第六章 8 闇夜の戦い
一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。
それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。
「やつらを甘く見るなよ? 幹部クラスには天主の代行者がいるぞ」
俺は遠く闇夜に揺らめく篝火を見ながら、三人に注意を促した。
なにせ大地もベルガもレベルが40、マルりんは36と、ヒロタロウに比べれば、ぜんぜんレベルが足りないでいる。
まぁ、神様が憑依すれば強さなんてどう転ぶか判んないけれど、それでも時間切れなんかでガチ対決となれば、些か分が悪いかもしれない。
「天主の代行者? なんだよそれは」
「あ、そうか……『代行者』って呼ぶのは魔物側だけなのかな? ロキシアの光とか何とかだっけ?」
「はいはい、つまりは僕らのように、神憑を起こせる人間の事ですね?」
ベルガが爽やかな笑顔で言う。
「関係ないさ、俺達を封じれる奴は主神のおっさんか『アイツ』くらいなものだし――それ以外の三下がいくら来ようと、叩き伏せてやるさ」
軽く笑っていなす大地。
ふと、その口ぶりから、俺は一つの懸念を抱いてしまった。
こいつ……自分に憑いた神様の記憶を共有しているのか?
神様の記憶を持っているから……だから何だ? 何かまずいのか? そうは思うけれど――大地の余裕とも言える自信からは、なにかしら空恐ろしい空気が漂っているようにも思える。
まぁ、今だけは「仲間」であるし、それはそれで心強いんだけどさ。
「あー! 大地さん、誰かやってきましたよ?」
マルりんが指差す方向へと、三人が目を向ける。
漆黒の中に浮かんだ朱色の点々の三つが、微かな揺らめきを見せつつ、俺達の方へと近付いて来ているのが伺えた。
きっと降伏勧告とかそう言った類のものだろう。
「待つのもめんどくさいな、俺達も向かおう」
「あーい!」
「そうですね」
心せわしい奴らだな、いかにも早く戦いたいと言った感じが見て取れるよ。
そして歩く事数分。
城と軍勢の中間距離あたりで、双方を視認できる距離まで歩み寄る。
相手の三人は、手にたいまつを持ち、徒歩での移動のようだ。オレンジの薄明かりに揺らめくその姿は、ハーフアーマーや、鎖帷子姿と言った、いかにも野盗といった趣の中途半端な装備だった。
もしこいつらが殺盗団なら――本隊じゃないな? ダンジョン入り口に居た奴らと同じく、きっと雇われ盗賊か何かだろう。
「一応聞く、お前達は何者だ? ここはワダンダール領だ、勝手な行軍は認められないぞ?」
大地の一声に、大柄な鎖帷子の男が答える。
「我々が何者か、それは問題ではない。我々がこれから何をするか、そこにこそ君らが欲する答えがあるのではないかな?」
「つまりは攻め滅ぼされる奴に、名乗りは要らないって事か」
にやりと笑う、大柄なおっさん。
たいまつの明かりが揺らめく度に、その表情が幾千にも変化するようで不気味だ。
「念の為に問おう。諸君らは何者かね?」
おっさんの質問に、大地が胸を張って答える!
「 ワ ダ ン ダ ー ル 防 衛 軍 だ ! 」
マルりんが、ベルガが、肩を揺らして「プププ」と声を殺して笑う。
それにつられる様に、呆れ顔のおっさん共が、ふと我に返って大笑いを見せた。
「がはははははッ! これは面白いボウズだ。怪我しないうちにさっさと帰んグッ――」
おっさん達の馬鹿笑いが、不意に途絶える。大地が差し出した右手から、いつぞやの衝撃波がおっさん達を襲ったからだ!
悲鳴を上げる間もなく、軽く十メートルは吹き飛ばされた三人の男達。ドサリと地に落ちたあとは、もうピクリとも動かない。
「さて、虐殺の開幕である!」
何度聞いてもおっかねぇ、神様が降りた大地の声。どうやら今の一撃は、この戦いの幕開けの合図らしい。
「あはは! やつら動き出しましたよ~! はじまりはじまりぃ~」
軍勢の方を見ると、点々と輝くたいまつの明かり達が、一斉にこちらへと向かってくるのが見えた。
戦いに慣れてきたのか、それとも魔物の血が猛るのか、俺のテンションも上がってきたのが判る。 緊張ではない胸のどきどきが、全身の血を加速させているこの感じ。身体が「何か熱いもの」に突き動かされるようだ。
「べオウルフよ、後れを取るな? 往くぞ!」
「ああ、がってんだ! チーベル、お前はどこかに隠れてろ」
「はい、ベオウルフさん。ご武運を!」
鞘を地面に突き刺し、スラリと相棒を引き抜く。
刀身が微かに擦れる涼やかな音が、戦闘開始のベルの音ように、俺の耳に響いた。
「うおおおおおおお!」
月明かりの中を四人が駆けた!
