創造主の異世界旅行 9話
幼女(使い魔)は片膝を着いて、僕の目の前に召喚された。
「君がゼロ?」
ゼロの周りには濃密な魔力が漂っている。
未だ片膝を着いたまま面を上げず、ゼロは沈黙を保っている。
数秒後、ゼロは口を開いた。
「我が名は『ゼロ』、主の命により参上しました」
「召喚に応じてもらってありがとうね」
「いえ、主が喚ぶなら、我はただ従うだけです。感謝の言われは必要としません」
言動や姿勢を見たところ、性格面が凄く硬そうだ。
「良いんだよ、言いたいんだから言わせておいて欲しい……。それと、さっきから頭を下げてるけど、そこまでして僕の顔を直視したくないという訳じゃ無いでしょ、だったら面を上げて欲しいな……」
ゼロは渋々と顔を上げ、僕の顔を凝視してる。
「まずは質問、良い?」
僕は念の為、ゼロに確認を取った。
「我が答えられるものでしたら何なりと」
「じゃあ一つ目。なんでゼロは人の姿してるの?」
乗り物として使用する為に喚んだのに、人型とか……。喧嘩売ってるのか……。でも美少女だし、こっちの方が良かったかも。
「あ…はい…。主は解ると思いますが、私の『本体』の存在自体が、この世界の『キャパシティ』を大きく上回っている為、このような仮染めの姿で現界しました」
あ、そうそう『キャパシティ』ってのはね、『世界』の存在できる許容量のことを指すんだ。
つまり、ゼロの存在自体が、この世界の許容量を大きく上回っているってことなんだ。そして、許容量を超えると、世界自体が無くなってしまう。
そもそも普通は、個体で世界の許容量を超えることなんて、普通は有り得ないのだが、ゼロは単体でやっちゃったみたいだ。
え?僕は神様だけど裏技使ってるから大丈夫なんだよ。
「なるほど、でも、なんで人の姿?」
別に、人の姿じゃなくても良いのでは?
「それは、色々あって人の姿をとっていたら定着しまして……。別に他の姿にも変えられるのですが、人の姿で暮らしていた分、こっちの方が馴染みがありまして……。本来の姿は、世界を選ばないといけませんでしたから大変なんです」
「分かったよ、理由が有うが無かろうが、ゼロは僕の使い魔なんだから気にしなくて良いよ」
僕はどこか優しげに言った。
「……主に感謝を……。それとさっきから隣で倒れてる方は何物ですか?」
ゼロの視線を追うと、そこには、倒れているエリスさんの姿があった。
「エリスさん!」
どうやら、僕が召喚する時に、過度の魔力量に当たってしまい、気絶してしまったみたいだ。
「うわ!白目剥いてる息してない、いかにも死にそうなパターンだよ!ど、どうしよう!」
僕が慌てていると、隣にいるゼロに少し驚かれた。
「まさか、主、召喚をしている最中にもこの者は居たのですか……?」
「はい、居ました……」
しばしの沈黙。この沈黙は、僕にとって痛いものだった。
「主、落ち込んでいるよりも、この者を助ける方が先決だと思います」
このゼロの一言により、少し冷静を僕は取り戻した。
知識はある、力はある、だけど完全に制御出来るか僕にも分からない。だけどやってみるしかない。
時間は刻々と過ぎていく、忙なければいけないのに、足が震える。
エリスさんが死んでしまう……。
制御を間違えたりしたら。
間違えてエリスさんを殺してしまったら……。
そんなものが頭を駆け巡り、より一層僕に不安を与える。
僕が初めて会った人……エリスさん。
初めて会えた時のことは、今でも鮮明に思い出すことができる。
自分の注意不足でエリスさんが死んでしまうなんて……。僕には我慢できない!
