魔法のカガミにお願い(起)
グループ小説の第十四弾『起承転結小説』です。この作品は起、承、転、結でパート振り分けて違う作者が物語を書いていきます。(起)→叶愛夢 (承一)→春野さん。(承二)→神崎さん(転一)→finoさん(転二)→伊勢さん。(結)→よぞさんの形になっています。どうぞご覧下さい。
あたしの通う学校は田舎にあって見渡す限り山とか木とかがあるくらいで。
特に自慢出来る事はない。
あ、でも旧校舎に古びた鏡がある。
その鏡は『魔法の鏡』と呼ばれているの。
何でも真夜中の12時きっかりに姿を映すと……
『運命の相手』が見えるだって!
恋する乙女でなくてもチェックだよね!?
「は?」
突然の誘いに向かい合わせに座っているあかりは目を丸くした。
休憩時間の教室はどこも賑やかで、会話を一度で聞き取るのは困難。
だぁーかぁーらぁーとやたら語尾を伸ばしてあたしはもう一度口を開く。
「旧校舎の『鏡』!!あかりだって知ってるでしょ?」
そう言ってあたしは、あかりの顔を覗き込んでみた。
けど、あかりは一瞬目を丸くしただけで今は落ち着いた素振りでペットボトルに入った紅茶を飲んでいる。
「うん、まぁ……。」
間を置いてから興味なさげな返事がきた。
いつだってあかりはそう!
何に対してもクール!
「やっぱりあの鏡はフツーじゃないよ!だってね!」
でもあたしもめげないで、つい先程得た情報を流す。
「三組の佐藤さん、一週間前に『魔法の鏡』に姿を映したんだって!もちろん深夜12時に!佐藤さん曰く『ちらっとだったけどぉ〜男の人の姿が見えたんだぁ〜』だって!で、その一週間後に彼氏が出来たんだって!それがね、何でもその彼氏さん『鏡』に映った人にそっくりなんだって!ねぇ、すごくない?」
あ、これ彼氏さんねと付け足してあかりの机の上に細かく切り分けたプリクラを置いた。
あかりは黙ってそれを取り目を細めて眺めていた。
あたしはそんなあかりの姿を見ながら足を組み直した。
「はぁ…」
暫くしてあかりが溜め息を一つ吐きながらプリクラをあたしの手に置いた。
「あかり、どう?うちらもやってみようよ!」
「……綾その話しに疑問とか感じないワケ?」
溜め息混じりにぼやくあかりにあたしは首を傾げる。
えっ?と発して。
「えっ?じゃない。まず、一瞬しか見てないって言っておいてなんで彼氏に似てるって言えるワケ?第一深夜12時にどうやって学校に忍び込むワケよ?」
淡々と話すあかり。あたしは口を開けっぱで聞いていた。
あ、そういえば……。
思わず口に出しそうになったが堪えた。
けど、やっぱりデマなのかな?でも、あたしは信じたい。だって、鏡を通して自分の運命の相手が見えるんだったら見てみたい。
知っている人かな?
それともまだ見た事ない人かな?
とにかく、気になるよ。
ワクワクする。
そわそわする。
ドキドキする。
そのせいかあたしはどうも『魔法の鏡』を否定したくない。
「あかりは夢がないなぁ。あたしは絶対映るって信じてる。」
頬杖を付きながら呟くと、
「綾は夢見過ぎ!」
きっぱりとした口調で返って来た。
良いじゃん!夢見たって!
夢見るのはタダだもん!
けど、どうせな映るならカッコイイ人がいいな。
例えば、荒城先輩みたいな人とか!
荒城直弥先輩はあたしの一個上で。
栗色のサラサラの髪にすっきり整った目鼻立ち。
まるで王子様みたく優しくて頭が良いの!!
この間の期末で学年一位を取ったんだよ!
図書館でたまに会うけど、いつもニコニコしてて穏やかな人なの。
あーー!でもタメの桐谷陸くんもいいなぁ。桐谷くんは今時珍しい、黒髪で涼しげな瞳が印章的な男子。背が高くてスタイルがいいの。バスケ部の副キャプテンをやっててすっごくスポーツ万能。
ただ、あんまり愛想がないし無口なのが玉にキズだけど、そこがいい!