闇に慣れてきた目が、最初の獲物を捕らえる。
が、そいつが一瞬で視界から消えうせた。横を駆ける大地が、かなりの遠距離だと言うのに、真空波だか衝撃波だかの攻撃を繰り出したようだ。
「接近戦まで待てない」と言う無言の意思表示に、俺もつられて標的を探し――
「ローエン・ファルケ!」
真紅に輝く鷹が、一直線に闇夜を駆け抜けた! そして突出してきた哀れなロキシアに、見事着弾。
ドウンッ! と言う炸裂音が響き、周囲の状況を一瞬だけ照らし、垣間見せる。
「奴らバラけてるな……だが数はそこそこ多い」
「なに、押し通るまでよ。各自油断すまいぞ!」
一人、また一人と、大地の攻撃により吹き飛ばされ消える殺盗団の方々。
が、たいまつの明かりは次第に俺達の周囲へと広がって行き、気が付けば完全に囲まれた状態となっていた。
「こやつめら、包囲したつもりですぞ。大地どの」
ベルガきゅんが、なんだか野太い声に変わっている! エッ、何? 急に変声期? おっさんみたいな声になっちゃった!
「よし、四方に分かれるか!」
大地が腰の無名な得物を抜き去り、指示を出す。
「御意のままに!」
「はいはーい!」
そして俺も、敵中へと駆けつつ返す。
「おうさ、任せろ!」
各自が思い思いに敵へと疾駆する。接近戦が始まった!
数は多いが、とにかく剣を振れば当たる状況。まるで豆腐でも切るかのように、次々と野盗山賊を切り裂き、死体の山を築くと言う、簡単なお仕事だ。
そして時折ローエン・ファルケを飛ばして周囲の確認。束の間見える状況に、現状の把握を試みる。
既に残りは、責めあぐねて遠巻きに見ている者、怯えてすくんでいる者ばかりの様子。
完全に雑魚……ダンジョンの時もそうだったけど、最初に弱いのをあてがい、状況を観察しているんじゃないのか?
となれば、どこかでこの戦い振りを見ているはず……俺達の強さを認識してこのまま退いてくれれば御の字だけど、こっちはたったの四人。まずそれはないよな。
となれば、そろそろ援軍到来かな?
そう考えた矢先に、俺の肩口に「 ド ン ッ ! 」と言う火花散る爆発と、激しい衝撃が走った!
「うぐっ! ――いってぇ!」
周囲を伺うと、そこには闇に乗じて動く黒い影……炎の鷹を飛ばして、その正体を見定める。
ドウンッ! と炸裂する炎の塊の赤に染められて、黒い影が一瞬露になった!
それは漆黒のフードを目深にかぶった、魔法使いを思わせる者達の群れ。そしてその背後には……ダンジョンで見た、お揃いの甲冑姿! おそらくは奴らの本隊だ!
「き、来たぞ、本隊だ!」
「ほう、それは楽しそうだ……マルりん、ベルガ! 雑魚は頼んだぞ。ベオウルフよ、付いて参れ! あのゴミクズどもを蹴散らしてくれようぞ!」
「がってんだ、大地!」
二人で並び、敵陣へと踊り駆ける。
逃げ遅れた魔法使いを一刀両断にし、続けざま敵の本隊めがけてローエン・ファルケを見舞う。
四散した火の粉に照らされて、本隊が露になると、地面へ剣を突き刺した大地が、そこへ両手を使っての遠距離攻撃!
