挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
織田家の長男に生まれました 作者:いせひこ
10/62

お父さんお小遣いください

基本名前にルビのあるキャラは架空の人物です。

古渡城から忠政さんの娘と広忠を婚姻させて、弾正忠家と松平家を和睦させる策を許可する旨の書状が届いた。
同時に、俺が「安祥城とその周辺を固めたいから四千貫おーくれ(意訳)」と要求した事へは「そんな大金使者に持たせられるか、欲しければ自分で取りに来い(意訳)」という返事があった。
まぁ、普通に持ち逃げされそうだしな。なんせ前世の額で四億円だ。
仕方ないから家臣を数人従えて古渡城へ向かう事にする。
勿論、先に向かうための書状を持たせた使者を出してからだ。

この時代、調べてみたら一応飛脚のようなものは存在していた。
けれど、あちこちに作られている関所が鬱陶し過ぎて、国を超えて走る飛脚はほぼ存在しない。
同国内、同じ領地内でも道という道には関所が作られているのが現状だからな、まぁこれは仕方ない。

いずれ信長が関所を撤廃する筈だから、それに合わせて郵便事業の立ち上げを提案してみよう。
なんならそれを寺社勢力にさせて、関所や寺領に変わる新たな権益を与えても良い。
そうすれば信長の敵も多少は減るだろう。
結局あいつらは信長に利益取り上げられて怒っただけだからな。
僧ならあちこち歩き回っても怪しまれないし、織田領内だけじゃなく、他国へも関所を無視して行く事ができるから丁度いいな。

あれ? なんかそんなのを利用した間謀組織が武田辺りに無かったっけ?
歩き巫女っていつからだ? いや、それを利用した間者の侵入っていつからだ?
まぁ、どっちが先かなんてこの時代なら問題にならないか。その件も合わせて親爺に相談してみよう。

とりあえずは資金の要求だ。先の書状には、安祥城の修理と改築、周辺の整備、くらいしか書いてなかったけど、具体的にどういう事に使うのかを書いた書状も持参する事にする。
やっぱり詳しい資料を用意するのはプレゼンの基本だよねー。
ん? プレゼン? 前世で会社員だったのかな?

出発は返事が来てから三日後。忠政さんが松平家との婚姻を纏めるために、まだ安祥城に居るから留守番を任せる。
ぶっちゃけると、この城、俺の兵士って皆無なんだよ。
初陣の時に一緒に居た騎兵は親爺と一緒に尾張に帰っちゃったし。
安祥城に居る俺の手勢って、尾張時代の家臣十名のみなんだよね。むしろ屋敷から越して来させた下男下女の方が数が多いくらいだ。

まだ兵農分離が進んでいないから、ていう訳じゃない。この時代にだって常備兵くらい居る。

単純に俺が弾正忠家から重要視されてないだけさー。
まぁ、忠政さんがまだ居るから、俺への援軍は遅れてるんだろう。優先順位の問題だね。
まずは古渡城の軍備の回復と増強から。三河支配の前線基地とは言え、尾張から離れた俺の城は後回し。
兵も無限に湧いてくる訳じゃないからな、これはしゃーない。

それも含めての資金要求だ。兵力が必要なら自分で雇わなくちゃならないからな。
とは言え、やり過ぎると謀反を疑われちゃうから、その辺のバランス大事な。

ともかく俺の教育係である碧海へきかい古居ふるいを留守居に残し、俺より若干年上の堀内ほりうち公円こうえん、俺の乳兄弟である米津よねづ四椋よんりょうを伴って古渡城へと向かう。



古渡城に到着した俺は、暫く待たされた後、評定の間に通された。
評定の間には上座に親爺が居て、その両側に数人の家臣が座っている。

ていうか俺を見る目、なんか厳しくない?

