白い月
生まれ落ちた場所で
空見上げる今夜は
たちこめる闇に
窒息しそうだ
月光は
唸る風と共に
降り注ぐ
優しく
残酷な
童話のよう
お前は
けがれのない光で
やつれた私を
あばいてしまう
夜道を
子供は走り抜け
大人は手探りで歩く
雪のにおい
したためた夜風
吹かれて歩き
誰も知らぬ影
道端にのびる
太陽を妬まず
星々の光を奪わず
冬の町を照らす
白い光
夜に呑まれぬお前が
ひどく羨ましい
私がいるのは
闇の底なのか
お前がつくる
光の底なのか
闇にとけぬ優しさ
冷たい風と共に
この身
震わせる
生まれた空の下
月はいつもそこにある
変わりゆくのも
消えてゆくのも
私ばかり
私ばかりが
今夜
月を見上げている