ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
ふぅ、レポートがようやく90%できました。
金曜日の深夜バイトが終わったら、次話投稿できるかと思います。
Daysか神タソどっちにするかは決めかねてますが。
プロローグ3:郁人陳倉
「クハハハハハハハッ! だせぇ、親父達超ダサ」

 とあるアパートの一室で少年が笑い声を上げる。
 まだ外見は幼いが、その瞳は狡知に長けたような狡賢い目をしていた。
 そしてその声を聞くと、その部屋に居たもう一人の少女が少年に言う。

「郁人が笑える事じゃないと思うよー?」

 郁人と呼ばれた少年の本名は牧島郁人まきしまいくと
 牧島家の長男であり、本来なら牧島の家を継ぐはずだった男。
 学業、体術、全てにおいて牧島最高と言われた少年に足りなかった物、それは───

「うるせー竜胆っ! お前がスゲー力を持ってればこんな事にはなってないんだよ」

 竜胆と呼ばれた少女は赤いメッシュをいれた髪を弄りながら郁人から視線を逸らす。
 そう、竜胆は普通の人間ではなく、郁人の式神であった。
 意思を持ち、成長をする人型の異端の式神、それに与えられた名は牧島竜胆まきしまりんどう

「いやね、アタシだって何個かは力を持ってるんだよ? 多分」

 最初は誰もが期待した、この式神はどんな力を持っているのだろうと。
 しかし、時が経つに連れ、竜胆が少し身体能力が高いだけの普通の少女と変わらない事に気づく。
 力を重んじる牧島は何の躊躇いもなくそれまでの態度を翻し、郁人と竜胆を馬鹿にしだした。
 そして、ついに家を追い出したのである。

「じゃあ、言ってみろ」

「まず、アタシが出てても式神の気配がしない…………完っ!」

「つ、使えねぇ……そしてまずをつける意味がねぇ…………」

 呆れる郁人、すると竜胆はニハハと笑う。
 郁人と竜胆は幼い頃からずっと一緒に育ってきた、もはや半身のようなものである。
 簡単に切り捨てられるような相手ではない。それは郁人にもわかっていた。

「まぁまぁ、アタシだって一生懸命生きてるんだからさー、勘弁してよ」

「まぁ、そりゃそうだが……」

「それで、パパさん達は何したのー?」

「知らなかったのかよっ!?」

 郁人は呆れながらも、開いていたパソコンの画面を竜胆に見せる。
 そこに表示されているのは郁人がよく利用する情報屋からのメール、内容は最近の牧島家の悪鬼狩りの時の乱入者の話だった。 
 竜胆はふむふむと喉を鳴らしながら内容を全部読み取ると、

「ふーん……千島蒼二ってあの元死罪六神のめっちゃ怖い人でしょ? 桐生をほとんど一人で殺しつくしたって言う」

「そうらしいな、だが見るのはそこじゃない!」

 郁人が画面のある部分を指差す。
 そこに表示されていた名前は───

「わぉ! 浅葱っちじゃん」

「そう、同じクラスの浅葱さんだ! 浅葱っていやぁ……今までノータッチだが中々の名家だぜ?」

「うーん、頭首補佐が交通違反で掴まったり、他の家の葬儀で乱闘起こしたぐらいしか知らないなぁ……」

「あー、浅葱陸人か。馬鹿みてーに強いらしいけど、実際かなりの馬鹿らしいな」

「へー、頭首補佐って馬鹿でもなれるんだね」 
 
「まぁ、娘が頭いいから大丈夫だろ、それにあの人超クールだし」

「浅葱っちは冷めてるねぇ、でも誰にも隔てなく接するから人気は結構あるんだよ?」

「ほぉ……って、また話がずれたな、本題に入るぞ」

「おいっす!」

「浅葱と千島が何らかの関係があることは分かった、だから俺らはしばらく浅葱と接してみよう思う」

「早い話がストーカーだねっ!」

「……浅葱にひっついてたら何か俺らが強くなるヒントがあるかもしれねーからな」

「うん、アタシ頑張っちゃうよ」

「おう! そして力を手に入れたら俺達が牧島乗っ取ってやろうぜ!」

「そしたらアタシ、パパさんに雑巾がけやらせよー」

「ぬはは、それいいな」

 笑いあう郁人と竜胆。その笑顔は年相応の物であり、普通の子と何ら変わりない。
 普通の人間と、かなり異端の式神。そんな事をお互い全く気にすることなく二人は喋っていた。
 すると、竜胆が思い出したように言う。

