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織田家の長男に生まれました 作者:いせひこ/大沼田伊勢彦
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輿入れの日


結局あの後、敵味方の遺体を収容してそのまま帰った。
後で追いついて来た、上野城からの伝令に、歩兵三百が接近中だった事を聞く。

そう言えば足止め頼んでたな。
新田しんでんの部隊に被害は無く、松平勢の有名な武将を討ち取ったそうだ。
よし、帰ってきたら褒美をやらないとな。
血鑓九郎とか、渾名からして怖すぎだろう。よく頑張ったな、新田。

こちらで討ち取った武将は安祥譜代七家の一つに数えられる、青山氏の当主、青山忠門。
同じく安祥譜代七家の一つ、植村氏の当主、植村氏明。
ちなみに俺がのした武将も安祥譜代七家の一つ、石川氏の分家の当主、石川清兼だった。
ついでに言えばのしただけで死んでない。

なんでも清兼の石川家は、三河浄土真宗の元締めらしく、これは今後の寺社勢力対策に役に立つと考え、目下説得中だ。
妻子が三河中部にある、浄土真宗の寺に居るそうなので、そのうち回収に行かせよう。
人質? その通りだよ。
子供は今数えで11歳で元服前という話。うーむ、忠誠を刷り込むにはちょっと育ち過ぎかな?

でも清兼の奥さんでその子の母親は於大の姉らしい。
清兼は岡崎城下の武家屋敷に住んでいたけど、織田方についた水野家の娘を一緒に入れる訳にはいかなかったけど、離縁するのも嫌だったんで寺に送ったらしい。
別に出家した訳じゃないそうだ。
於大の兄の水野信元もそうだけど、意外と嫁さんに深い愛情を抱いている武将多いよね。
信元は側室居るから一途って訳じゃないっぽいけどさ。

その繋がりで、奥さん連れて来た後は於大も含めて説得させてみよう。
母親と一緒に居るなら、子供も母さんが言うなら的に説得できると楽でいいんだけど。

ちなみに、他にも於大のお姉さんは何人か三河の豪族に嫁いでいるが、その殆どが水野家が弾正忠家についた時点で離縁されてるそうだ。
親父の都合で嫁に出されて、親父の都合で離縁されるのか。
やっぱり戦国時代の武家の娘ってそういう扱いなのね。

ウチの娘は(まだ娘が生まれると決まってないけど)できればそういうのとは無縁でいさせたいな。
となると、外に出すより、俺の家臣、せめても弾正忠家の家臣に嫁がせるべきか。
裏切りやすそうな家は駄目だな。信長の側近の家。

利家はまつ(・・)とラブラブだって話だし(まだ先の事だけど)、秀吉は奥さんから信長に浮気相談されちゃうくらい女好きだからなぁ。
勝家はちょっと年上過ぎか。
丹羽、滝川、森……。

まぁまだ先の話だ。保留!

それにしても、忠政さん、結構松平家と繋ぎ作ってたのに、意外とあっさり親爺に乗り換えたんだね。
それとも、親爺渾身の調略の結果なのかな?

そりゃ古居ふるいも、佐久間全孝の娘が正室に入るって聞いて、

「水野家よりは信用できますな」

って言う筈だよ。
思わず、

「絶対於大の前ではそれ言うなよ!?」

って胸倉掴んで凄んじゃったもん。
ごめん、古居。
でもお前もちょっとデリカシー無さ過ぎだと思うぞ?

考えてみれば、意外と俺の家臣って於大と関わらないようにしてる奴多いんだよな。
信用無いな、忠政さん。酒宴とかでは結構古居達と意気投合してたように見えたけどな。


そして今日は俺の正室となる、於広姫の輿入れ。
大名行列とはいかないけれど、護衛や嫁入り道具を運ぶ人足などが列を成して安祥城へとやって来た。
こういう時、俺は婚礼衣装でじっと待つべきなんだけど、着替える前に俺は於大の部屋を訪ねていた。

