op11:戦闘 ルノア
男の剣戟が頭のすぐ上を通り過ぎる。ルノアはしゃがんだ姿勢から右手の小剣を男の喉元を狙って突き出すが避けられてしまう。
相手をプロの暗殺者ではないと確信したことから、ルノアは相手の力量を見誤った。確かに暗殺者としては素人だが、剣の腕はルノアより遥かに上だ。太刀筋からすると我流ではなく正規の訓練を受けたものだとわかる。
ギン!ルノアは男が突き出した剣を左手の小剣を使い受け流す。ルノアは素直に男を強いと感じる。どうにか互角に戦うことが出来ていのは、魔法で自分の身体能力を強化しているからに過ぎない。魔法がなければ、2、3合剣を合わせて時点で斬りたおされていたはずだ。
「何故、貴方ほどの剣の使い手が暗殺などに手を染めるのです」
距離を取り、剣を下げたルノアの姿に男の動きが止まった。
「王国の為だ」
「正式に定められた王位継承者を、庶子出というだけで排除することが王国のためですか?」
「見解の相違だな。互いに信じる正義が違うのだ。私を否定するなら剣で叩き伏せるがいい」
「貴方達のように、何でも力で収めようとする人達がいるから!」
「力なき正義は絵に書かれた餅だ。そなたの正義を作る力、守る力を見せなければ、誰がついてこよう」
男が剣を構える。
「さあ、そなたの正義を示してみろ」
男の鋭い一撃。ルノアは小剣をクロスさせ受け止める。つば競り合いの後、剣を後ろに受け流し体勢の崩れた男のわき腹に蹴りを叩き込む。魔法で強化された脚にあばら骨を砕いた感触が伝わる。
「やるじゃないか。だが、私も後に引く訳にはいかんのだ」
男の嵐のような連激が襲う。左右の小剣で受け流すが、どんどん男の剣戟がスピードを増す。そして捌き損ねた一撃が、右手の小剣を弾き飛ばしガントレットで止まる。ルノアは唇を噛み、痛みをこらえると男との距離をとる。折れてはいないがひびくらいは入っただろう。
男も追い討ちをかける余力は無かったようだ、剣こそ構えているが肩で息をしている。そしてルノアは覚悟を決めた。魔法の呪文を詠唱する。
「我、求めるは、戦乙女の槍。十二本の断罪の槍」
「させるか!」
呪文詠唱に気が付いた男が剣を構え突っ込んでくる。だが魔法の発動の方が早かった。男の足元が爆ぜ、男は爆風で飛ばされ、地面に叩きつけられる。
「もう、やめませんか」
ルノアの静かな声が響く。その周りには白い耀きに包まれた、十一本の槍が浮いている。
『戦乙女の槍』ガイア教の神官戦士が使う最大級の攻撃呪文だ。月明かりの下でなければ使えないという条件などもあるが、その攻撃力は最大に設定した場合。小さい砦なら完全破壊できる。最小の攻撃力でも直撃を受ければ完全武装の騎士が跡形もなく吹き飛ぶ。
「これがあなたの言う私の持つ最大の力です。この力では私の正義を守る力にはなりませんか?」
男が剣を杖代わりに立ち上がる。
「動かないで下さい。次は当てます」
男は剣を構えることはせず、鞘に収めた。
「私の負けだ。好きにするがよい」
男は自分の剣をルノアに渡した。
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