「「「うわぁああぁぁぁ!!」」」
まるでボウリングのピンのように、まとめて吹き飛ばされる本隊の皆さんの姿に、思わず「ナイスストライク!」と声をかけてしまった。
「まだまだ、狙うはターキーだ!」
大地が返した言葉、それはいつか聞いた台詞だった。
そうだ――あれは大地と俺、そして美奈と三人でボウリングに行った時、接戦だった俺と大地の第十フレームで、先に投げたあいつがストライクを取り、思わず上げた俺の「ナイスストライク!」と言う声に答えた、その時の大地の台詞だ。
流石に有言実行の大地だ。続けざまにストライクを二本決めて見事ターキーを奪い取り、俺をねじ伏せ、美奈の熱い視線を独り占めしたんだっけか。
悔しかったけど、俺は「こいつに負けて本望」って心の奥で思ったっけ。
ふと思う――そうだ、今俺は大地と共に戦っているんだ。
親友と異世界の地で共闘しているんだ!
これこそ俺の望んだ展開。敵同士ではなく、共に戦う親友――背中を預けられる相棒!
複雑な思いだけれど、この戦いがいつまでも終わらなければいいのに……そんな気さえ浮かんでくる。
「フハハハハ! くたばれ、クズ共!」
だが、どことなくウチの上官殿を思い起こさせるバトルスタイルには、ちょっとだけ気後れしてしまうなぁ。なにせ、こんな大地見た事ないもんな。
と、そんな戦いに夢中になる大地の背中が気になる……かなりお留守じゃないか? そんな風に警戒をおろそかにしてると――
「黄色い巨砲!」
呪文の声へと咄嗟に目を向ける。そこには小さな雷をまとう黄色いビーム砲のようなものが……その先にあるのは大地の背中!
「アイス・アードラー!」
考えるより先に言葉が、そして魔法が炸裂していた! 氷の鷲が空を切り裂き、黄色い直線に命中。相殺はできなかったものの、軌道を逸らす事には成功したようで、そのビームは名もない哀れな盗賊風ロキシアへと伸びていった。
「ギャアアアアッ!」
周囲に放電しながら、一瞬で盗賊を黒こげにする威力。大地に当たっていたら、ちとやばかったかも。
「フン、余計な事を……」
定番の憎まれ口をたたく大地に、フンッと鼻で笑って返す。
そして改めて二人で、空気を読まずに魔法攻撃を仕掛けてきた卑怯者へと目を移した。
「良くぞ退けた、魔物よ」
余裕を持って小さな拍手を見せる、小柄なおっさん。
いかにも魔法使いでござい、と言った黒いマントを羽織っている姿は、どことなくパッチもんの奇術師と言った怪しさが滲み出ている。
「貴様等か、我が盟友ヒロタロウを屠った愚か者共は?」
「フン。ヒロタロウかQ太郎かは知らんが……安心しろ、じき貴様も後を追わせてやる」
大地の口ぶりに、臆する表情を見せないチビのおっさん。
盟友って事は、このおっさんもレベルが高そう――うっ! 「レベル115 こくまろ王子」……名前に笑っていいのやらレベルに恐れていいのやら。
「なんだ、レベル40のゴミクズではないか? このような虫けら同然の奴に不覚を取るとは、ヒロタロウのヤツ、色ボケで油断……っ!?」
と、こくまろ王子が俺の頭の上付近を見つめ、何かに気づいた模様。それはもちろん――。
「ほっほぉ! これはこれは……貴様、モンスターのくせに――」
うわあぁぁぁぁあ! 言っちゃらめぇ~!
「アイス・アードラー!」
会話の途中にもかかわらず、「その事」に気付いたこくまろ王子に向け、渾身の氷の鷲をお見舞いする!
「ふん、炎の鷹」
いとも簡単に相殺される、俺の攻撃魔法。氷の塵と火の粉の爆ぜ散る景色がやたらと綺麗だ。
「や、やいチビオヤジ! ヒロタロウにトドメを刺したのはこの俺だ! 奴を倒して秘密の扉への鍵をゲットしてやったぜ!」
つい「俺の名前」への話題を誤魔化すため、言わないでいい事まで言ってしまった……無論こくまろ王子さんのターゲットは一本に絞られ――
「おもしろい……貴様のようなゴミが如何様に盟友を屠ったのか、この目で確かめようぞ?」
うひゃー! 今の俺じゃ、勝てる自信ぜんっぜんないッスよ!
大地、たっけてー!
最後まで目を通していただいて、まことにありがとうございました!