「今日は輿入れの日のようですね。そんな日に側室の部屋に来ていてよろしいのですか?」

言う於大は笑顔だけど言葉がまるで楽しそうじゃない。
わかりやすく拗ねている。

「於大、確かに俺はこれから正室を受け入れる。だが、それは其方をないがしろにする訳ではない」

於大は無言で顔を逸らしている。
突き出した唇をつつきたくて仕方ないんだが。
我慢我慢。

「其方との婚姻は政略結婚であったし、今回も同じだ。だが、儂は其方に、政略結婚だけではない愛情を向けて来たつもりだったが、伝わっておらなんだか?」

「……そんな事はございませんけど」

頬に赤みが差した。
よし、とりあえず怒りは消えたな。
俺は於大の肩を抱く。

「もう一度言うが、正室ができたからと言って、其方を無碍に扱う事は無い。むしろ、其方にそのような事を思われぬよう、より一層愛するかもしれんな」

耳元で囁くように言うと、於大は背筋を震わせた。
ふっふっふ、この二年で於大の弱点は大体把握しているからな。

「だがそれはこれから来る正室も同じなのだ。それはわかってくれ」

「わかっております。政治の道具として、子を産むための存在として相手の家に向かう事が、どれほど不安であるか、私が一番わかっております」

「では何故そのように拗ねておる?」

「……こうすれば、輿入れの日でも殿が私の元へ来て下さると思ったからでございます」

つまりはつれない態度を取って俺の気を引きたかった訳ね。
このぅ、腹黒可愛いなぁ、おい。やっぱお前忠政さんの娘だよ。
それとも、女子は皆このくらいの駆け引きはやってのけるんだろうか?

前世の記憶は曖昧だし、今世だと色恋沙汰に発展した女子は於大しか居ないからよくわからん。

女子おなご同士の方が何かと話せるかもしれぬ。できれば、これから来る姫に優しくして仲良くしてくれると嬉しいのだが?」

「それは通常、奥方様(・・・)の役目では?」

「先達の役目よ。それに、於広姫は其方より年下だそうだ。姉として面倒を見てやってはくれぬか?」

「姉? そうですね。姉として……」

信元のお嫁さんに優しくしてもらったと嬉しそうに話していたくらいだからな。
お姉さんぶりたいだろうと思ったけど、ビンゴだったな。
考えて見れば於大もまだ17歳。前世で言えば高校生だ。
というか高校二年生と考えればこの時の於大の思考を予想するのは容易だろう。
先輩一年生が後輩にする事なんて、先輩風を吹かせる事に決まってるからな。

「正室だからと遠慮しなくて良い。家中の者にも、其方と於広姫を区別せぬよう伝えてあるし、向こうの家にもそれは許可を得ている」

あくまで正室と側室という肩書の違いだけ。
先輩である於大の方が立場が上。
親爺を通してこの条件を受け入れさせた。

まぁ、代わりに西広瀬城周辺の開発を優先的に行うよう約束させられたけどな。
けどあそこの村って殆ど高地にあるんだよな。
段々畑でも教えてみるか。

勿論この時代でも棚田のようなものはあるけど、やっぱり技術的に未熟なんだよな。
確か江戸時代くらいに石垣の技術を用いて作られるようになったんだっけ?

「これからも其方を変わらず愛すると誓おう」

「殿……」

そして見つめ合う二人。ゆっくりと顔が近付き、唇が重なった。
ちなみに、於大の懐妊発覚以降、俺達は床を共にしていない。
いつ頃から性行為が胎児に悪影響を与えるかは、流石に知らなかったから、念を入れて生まれるまで同衾しない事にしたんだ。

まぁ、俺も健康な若い男。十月十日も我慢できる筈がない。
かと言って浮気は性に合わないし、遊女は前にも言った通り病気が怖い。

娼館が浮気に当たるかどうかは人によると思うので、ここでは深く言及しない。

そんな訳で時々、咥えて貰ったり、握って貰ったりしているけれど、やっぱり刺激が弱いんだよな。
贅沢な体になったもんだぜ。
於大と出会う前は自分の手で満足できていたっていうのにな。

そんな訳でちょっとムラムラしてしまった。
於大に至っては、俺のように発散する事さえできないもんだから尚更だろう。
熱に浮かされたような、潤んだ瞳で俺を見つめる。

「失礼いたします」

その時、障子の向こうから小姓の声がかかった。
消え去る点描。

「こちらに五郎三郎様がいらっしゃるとお聞きしたのですが」

「いらっしゃいます。何用ですか?」

「於広姫がお着きになられました」

これは流石に無視するのは勿論、待たせる訳にもいかない。

「すまんな、於大」

「いえ。今日このような時に渡ってくださっただけでも於大は嬉しいです」

笑顔でそう言う於大だが、やはり不満そうだ。
子供が生まれたらたっぷり可愛がってやろう。
於大とイチャイチャしていたら時間切れとなりました(二重の意味で)。
於広姫のお披露目は次回となります。
ちなみに作者は駄洒落が大好きです。
石川さん生存です。ただ、数正じゃない方の父親ですが。
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