だから僕は……。
動かない足に力を入れ、エリスさんの身体に触れた
まだ温かい……。
助けられる可能性があるのに助けないなんて馬鹿馬鹿しい。
……今助けます……。
エリスさんの周り光が集い、光は命を分け与える。
「さすがは我が主、無詠唱であれほどとは、……流石は神」
「あれ?なんで私寝てるんですか?」
どうやら成功したようで、エリスさんが目を覚ました。
「良かった……。本当に良かったよ~!!」
そして、僕は感動のあまり、エリスさんに抱き着いてしまった。
「え!え?!」
状況が読めないのか、エリスさんは混乱している。
「良かったよ~!!」
「え~っと、何がどうなってこうなったのか、晶さん、教えてもらいませんか?」
「それは、我が主の代わりに答えます」
「主って何!?その子誰ですか!?」
ゼロの突如の登場に、エリスさんは驚いていた。
「それも含め、我が説明します」
それからゼロは、エリスさんに全てではないにしろ説明をし、どうにかして納得してもらった。
「つまり、ゼロちゃんは晶さんの使い魔で、私はその儀式の過度の魔力量に当てられて、倒れたということですか?」
もちろん、エリスさんには一度死にそうになりましたとか、ゼロの存在についてなど、危なそうなとこは省いて説明した。
じゃなきゃ、後で色々問い詰められたり、色々酷いめにあいそうだ。
「その通りです。後、我にちゃん付けは止めて下さいエリス殿」
「え~、可愛いじゃないですか」
ゼロの批判的な言葉に対し、エリスさんは一歩も譲らない。
「だって、こんな可愛いくて小さいんだし勿体ないですよ!」
力説するエリスさんに対してゼロの表情は変わらない。
確かに、ゼロの見た目は8才程の少女で、胸も身長も無い。
髪の色は銀髪で眼は真っ赤。気が強そうで身長は無い。ギャップ萌えとかそんな感じだと思う、そんなんだから可愛いと見られても仕方ない。
「しかし、ちゃん付けは多少なりとも抵抗を感じます。だからやめていただきたい」
多少どころじゃなく凄く嫌がっているのが分かる。
「ゼロ。馴れるのも大事だと思うよ」
「分かりました主……。エリス殿、ちゃん付けでも何でも来て下さい」
渋々といった感じでゼロは了解した。
「じゃあ、お言葉に甘えますね。そうですね……。私の事をエリスお姉ちゃんと呼んで下さい!」
ゼロが少し身体を震わせている。
「いえ……。それは少し……」
ゼロはかなり抵抗を感じているようで、言葉を上手く紡げないようだ。
「ほら、晶さんが言ってたじゃないですか、「馴れは大事だ」と、今から精進しましょう!」
ゼロは僕の方を見てきた。
僕のせい?
視線がそんな感じで訴えてくる。
そんなのは、本人達で決めてね?
と、ゼロにアイコンタクトで送った。
(了解しました……)
対してゼロは、僕に念波を送ってきた。
……アイコンタクトいらないじゃん……。と心の中で思った。
「姉では無い者を、そう呼ぶのは抵抗を感じます故、そうは呼べませんエリス殿」
「そうですか……。でも、いつかはゼロちゃんをお姉ちゃんと呼ばせてみせます!」
ゼロはフッと笑い。
「頑張ってみてください。よもやその願い、この身に届くかもしれません」
これが、クーデレか……。未だデレの要素は無いけど、ゼロがいつかデレると信じてる。
「はい!分かりました!」
なんか、立場逆になってない?
「ゼロちゃんの髪フサフサだね~」
いつの間にか、エリスさんがゼロの頭を撫でている。
「そうかですか?」
嫌がる様子はなく、ゼロはエリスさんに頭を撫でられている。
「はい!フサフサフサフサ最高です!」
そんな調子で、エリスさんとゼロは親睦を深めていった。
しかし、使い魔を召喚したのは、確か足が無いからだった気がする。
けして親睦を深める為だとか、お姉ちゃんと呼ばせる為とか、そんな事の為に喚んだのではないのだが……。
僕は、再度ゼロとエリスさん方を見て、これでも良いかなと思った。
本当の姉妹のようで、見ていて羨ましいと思ってしまったのはここだけの話。
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