。

「初めての輿入れと初夜への覚悟で気が張っていたのであろう。長旅の疲れもあったかもしれんな。それを考慮し、酒を水に変えておくくらいの機転を見せるべきであった」

「そ、そんな事はありません! むしろ、介抱してくださった殿の優しは心に沁みております!」

「ならば、儂も謝らぬから、其方ももう謝るでない。お相子じゃ」

そう言って俺はウィンクして見せた。
ウィンクは通じなかったみたいだけど、俺の想いは受け取って貰えたようで、涙を浮かべながらも笑顔になった。

「改めて、これから儂の妻として、よろしく頼む」

「こちらこそ、酒に弱い不束な娘ですが、よろしくお願いいたします」

おお、中々ユーモアセンスあるじゃないか。
ただ固いだけじゃなくて、ちゃんと空気を和ませる事ができるんだな。

二人で頭を下げ、顔を上げたのも二人同時だったので、思わず同時に吹き出す。
そして無言のまま見つめ合い、顔が近付く。
於広を優しく抱き寄せ、俺達は再び接吻を交わすのだった。

あ、流石に朝っぱらからはしないよ。
夜に改めて、な。
という訳で元気一杯於広姫12歳(ただし数え年)。
勿論信広は彼女もきちんと大事にするつもりです。
史実で信広の正室とされる彼女ですが(ただし根拠不明)、名前も年齢も不明なので、当然オリジナル設定です。まだ成長期の信広と並ぶと、マジで事案発生としか思えないでしょうね。
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