「そういえば、修学旅行ってもうそろそろだよね?」

「ああ、確かな……それがどうかしたのか?」

「だったら浅葱っちと同じ班になろうよ! そしたら万事オッケー? イエー!」

「おお、確か一班だけ三人一組だったよな……よし、そこにねじ込むぞ!」

「おーう!」

 郁人と竜胆は更なる作戦会議を始めた。
 そして、最弱の式神使い、牧島郁人と最弱の式神、牧島竜胆の運命が回りだした。









 郁人と竜胆が住むマンションから一キロほど離れた場所。
 そこに浅葱邸は建っている、それは西洋建築を思わせる豪奢な造りの家であった。
 綺麗に手が加えられた庭。豪奢な調度品。セキュリティの方もあまり目立たないように上手く周囲に溶け込んでいる。
 ただ無造作に置かれた年代物の青色のバイクだけが雰囲気を壊していた。
 
「っくしゅ」

 その家のリビングでビール片手に梨香のクラス名簿を見ていた浅葱陸人が唐突にくしゃみをした。
 鼻と目を擦り、「あーっ……」と唸ると不適に笑いながら呟く。

「フッ……誰かが俺の噂をしてるぜ、なぁ梨香?」

 すぐ傍で勉強をしていた梨香が顔を上げ、陸人に言う。
 梨香は顔を上げて父の顔を見るが、その目には呆れの感情しか浮かんでいない。
 というよりも邪魔するな、のほうが正解であろう。

「そうかもね、出会い系の美津子ちゃんじゃない?」

「うっ……」

 痛いところを突かれて陸人は黙る。ビールを机の上に置き、項垂れつつも名簿からは目を離さない。
 すると、梨香も言いすぎたと思ったのか、陸人に話しかけた。

「ねぇ、お父さん。何で私のクラスの名簿見てるの?」

「んー? お前に手を出す狼共の名前を頭に刻み込んどくのさ、いつか殺すかもしれないし」

「お父さん……そういうのやめてよね」

「大切な娘を軟弱な男にやるつもりはない!」

「じゃあ、蒼二さんとかは? お父さんよりも強いんじゃない?」

「なっ、まさか梨香……」

 陸人が勢いよく椅子から飛び上がり、驚きの顔で梨香に言う。
 すると梨香は、顔を赤らめながら大慌てで否定した。
 滅多に見れないそんな娘の姿が、陸人の不安と妄想を激しく駆り立てる事に気づかないままに。

「ち、違うよ!? ただ強い男の人っていったら蒼二さんじゃない?」

「そ、蒼二か……アイツも……ロリコン……ハッ! そういえばアイツは時雨の弟子、なら性癖がかぶってても仕方ないな。
 親の蒼威は多分ロリコンじゃないな、遥ちゃんも多分年上好きだし……ってことはまさかもう一人の時雨の弟子である
 遥緋ちゃんもロリコン……いや、ショタというのか……あああああああ、八神を殺さなきゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 一人で勝手にトリップしている陸人を梨香は冷たい目で見つめるとため息をつく。
 そして、一瞬考えて、冷徹な事実を陸人に突きつけた。

「お父さんだって、ロリコンじゃん。三年ぐらい前にハル姉ちゃんにお風呂がどうのこうのって言ってたじゃない」

「ァァァァァァァ!? お、俺もロリコンだったのか!? いや……アレは遥緋ちゃんの緊張をほぐすために言ったはず……
 ああ……でも詩歌はかなりの幼児体系だしな、ヤベエ! 俺はロリコンだったのか!? そういや詩歌ロリキャラだっていわれてたし
 いやいや、でも今はもう完全熟女だよな、うん、あああああああ!? でもそうすると俺って熟女フェチィィィィィィィィ!?」

 再びトリップに陥る陸人。ソファーの上で一人ぽんぽん跳ねる父に突っこむ気力すら起きない梨香。
 いつになったらこの人は子供離れするんだろう、と半ば本気で心配しながら、ある気配に気づく。
 そして、勉強道具を持つと、リビングの入り口に立っている母親の詩歌に告げた。

「お仕置き、頑張ってね」

「ええ、お休み」

 詩歌は顔に青筋を浮かべた笑顔で娘に言う。
 梨香も「お休み」と挨拶をするとさっさと階段を登って、自室の布団へともぐりこむ。
 無論、これから鳴り響くであろう悲鳴を少しでも聞こえなくするために。














