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わたがし雲

作者:那結多こゆり
 公園にあそびに行くとちゅう、ちなつは電ちゅうの近くでふしぎなものを見つけました。顔を近づけてみると、それは雲ににています。色も牛乳のようにまっ白です。

「これって、わたがしかなー。でも、おちてるから食べれないなぁ。」

 ちなつは、ざんねんでしかたがありませんでした。あまーいおかしが大すきだからです。

「ま、まって……。」

 ちなつがその場からはなれようとすると、どこからか声が聞こえました。小さな男の子のような声でした。まわりを見わたしましたが、だれもいません。

「ここ、……ここだよ。」

 すると、ちなつの後ろからいまにもきえてしまいそうな声が聞こえてきました。ふりむいてみると、目の前に雲がぷかりぷかりと浮いていました。さっきのわたがしです。

「わ、わ、わたがしが……、ういてるぅ!」

 ちなつの足は、がくがくとふるえて止まりません。なんとかにげようとしましたが、体がカチカチにかたまってムリでした。

「おどろかせてごめんね。ぼくはわたがしではなくて雲なんだ。」

 そう言って、雲くんは体をぷかぷかとゆらしてみせました。けれど、なぜかちなつにはおもたそうにかんじます。

「くも? ……お空に浮かんでいる雲?」
「うん。そうだよ」
「なんで、その雲……くんが、どうして、あんなところにいたの?」

 空にうかんでいる雲だと知って、ちなつはホッとしました。さっきまでのこわい気もちは、どこかへとんでいってしまいました。

「じつは、うとうとといねむりしていたら、地上におちてしまったんだ。気づくと、ぼくはどこかの家のなべの中で、さとう水につけられていた。やっとにげ出せたと思ったら、さとう水に入っていたせいか、重くて自由じゆうにとべなくなっちゃったんだよ。」

 ぷかぷかんと、雲くんはちなつの前で右へ左へとふりこのようにゆれ、こまりはてたようすでした。
 雲くんの話を聞いて、ちなつはなんだかかわいそうになりました。

「ちなつ、きっと雲くんをおうちに帰してあげるからね。」

 そう言ったものの、ちなつにはどうしたらいいのかわかりません。すると、雲くんの体がふわりふわり、上下にうごきました。

「ぼくの体についている、さとう水をおとしてほしいんだ。」
「そうだ! 公園に行こう。」

 ちなつは元気よく歩きだしました。雲くんも、そのあとをゴムまりのように、ふわんふわんとはねながらついて行きます。
 公園につくと、ちなつは雲くんにふん水のばしょまであんないしてあげました。

「うわー。気もちいいなぁ。」

 雲くんは、つかれた顔がにこにこ顔になっていきます。体をたてにしたり、よこにしたりしてあらいながしました。すると、みるみるうちに、ちなつの背と同じくらいの大きな雲になったのです。

「すごーい。雲くん。」

 パチパチ。
 ふん水から離れた雲くんが、ちなつの目の前で止まりました。

「ちなつちゃん。ちゃんと、元の大きさにもどれたよ。」

 まゆ毛を八の字にたらし、きらきらした目でちなつを見ている雲くんは、さいしょに会ったときとはべつの雲みたいでした。そんな雲くんを見て、ちなつはうきうきした気分になれました。

「ほんとうにありがとう。」

 そう言いのこし、雲くんは空高くのぼって行きました。ちなつは、見えなくなるまで空を見上げていました。
 つぎの日、ちなつはママの大きな声で目をさましました。ママは、なぜかにわで寝てしまっているようです。

「ママ!! どうしたのっ。」

 あわてて、ちなつはあたりを見回しました。

「えっ? ……え、えぇー!」

 ママにまけないくらいの声で、こんどはちなつがさけびました。なんと、ちなつの家のまわりをぐるりとかこむように、小さな雲がぷかぷかとうかんでいたのです。いいえ、雲というよりも、わたがしみたいです。

「きのうのおれいだよ。うけとってね。」

 空から雲くんの声がしました。ちなつは、雲をちぎって口に入れてみました。ふわりととろけるわたがしのあじ味がします。

「おいしーい。」

 まだ、いっぱいうかんでいるわたがしを見て、ちなつはうれしくてたまりません。

「ちなつちゃーん。あたしもたべていい?」
「ぼくもー」
「まってまって、あたしもー。」

 ふわふわのわたがしに囲まれたちなつの家に、なかよしのお友達が集まってきました。

「いいよー。でも、順番だよ?」
「わーい。やったぁ。」
「あら、みんなでいいわね。おばちゃんも仲間にいれて。」
「あ。おとなりのおばちゃん。いいよー。」

 それだけじゃありません。おとなりのおばちゃんやおじいちゃんにおばあちゃんまで来ました。

「あそこのお家で、わたがしたべられるんだって」
「ママー。わたがし食べにいこうよ。」
「そうね。でも、すごい並んでいるわね。」
「だって、ママ。おいしいところって、いっぱい人が並んでいるんでしょう」

 ちなつが知らないうちに、なんだかすごいことになっていました。家のまわりにたくさんの人が列を作り、わたがしをたべようと並んでいます。まるでにょろにょろとした長いへびのようです。
 そして、明日のニュースをかざったのは、ちなつの家に舞い降りてきたわたがしでした。

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