あっ!!待って。確か、一年生に超可愛い男の子がいたなぁ〜!名前はクリス・アラン君。何でも帰国子女で親がイギリス人!
クルクルの金髪にサファイアような綺麗な瞳。
そこらへんの女の子より可愛いって評判だったなぁ……
神様、贅沢言わないよ。
けど、出来るならこの三人の誰か一人でも良いから映して下さい。
まぁ、まずそれには旧校舎に忍び込まなきゃ!
う〜〜ん、どうやって忍び込めば良いんだろう?
「……らさん」
さすがに真夜中の12時まで学校に居られないし……。
「新倉さん!」
一人妄想にふけているところをクラスメイトの子に呼ばれた。
なかなか反応しないあたしにイラついたのか口調がちょっとキツイ。
この時のあたしは、きっと空気を入れ過ぎて破裂した風船を見た瞬間のような表情をしていたと思う。
な、なに?と聞き返すと、
「お客さん」とあごでドアをさす。視線をそこに向けると同じ部活の子が立っていた。
深山紗季ちゃん。部活の中で一番の仲良しの女の子。
「どうしたの?」
あたしは席を立ち、紗季ちゃんの所へ駆け寄る。
「合宿の日程が決まったよこれプリント。」
そう言って紗季ちゃんはプリントを差し出した。
あたしはありがとうと言ってそれに目を落とす。そして、驚愕。プリント持つ手が震える。
「ね、今回の合宿先って……」
「そう、学校の宿舎だよ。だから行き来楽だよねー。ちょっと汚くて怖いけど。」
ヘヘッと舌を出して笑い、じゃあ、またね。と言って紗季ちゃんはその場を立ち去った。
紗季ちゃんはもういないのにあたしは暫く状況を理解出来なくて立ち尽くしていた。
予鈴であたしはようやく我に返る。
だってこれは、まさに願ってもないチャンス!!
四時熟語に直すと……何て言うの?
寝耳に水じゃなく、棚から牡丹餅でもなく渡りに船!
あれ?これはことわざだっけ?
まぁ、何でもイイ。
だって、これなら堂々と深夜12時の学校に忍び込めるんだもん!
「よぉーーーーーし!頑張るぞっ!」
ドアに背を向け、手を強く握った。別に口にするつもりはなかったのに知らぬ間に口にしていた。
そのせいか、背後から声を掛けられる。
「ほぉー…新倉、今日はやる気満々みたいだな」
低い声。振り向くと毎日顔を会わす担任。
目が合い、気まずい。
とりあえず、笑ってみたが案の定、号令後真っ先に当てられた。
くっそー!
あたしは歴史なんかより運命の相手が知りたいのに!
とりあえず、大人しく席に着いていたがあたしの頭の中では旧校舎の魔法の鏡の事でいっぱいだった。
「はい。今日の練習はここまで!」
あっという間に合宿日。
あたしは陸上部に所属している。結構、部活に力を入れてる学校だから練習が厳しい。
昼から夕方まで練習で疲れたけど目的の事を考えるとへっちゃら。
それに今日は一日目だからそんなハードじゃないし。
まぁー明日は地獄だろうけど……。
お風呂入って夕飯の定番というか王道のカレーを食べてミーティングして合宿一日目が終了。
けど、あたしはこれから本番。正念場。今回のビックイベントなのだ。
10時半に就寝。宿舎の小汚い六人部屋に八人で寝るから鮨詰め状態。
みんな練習の疲れのせいかすぐに寝た。女の子だからってイビキも歯ぎしりもしないワケない。
寝てる時もみんな、うるさい。
布団の柔らかな温もりにあたしも寝そうになったが堪えた。
11時15分に布団から出て部屋を後にした。
宿舎から旧校舎。20分くらいは掛かる。
しかも夜だから勝手が分からない。
さらに極力物音立ててはいけない。
なかなか難しい。
けど、頑張る!
運命の相手を拝む為までは!