 浅葱家の朝。TVの音だけが流れる静かな食卓。
 そんな中、詩歌と梨香と一緒に朝食をとっていた陸人は唐突に言う。

「俺、やっぱ詩歌フェチみたいでした」

 疲れ果てたような顔でいう陸人、どうやら昨日かなりこってりと絞られたらしい。
 その横では詩歌が満足そうに、うんうんと頷いてる。梨香はそれを半眼で見ながら、

「そう、おめでとう」

 梨香がそう言うと、満足そうに笑う陸人と。
 子供みたいな無邪気な笑顔に、梨香は苛々と羨ましさを覚え、朝食を一気に平らげている父から目を逸らす。
 そして陸人食器をキッチンへ運び、水につけると二人のほうを見て、

「んじゃ、仕事行って来るわ」

「あれ? 今日何かあったっけ?」

「何か正宗のヤローに呼び出されてんだよ、報告は帰ってからするわ」

「ん、わかった」

「んじゃあ、梨香お父さんは仕事へ行って来るぞ」

「ん、いってらっしゃい」

 そう言うと陸人は満足そうに家を出て行った。今にもスキップをしそうな勢いである。
 梨香も食器を片付け、身だしなみを整えると、ソファーに置いておいたカバンを持ち、

「じゃあ、行って来ます」

「はい、いってらっしゃい」

 家を出ると、空は晴天、今日も熱くなりそうな天気であった。。
 高台にあるため、下に見える学校まではおよそ二十分、時間的にも十分すぎる。
 そして、梨香は式神の発動の仕方を感覚だけで掴みながら、ただひたすらに歩く。

(うん、段々と慣れてきている)

 遥緋や蒼二や命はほぼ瞬間的に式神を発動させられる。
 それに比べて梨香は一秒以上かかる、蒼二曰くその間が命取りらしい。
 だから梨香はこうして登校途中にも鍛錬は欠かさない。

(早く強くなって、私も役に立ちたい)

 自分はいつか浅葱の頭首にならなくてはならない。
 小さい頃からそう教えられて育ってきた。
 ただ、陸人だけが猛烈に反対して好きな道を選ばせてやれと言っているが、浅葱の長老達は聞く耳を持たない。
 詩歌は申し訳なさそうに俯き、何も喋らない、いや喋れないんだと梨香は理解している。

(パパとママを早く楽にさせて上げなきゃ)

 そう思い、再び鍛錬に励もうとすると、前方から視線を感じる。
 顔を上げ、前を見ると顔見知りのクラスメイトが立っていた。黒髪の短髪をワックスで尖らせている少年、牧島郁人。
 同じく黒髪のショートの前髪の一部分にだけ赤いメッシュを入れている少女、牧島竜胆。
 クラスメイトで確か親戚同士らしいその二人の姿を見て、梨香は思う。
 
(牧島君と……竜胆ちゃん? やっぱあの牧島の話かな?)

 梨香と竜胆の視線があった、しまったと思ったときにはもう遅い。
 竜胆は手を振りながら梨香に駆け寄って、満面の笑みで言う。

「おはよー、浅葱っち」

「おはよう」

「今日さー、修学旅行の班決めあるじゃん?」

「うん」

「アタシと郁人と班組まない?」

「んー……」

 単刀直入な竜胆の申し出に梨香は考え込む。
 今の所誰と組もうとかは誘われては居ない。だが、どうもひっかかる。すると郁人も近寄ってきた。
 そして、妙に不自然さを感じるような笑顔で梨香に言う。

「家の事はあまり関係ないかな、同じ生業の家同士仲良くしようって話さ」

「あ、やっぱ牧島君達の家なんだ・・・ごめん」

 梨香は申し訳なさそうに言う。
 しかし、郁人と竜胆は何ら気にした風もなくヘラヘラしながら答えた。
 その反応から、本当に心からどうでもよさそうだと、梨香は感じとる。

「いいのいいの、アタシら牧島追い出されてるからさー パパさんぶっ殺してもよかったのにねー?」

「そうそう、今話しかけたのだって浅葱さんが式神の気配だしまくってたからだしさー」

「あ……ごめん」

「いやいやー。んじゃ、班決めOKかなー?」

「うん」

 梨香が返事をすると、郁人と竜胆は楽しそうに笑う。
 そして、三人は取り留めのない話をしながら、学校へと向かった。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。