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織田家の長男に生まれました 作者:いせひこ/大沼田伊勢彦
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小豆坂七本槍

三人称視点です。

戦いは織田勢優勢で始まった。
川を背に布陣する織田勢を、今川勢は押し潰そうと鶴翼の陣形で迫る。
これに対し織田勢は鋒矢の陣形で突撃を敢行。
今川勢の中央からやや左翼にずれた位置へと攻めかかった。

これに慌てたのは今川勢だった。
数も多く、川を背にしている敵軍を追い詰めていると思い、油断していた彼らは、突然の猛攻に混乱してしまう。
寡兵であり、追い詰めらえているからこそ、織田勢は士気が高かった。

「馬鹿者! 敵の陣形からある程度動きは想定できたであろ! 天下の今川軍が浮足立ちおって!」

しかしそこは東海一の弓取り、今川義元。すぐに体勢を建て直すべく軍配を振るう。

「左翼の部隊は損害著しい部隊へ救援急がせろ! 右翼の部隊は敵の側面を突け。退路は断つな、死兵化するよってな!」

それこそが信秀の布陣の意図だったとまでは気付けなかった。背水の陣を敷く事で退路を断ち、兵を発奮させる。
包囲する事で死兵化してしまい、殲滅するよりなくなり、甚大な被害を受ける事を義元は避けたが、対峙した時、既に織田勢は死兵化していたのだ。

それでも義元の指示に合わせて陣太鼓が鳴らされるたび、今川軍は混乱から立ち直っていく。

「流石にこのまま崩れてはくれぬか。状況は!?」

「後方を除いてお味方囲まれてございます! 左翼は今川勢に完全に食いつかれました! 現在信康様指揮の下なんとか押し止めておる状況にて……」

「頃合いだな、合図を出せ」

信秀本陣で陣太鼓が鳴らされた。

「ようやくだな」

呟いたのは草むらに伏せていた信光だった。

「孫三郎様、敵が皆こちらに背を向けております」

「造酒丞殿、それは当然だ。殿はそうなるように戦を動かしたのだから」

同じく草むらに伏せていた若武者がはしゃぐように言った。
次代を担う武将として、信秀から信光に預けられた若者たち。
敵兵を指差し笑う織田信房に、後に星崎城城主となる岡田重善がしたり顔でのたまう。

井関城主佐々成宗の長子、政次。その弟孫介。かつての那古野城主今川氏豊の娘を妻とした中野一安。
若武者を連れて信光が草むらから飛び出す。
武功の稼ぎ時とばかりに勢いよくその後に続く若武者達。
その若武者のお目付け役として従軍している上野城城主下方貞清が続く。

安祥城を出て、矢作川東岸に布陣した際、彼らは確かに、信秀軍の後方に居た。
しかし、合戦が始まり、信秀軍の突撃が始まると、今川勢の目がそちらに向く。その隙に部隊から離れ、草むらにてじっと息を潜めていた。

その数五百。
信秀軍を攻撃するため、完全に尻を向けている今川軍右翼へ突撃する。

突然の後方からの強襲と、その際に発せられた五百人の蛮声に今度は今川軍右翼が混乱に陥る。
それはすぐに全軍に伝播し、立ち直りかけていた左翼も再び浮足立つ。

「伏兵か! 少ない軍を更に分けるとは、舐められたものよのう!」

言葉以上に義元は苛立っていた。
伏兵なら自分達も用意している。だが、一向に姿を現す気配が無い。

「だから松平の若造はほんに度し難いというのだ!」

これまで無傷だった織田の援軍は奇襲の勢いもあって士気が高い。劣勢から盛り返した事で織田勢本隊も意気軒昂している。
対する今川勢は、ようやっと建て直したところへの奇襲で戦列が崩れ始めていた。
これを再び建て直すのは至難の業だ。

「余ならできる。東海一の弓取り、天下の大大名今川義元にできぬ筈がない。しかし時間がかかる。損害も馬鹿にできない」

これ以上の無様は、北条だけでなく武田にも目を付けられる事になる。

「仕方あるまい。此度は余の負けじゃ。松平が役に立たぬ事がわかっただけでも良しとするかのう」

今後、彼らには支援ではなく服属を強いる事になるだろう。最早今川にとって松平家など、その程度の価値しかなくなった。
一応は協力者であるから、東三河の支配に遠慮していたところがあるが、もう気にする必要は無い。

となると、信広の取り込みに注力する必要があるな。
尾張侵攻のための三河支配は、松平家ではなく安祥織田家を利用するとしよう。

「撤退する。退き太鼓鳴らせ」

こうして後に第一次小豆坂の戦いと呼ばれる、織田弾正忠家と今川家の戦は、弾正忠家の勝利で終わった。
ただ、あくまで今川が撤退した事での、判定勝利であり、今川、弾正忠家共に千名程度の損害を出した。
損害比で言えば、弾正忠家の敗北と言える結果だった。

しかし、大国今川を退けたという事実は大きい。
信秀はこの戦で活躍した織田信光、織田信房、岡田重善、佐々政次、佐々孫介、中野一安、下方貞清を小豆坂七本槍と称して褒め称えた。
また、信秀と共に今川軍に突撃し、左翼にて戦線を支えた織田信康もその武功を讃えられた。
投石器登場は次回です。
次回は信広の小豆坂の戦い。
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