緋色の眼〜神々の黄昏〜(3/61)PDFで表示縦書き表示RDF


何とか、プロローグその2です。
レポートの合間を縫って、やっと三話まで下書きが終わりました。感想批評質問お待ちしております

緋色の眼〜神々の黄昏〜
作:ジョン



プロローグ2:鬼神嘗胆


 とある深い山の中にその屋敷はあった。
 それは、城と言っても過言ではないぐらいの規模で、所々に古くからの戦いの傷跡が見える。
 だが、一応は屋敷としての機能は果しているようで、一応は整備されている。
 そしてその中のとある薄暗い一室には数人の影。

「Surt」
 
 円卓上の机の中心辺りに座って本を読んでいた黒髪の青年が一人の名を呼ぶ。
 そして、一番右端に座っていた男、スルトこと千島藍が喋りだす。

「俺、英語苦手だから日本語で喋るわ。お前らちゃんと頭切り替えろよ」

 ──無言。
 それを肯定だと判断した藍は言葉を続ける。

「まず、報告。九尾の狐の神代が全員死亡した」

 その言葉にその場に居た全員の顔に緊張が走る。
 この中に居る全員の中で神代の事を知らない者は居ない。それほどまでに強力だったのである。
 すると、一つの席に座っていた少女が悲しそうな声で呟く。長い黒色の髪に、やせ細った体。
 どこか貧乏臭くて、それでいてその目だけは宝石のように美しい少女である。

「カナタ、死んじゃったの?」

「ヘル……ああ、死んだ」

 ヘルと呼ばれた少女はその青色の瞳から涙をこぼす。
 そのまま、気まずい沈黙がしばらく続くと、最初に発言した黒髪の少年が視線で先を促す。

「その件は多分運命達はまだ知らないと思う、あいつらは今、ヤマトが負傷して忙しい見たいだしな」

 藍はそう言うと、泣きじゃくっているヘルの隣に居る、二人の少年に目をやる。
 二人はヘルをなだめていたが、藍の視線に気づくと途端に騒ぎ出す。

「何だよスルトー!」

「あれはヤマトとクーガからしかけてきたんだぞー」

「フェンリル、ヨルムンガルド……お前らなぁ…………」

 フェンリルと呼ばれた少年は長身の栗色の髪の悪戯好きそうな顔をした青年。
 ヨルムンガルドと呼ばれた少年は、燃えるような赤い髪に、意地悪そうな顔をしている少年だった。
 その二人を見ながら藍はため息をつく。

「まぁ、いいや……俺からの報告は以上、ガルムは何かあるか?」

 藍はそう言うと、隅の方で本を読んでいた青年、ガルムに声をかける。
 黒髪にメガネ、いかにも科学者と言うような雰囲気の少年は、本を閉じると藍へという。

「……ロキはどうした?」

「さぁな、ここ数年旅に出てるらしいぜ。最後に会ったのはオーストラリアでコアを手に入れたときだ」

「ふむ、ならいい。さて、俺は帰るぞ……タイの方で研究をしているから用事があるなら顔を出せ」

 そう言うと、ガルムの姿が突如として消えた。
 後に残されたのはすすり泣くヘルと、それを宥めるフェンリルとヨルムンガルドと藍だけであった。
 すると、泣きじゃくっていたヘルが顔を上げる。

