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[STORY]神の手雲
作:ぱちお


地球上空200km衛星軌道。
「あなた、それでも…」
10年前のJaneの叫び声が頭に回想する。
彼女は私の目の前で消滅した。
なんの事はない。私も仲間もすぐに行くさ。

「Chife、緊急衝撃バンパーを!」
「マルチプルバンパーなど意味ない。紙と同じだ」
「Yan、タバコくれないかな。」
「Chife…」
「みんな同罪さ」
宇宙空間の気密施設では、空気は貴重品だ。ましてやタバコなどありえない。
Yanはいつも食わえているだけだった。
みんなに一本づつ渡しながら、防爆用の電気カッターをフル出力にして、紙を燃やした。
その紙を全員に回す。
「なあみんな、人類はタバコでなんで満足しなかったのかな?」
「Chife、あなたのような人がいるからですよ…」
「みんなは違うのかい」
「同じですね」
皆の顔にある意味の諦めと安堵の色が見えた。
「なあ、私は次は料理人になりたいんだ」
「なぜですか?」
「厳しいけどみんなに喜んで貰える仕事をやりたい」
「次があれば、できますよ。次があれば、みんなまた会えます」


高エネルギー研究開発国際共同体。このステーションは衛星軌道に作られた。
人類が余りにも危険だからと、地上での開発を許可しなかった、対消滅実証実験ステーションHADORON。
このステーションより200km離れた軌道に実証実験モジュールを置いた。そもそもそれが間違いなのだ。暴走した実験モジュールはあと数秒で陽電子をミラーより吐き出す。
電子との対消滅エネルギーは核エネルギーの200倍以上。ハドロンの火。
この宇宙ステーションは瞬秒で消える。

「なあYan、神の手雲って知ってるか?」
「いや、なんですか?」
「21世紀の初頭にそういう写真が流布したんだ。あれは間違いじゃなかったのかもな。地球から見たら、あと数秒で神の手雲が見えるはずだ」
「中国は当時拡大してましたから…、Chife、あなたは中国がお好きですか?」
「本場の中国料理が食べたかったな。始皇帝の美食とかね」
「では、毒味は私ですね」
お互いの顔から笑いがこぼれる。
「地球の損害はどの程度でしょうか?」
「予想できない。人類が初めて見る火だ。計算範囲の暴走なら地上に被害はない。私達は確認できないがね」
「残念ですね」
「沢山の仲間が待っているさ、もう止めろとね」
「確かに…、宇宙創世を扱うなど、猿には無理でしたか」
「次は猿は嫌だな」
「Chifeは間違いなく猿ですよ。あなたの罪は神様が許さないでしょう…」


瞬間に発生するエネルギーは宇宙創世のインフレションと同じだ。
私達は死ぬ意識すらないだろう。1/100秒で消える。Janeのように。
「Chife、Janeは妊娠してました…」
「なんだって?」
「彼女は…

視界が消えた。意識も消えた。














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