あたしはポケットに忍ばせておいたペンライトを取り出しカチリと先を回した。
暗闇に明かりが灯る。
少し目が眩んだ。
その微かな光を頼りにあたしは足を旧校舎へと進めた。
早足で歩いたから13分くらいで旧校舎に着いた。
今となっては珍しい木造校舎。夜の雰囲気の中の姿は結構不気味だ。
けど、それより―……
どうやって中に入ればいいの?
旧校舎のドアには錆びたチェーンが絡まっている。
そして、木の立て札には『立入禁止』と書かれていた
「ちょっと……これじゃ入れないじゃん。」
ボヤきながら頭を掻いた。
本当に三組の佐藤さんはどうやって忍び込んだんだろう?
そう思いながら、あたしはどこか他に入れなそうな所はないか探した。
夜の風はひんやりしてて火照った身体にはありがたい。
木々が揺れる音も心地良い
「あっ」
5、6分程歩き回ってあたしはある物を見つけた。
それは、反開きの窓。
一瞬宝物を見つけた気分になったがすぐにゴミと化す
こんな小さい所に入れるか!てか若干高くて届かないっての!自分の心の中でツッコミを入れた。
はぁ……溜息を吐いて俯いた時に踏み台代わりになりそうな石がその反開きの窓の真下にあるのに気付いた。その周りには誰かが故意にそこへ持ってきた形跡があった。
あたしはそれが気になり、その石に足を乗せた。
すると、ちょうど良い具合に中が見えた。好奇心に駆られ覗き込む。
どうやら廊下みたいだ。
とても古くあちこちら穴が空いてるのが見える。そして、視線の真っ正面に埃まみれでところどころ欠けたり、ひび割れた鏡があった。
ハッと息を飲む。思ってたよりも小さいししょぼい。けど、なんかドキドキする。
ケータイを取り出し時間を確認してみた。12時5分前。
噂の鏡がどこの場所に、あるかなんて聞いた事がなかったけど、あたしはこの鏡がそうなんだとすぐに思った。
古びた鏡を凝視しながら12時になるのを待った。
真っ正面だからよく自分の顔が映る。ボサボサで色が落ち掛けの茶色い髪。眉も書いてないし、鼻の辺りに大きなニキビができてる。丸くて大きな顔。特別可愛いワケでもない。
だんだん不安になる。
女の子として魅力のないあたしに運命の人が現れるのか?映るのかって―……。
ジッと睨み続け、すぐに飽きた。
そして、ついでにオシッコもしたくなってきた。最悪。
でも、ここらへんに便器もトイレットペーパーもましてや人目を遮る壁もない。背後には鬱蒼とした草むらが視界いっぱい広がる。
どうして、いつもこうなんだろう?
タイミングが悪いのだ。いつもいつも。
ハァー…と溜め息をついた瞬間、
ガサガサと草むらが動き、サッと何かがあたしの足を横切った。
「キャア!」
ビクッと身体を強張らせたせいで持っていたペンライトを落としてしまった。
「ニャー」
あたしをびっくりさせた犯人は目を輝かせてすぐにまた草むらに姿を消してしまった。
「もぉー!」
驚かさないでよ。とボヤきながら地面に落ちたペンライトを拾うとしゃがもうとした時。
「えっ?」
何気なく鏡に向けた視線の先には、三人の男の子の姿が映った。
目を擦ってもう一度見直してみるといない。
目が点で口を開けたまま立っている自分だけが映っていた。
けど、見間違えじゃない。絶対。
荒城先輩、桐谷くん。それからクリスくん。
この三人が映っていたのだ。
……い、いかがですか?私は主人公、綾のノリに大分苦労しました(苦笑)そのせいか若干疲れました……(-.-;)この先、物語がどうなっていくか分かりません。多くの作者さんの発想と表現によって表情を変えていく事でしょう。これが起承転結小説の醍醐味だと思います。企画を開いて下さった春野さん、参加してくださった神崎さん、Finoさん伊勢さん、よぞさんにこの場を借りて感謝致します。ありがとうございます。皆さんの作品楽しみにしています。では。
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