「カナタ達を殺したのは、リーヴ達を守っている一族?」

「ああ、ちなみに俺の子孫に当る一族だ」

「あれ? スルトの家ってスルトが皆殺しにしたんじゃないの?」

「……何人か殺し損ねたらしい、十数年ぐらい前から復興していたようだな、あのクソ一族め……マジしつこい」

 藍がそう言うと、ヘルはふと立ち上がり、荷物を纏め始めた。
 それに伴い、フェンリルとヨルムンガルドも同時に立ち上がる。
 そして、藍は三人に溜息をつきながら、
 
「はぁ……どこへ行くんだ?」

「ロンドンへ帰る、計画立てる」

「そうか……フェンリルとヨルムンガルドも一緒か?」

「まあね」

「可愛い妹を一人にしておけないでしょ、後、ロキがいないから仕事とかの割り振りはスルトに任せるよ」

「わかった」

 そう言うと三人も屋敷から出て行った。
 久しぶりの会議だが、やはりロキが居ないとまとまりが無いと藍は思う。
 そして、そのまま椅子に再び座ると、藍はロキが残していった計画の書類を机の上に出した。
 英語で書かれたタイトル、それの日本語訳は【第二次ラグナロク】

「また、戦いが始まるのか・・・」

 初めてのラグナロクは成功といえるだろう、ただ世界は何も変わらなかったが。
 そして、今回こそロキは成功させるつもりのようだ、新しい世界を作る事を。
 
(そうさ・・・これで全ての罪から解放される)

 人間、悪鬼、鬼神、その存在は太古から多くの罪を重ね、地球を傷つけてきた。
 その結果が今の世界、人々は一見幸せそうに暮らしているが、それはごく少数。
 本当に不幸な人間は、この世にごまんと居る、それでも人間は罪を重ねる事をやめない、何よりも自分が大事であるから。
 そのことだけは、藍は身に染みて分かっている。

(だから、一回全てを終わせる、そして悪鬼でもない、人間でもない新たな種で新たな世界を)

 それがロキの、ラグナロク全員の目標。
 それでも敵対する鬼神は世界にも数多く居た、だがそれは第一次ラグナロク、初めての戦いで終わらせた。
 残る勢力【七つの大罪】も今頃ロキが滅ぼしているのだろうと思う、それほどまでに強大な力を持っている事を藍は知っている。
 そして後一つは──

「久しぶりだね、千島藍」

 藍が顔を上げると、そこには今一番見たくない顔があった。
 セミロングの黒髪に、ジーンズにタンクトップと言うラフな格好をした女が立っており、藍は嫌そうな顔をしつつ、挨拶を返す。
 どうしてここを知っているのか、どうしてこのタイミングで現れるのか、藍には興味もなかったし聞く気もない。

「久しぶりだな、天美運命」

 天美運命、それは鬼神界ではかなりの有名人。
 そして藍達が滅ぼしきれていない、九尾の狐という組織の首領でもある。 
 藍と運命は二度ほど会った事があるが、声をかけられたのは初めてだろうと思う。
 
「刹那達が死んだ事は知ってるかな?」

「知ってる、今度神代の屋敷に供養をしに行くつもり、でもまだ時期じゃない」

「時期ねぇ……アンタの妹が殺したようなもんだっていうのに」

「仕方ないよ、それが鬼神と人間の宿命、だから運命は両方共攻めはしないし、擁護もしない」

「ほぉ……それで、今日は何の用事だ?」

「刹那達が死んだから……もう遠慮はしないよ」

 質問の答えとしてはいい加減であったが、藍には意味はわかる。
 九尾の狐とラグナロクが滅ぼしあわない理由は、神代達がそれぞれの組織の重役と面識があったから。
 藍と神代兄弟は盟友であったし、ヘルは彼方の事を愛していた。そしてそれがなくなった今───

「そうか、ならここで殺しあうか? お前邪魔だし」

「藍と運命の力はほぼ互角と運命は見ている、それでもやる?」

「フン、いいだろう」

 藍は自分の式神【レヴァティーン】を虚空から引き抜く。
 スラリとした長刀のその剣は、藍が少し力を込めると猛々しく刀身から火を噴出す。
 その炎によって暗かった部屋に光が灯り、よりはっきりとお互いの姿が映し出される。
 そして、藍は机を飛び越え、運命を間合いの範疇へと収めようとする。