「それで信広、四千貫もの資金一体何に使うつもりだ?」

挨拶もそこそこに、親爺はそれを聞いてくる。
同時に周囲の家臣の顔もより厳しくなった。
あー、成る程。それが気になっちゃうかー。
自分の居城を強化して守り易くするのは当然だけど、嫡子でない俺が親爺の命令も受けずにそれをやろうとしているのがまずい訳ね。
謀反の疑いというか、ガッツリ疑われてると。

「松平家との同盟はおそらく一時的なものになるでしょう。後方に今川も控えておりますので、おそらく、一年から二年以内には再び戦になると思われます」

俺の言葉に家臣達がざわつく。
えーと、第一次小豆坂合戦が来年だっけ? あれって後世の創作とかの話があったけど、まぁ、警戒しておくにこした事はないよね。

「その時まで何もしておらぬのであれば城はあっさりと奪われてしまうでしょう。それでは、父上と忠政殿の奮戦が無駄になってしまいます。何より、あの戦いで犠牲となった兵達が浮かばれませぬ」

「そのための城の補修と改築か。ならばこちらで試算を出す故、都合できる資金は……」

「お言葉ですが父上、大事なのは速度にございます」

「ふむ、続けろ」

言葉遮った事に家臣たちが一瞬殺気立ったけど、親爺は俺に続きを促した。
けどその目が「大した意見じゃないならわかってんだろうな?」と語っている。

「素早く城を補修、改築する事で、松平、今川に戦を躊躇させる事ができます。兵法の極みとは戦わずに勝つことでございますれば」

「そのために金が要ると?」

「はい。安祥城周辺の領民を人足として雇い、作業にあたらせます。その際に日当と一食分の飯を都合する事で、大勢を集める事ができるでしょう」

「それだけか?」

ん? いや、それだけだけど……。えーと、これは何を聞かれているんだ?
具体的にどう改修するか、じゃないよな。話の流れからして……。

「戦で疲弊した領民の慰撫にもなります。領民が集まらねば戦はできませぬ。逆に領民の支持を得ておけば、いざ松平、今川と戦になった際、我らの助けとなってくれるでしょう」

とりあえず、城の補修、改築は勿論だけど、周辺への防御施設の建築、領地の開拓などを行う目的を話しておく。

マキャベリだかが確かそんな事言ってたよね。
自分の身を守りたいなら砦を築くより民に恨まれないようにするとかなんとか。

「ふむ。よかろう。四千貫、都合してやる。明日用意する故持って帰れ」

「ありがとうございます」

「殿! よろしいのですか!?」

俺が頭を下げる横で、いかつい髭面の武将が叫んでいる。

「騒ぐな、権六。信広の考えは間違っておらぬ。安祥城の防衛力強化に関しては儂も考えておった。守るにせよ攻めるにせよ、いずれ必要な事だ。自分達でやるというなら、金を渡すくらいの事は問題あるまい」

流石金持ち弾正忠家。四億円をなんでもないっすか。
まぁ、前世の公共事業の規模で考えれば、四億円だとできる事限られてるけどさ。
この時代だと相当な事ができるぞ。
鉄砲一丁一千貫とかわけのわからん高値がつく事もあるけどなー。

実際防衛力の強化なら鉄砲を大量に配備するのが一番いいんだけどな。
今の時代なら鉄砲の存在は知ってても、その効果を知ってる大名なんて殆ど居ない訳だし。
信長はともかく、そんな時代を生きて来た古い人間でありながら、鉄砲の有用性に気付いてた斎藤道三ってやっぱ凄ぇな。

とは言え、四千貫の資金を都合して貰うのにもこんな手間がかかるのに、一丁一千貫の鉄砲なんてそうそう配備して貰えない。
有用性を説いて説得できたとしても、まず古渡城に配備されるだろう。
独自のルートで鉄砲を手に入れるには資金が足りないし、そんなのバレたら速攻謀反認定で討伐されるだろう。

いっそ今川につくのも手か? 桶狭間は実情を知ってれば大敗を回避するのは容易いだろうし。

でもなー。こないだ見たあの弟妹達を思い出しちゃうとなー。
前世の記憶があると言っても、やっぱり俺は織田信広だからさ。
見た事も無い義元よりは、血を分けた弟妹達だろ。

ていうか権六、つまり柴田勝家さんだよね。俺を睨むのやめてー。
しょーがないじゃん。まだうちの城って周辺領地を取り込んでないんだから。
税収なんて無いんだよ。
ある程度城の倉に銭や物資は残されていたけどさー。けどあれ、親爺の命令で忠政さんに渡されてるからね。
わかりやすい懐柔策だよな。
金額のレートは時代によって増減しますので、一千貫=一億円とします。
計算が楽なので。
次回はよくある内政チート的な話。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