「行くよ、【阿修羅姫】」

 運命の式神は柄の部分に鎖分銅のついた斬馬刀。
 二メートルを超える長身の刀を前に突き出し、運命は刀を前に突き出した独特の構えを取った。
 藍は炎を飛び散らせ、運命の意識を少しでも逸らそうとする。
 そして──

「─────ッ」

 二人が同時に動く。
 どちらも常軌を逸した速さで、刀をぶつけ合い、二人は一瞬で離れる。
 銀色の二つの閃光が閃き、お互いを殺そうと犇きあう。
 そして藍は一度離れると、火の粉を運命に向かって放つ。

「熱いの、嫌い」

 運命が阿修羅姫を一回振ると、火の粉は消え去る。
 だが、藍の真の目的はそこにはなかった。
 運命が気を取られた一瞬の隙に、自分の一族の"呪われた"力を発動させる。

「緋眼、終式」

 藍の目が緋色に染まる。
 自分の血統の力──緋眼。その力は走馬灯のような現象を意図的に起す力。
 人間の目は物体をを0,003秒というスピードで物体を捉え、脳に情報を送り続けている。
 しかし、脳はその情報を処理しつつ命令を下すため、実際に知覚できるのは秒単位ぐらいが限界。
 だが人間はある種の危機に瀕すると、視覚以外の全ての情報を遮断し、その全てを知覚できるようになる。
 それが属に走馬灯のような、といった一瞬が数秒にも感じる現象の正体。
 それを意図的に発動できるようになったのが緋眼という力。
 だが人間はその知覚に体が追いつけない。
 故に緋眼使い達の肉体は筋肉が根本的に人間と出来が違う。 
 そのため、体に負担がかなり掛かるがその速さへとついていけるわけであった。

(まぁ・・・普通そんな進化はできないんだけどな)

 運命へと全力で走り、思う。
 自分が生きながらえて百数年、研究してきた呪われし自分の血統の力を。
 そして──今も癒える事のない心の傷を。
 
(ハハッ 俺は元々この類のモノにしか生まれられない運命だったってわけだよな)

「大炎陣」

 超高速で移動した藍は上下左右の壁を蹴り、運命の周囲を飛び回る、その力により壁が猛烈な蹴り足によって砕け散りへこんでいく。
 そしてレヴァティーンを閃かせ運命をすれ違い様に何度も斬りつけた。
 すると、藍の通った道に炎の筋が幾重も入り、一瞬で運命を囲うと瞬く間に燃え盛る。
 それは切り裂くと、燃える、両方の痛みを同時に味わう事と同義。

「フン、口ほどにも無いな」

 少し離れた場所でスピードを止めた藍は嗤う。
 そして、燃え盛る劫火の中にさっきまであった人影が無いことに気づく。
 慌てて藍は背後を振り返った───

「運命は、こっち」

 振り向いた瞬間に、阿修羅姫の凄まじく重い一撃。
 レヴァティーンで何とか攻撃を受け止めるが、藍の靴が地面半ばまで沈み込む。
 全身に激しい衝撃が走り、一瞬体が麻痺するがそれに耐え、藍は反撃の手を考え出した。
 そして、運命は驚いたような顔で藍を見ると、大きく後ろに跳躍し、離れた。

「無傷かよ……流石ロキを半殺しにしただけあるな」

「ロキは命をただの人間と一緒にしたから嫌い、でも藍も強いよ、うん、だから今日はもうお終い」

「……そうか」

 藍はレヴァティーンをしまう、すると運命も阿修羅姫をしまった。
 炎が消えたため、再び部屋の中が暗くなる。
 そして運命はもう用事はないとばかりに踵を返すと歩きながら言う。

「藍とはもう戦いたくないな、それじゃあね」

 それだけ言うと運命の姿が消える。
 そして藍は尻餅をつくと、ため息を吐き出すと同時に言う。
 冷や汗が噴出し、心臓が張り裂けそうなほど鼓動していた。

「全く、大変な事になりそうだ」

 















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