第五章:戦場への旅路(一)
――ヴィルハルト帝国 帝都シュルツハウゼン。
日が落ちた。大陸の北に位置する帝国では、初夏の頃とは言え、夜ともなれば肌寒さを感じる。帝都シュルツハウゼンも例外ではない。先ほどまで白熱した議論が行われていた一室も、人の姿がほとんどなくなると、次第に部屋全体が冷気を帯びてくる。
軍議は終わった。作戦の大枠は既に固まっていたため、特に異論もなく、当初の予定通りに決まった。準備がやや遅れているものの、全体としては思ったとおりに進んだと、ゲルトラウト・ヴィルヘルム――ヴィルハルト帝国第一皇子は満足そうに、誰もいなくなった室内を見渡していた。ほっそりとした体つきは剣を振るうようには見えない。薄くなった毛髪から年齢よりも年上に見られるが、三十を少し超えたばかりである。いつもの神経質そうな表情は影を潜めていた。
三年ぶりの軍事行動。それは、フォルティリアを事実上崩壊させるためのものだ。今回の作戦の最終目標は、公国の首都ファンティーネを制圧することだ。もちろん簡単ではない。だが、それを成功させれば、自らの評価を一気に高めることができる。だからこそやらねばならない。それも、四将軍を用いず、自分だけの力で。ゲルトラウトは、三年前のことを思い出す。
三年前も最終目標は今回と同じだった。アンラード地方への侵攻は、フォルティリア公国の首都を攻略するための足がかかりであった。休戦協定を破ることに反対意見はあった。それでもフォルティリアを屈服させれば、大陸統一に向けて大きく前進する。ゲルトラウトは、最終的には反対意見を押し切るかたちでアンラードへ軍を進めた。失敗は許されなかった。だからこそ準備は周到に行った。まず傭兵部隊で各地を襲撃させ、混乱に乗じてアンラードの主要拠点を次々に正規軍で攻め落としていった。慌てふためく公国を尻目に、僅か一週間足らずでアンラード地方のほぼ全域を制圧した。だが、そこで活躍したのはゲルトラウト率いる主力部隊ではなく、グスタ、ファルコ、ラザファムといった四将軍の部隊であった。とりわけ、若くして四将軍に名を連ねたばかりのクルトの活躍は目覚しく、当時従軍していなかったにも関わらず、クルトを推したフェルディナントの評価が高まるといったことが起こった。さらに悪いことに、陽動の役割を果たしていた傭兵部隊が、襲った町や村で略奪行為を繰り返したため、ゲルトラウトの管理能力を疑う声も出始めていた。
ゲルトラウトは焦った。
制圧したはずの地域でも、傭兵部隊の非道な行いに反感を抱いた諸侯の生き残りや住民がゲリラ的な抵抗を行っていたため、アンラードから先への侵攻が思うように進まなかった。一月半ほど小規模な抵抗に悩ませれていたが、ゲルトラウトは名誉を挽回すべく、フォルティリア公国の主要都市への侵攻を決定、実行に移した。
アンラード地方の治安強化を四将軍に任せ、首都ファンティーネに続くバール街道を西進した。カノヴィス平原に差し掛かったところで、フォルティリア公国軍と衝突し、激しい戦闘となった。当初優勢に展開していたヴィルハルト軍ではあったが、公国の魔術部隊の挟撃により戦線が瓦解すると、堰を切ったように後退していった。そのままアンラード地方まで推し戻され、その一部を奪還されるという失態を演じた。ゲルトラウト自身も、数騎の供を従えて命からがら逃げ出し、四将軍の活躍でなんとか命を繋いだのだった。
結局、カノヴィス平原での大敗が、帝国内でフォルティリア侵攻に慎重論を唱えていたフェルディナントを勢い付かせる結果となり、アンラードの六割方を自国に取り入れたにも関わらず、ゲルトラウトの評価は一気に下がる結果となった。
三年前の汚名をそそぐには、自らの手で戦功を上げなければならない。四将軍の力を、借りるわけにはいかない。ゲルトラウトは決意を新たにすると、軍議の開かれていた会議室を後にした。
――同時刻。ヴィルハルト帝国 帝都シュルツハウゼン 王宮内の一室。
フェルディナントは、目の前にいる女性の頬を優しく撫でると、額に軽く口づけをした。女性は惚けたように、フェルディナントを見つめる。その眼差しを微笑みで受けながら、フェルディナントはもう一度、今度は頬に口づけをした。
「手間をかけさせて済まなかったね。とても助かるよ。アヌシュカ」フェルディナントは笑顔のままそう言った。
「手間などと思ったことはありません。フェルディナントお兄様のお役に立てるのであれば、これくらい……」
黒い瞳をゆらゆらと揺らして、アヌシュカは見つめ返す。フェルディナントが手を離すと、少し癖のある長く茶色の髪がふわりと落ちた。離れていく手を残念そうに見つめながら、アヌシュカは自分の頬を手で触れた。
「他も順調だ。あとはフォルティリアがどう動くかだが……、まあ、いくつか選択肢は用意してある。問題はないだろう」フェルディナントはアヌシュカを見て、もう一度微笑んだ。
「フェルディナントお兄様の策ですもの。失敗するはずがありませんわ」
「ありがとう、アヌシュカ。君のような才女に言われると、不安も吹き飛ぶよ」
「そんな……。私如き、お兄様に比べれば……」
「いや、アヌシュカ。私は周囲の優秀な人材に支えられているに過ぎない。恵まれているだけだ。本当に実力がある人間というものは、四将軍や君のような人間を言うのだよ」フェルディナントは少し俯いたが、すぐに顔を上げて笑顔になる。
「本当にありがとう。これからも、私の力になってくれるかい?」
「もちろんです。お兄様のためならば、私は、……」まっすぐに、フェルディナントを見る。
フェルディナントは、アヌシュカに口づけをすると、「もう遅いから」とアヌシュカを部屋の出口まで送った。アヌシュカは名残惜しそうにしながら、部屋を後にした。
フェルディナントは薄く笑う。アヌシュカとは母親は違うが、血の繋がった兄妹であることに変わりはない。アヌシュカの好意は、普通の兄弟に対して向けられるものとは明らかに異なっていた。愛情と憎悪は表裏一体の感情だ。その感情を利用するには、大変な危険が伴うものだ。フェルディナントは自分を戒めながらも、ここまで愛情が育ってくれたことに満足していた。
フェルディナントは他の兄弟のことを考えた。兄であるゲルトラウトは、才能はそこそこであるが嫉妬深く、欲で思考を停止させることがある。為政者としては失格だろう。第一王妃の子供は皆そうだ。ゲルトラウトも、その弟も、そしてアヌシュカも。唯一アヌシュカは、魔術師としての才能があり、第一王妃の子供の中では使い様がある。フェルディナントはそう考えている。そう、この三人は取るに足らない存在だ。だが、残りの二人は――。もっとも、その二人は自滅している。能力は高くても、その甘すぎる性格は、為政者としては致命的だ。
ゼルギウス皇帝には三人の后がいた。フェルディナントは第二王妃の、アヌシュカ以外の妹二人は第三王妃の子供である。第二、第三王妃は、嫉妬に狂った第一王妃に謀殺されたという噂が絶えない。事実、そうだった。フェルディナントも、第一王妃自身から聞いたのでそれを知っている。そして、第一王妃は毒殺された。第一王妃は自室に食事を運ばせ、その後自室で倒れているところを侍女に発見された。犯人はすぐに捕らえられ、皇帝を狙ったが誤って第一王妃の食事に毒を仕込んだと供述した。不可解な点が多々あったにも関わらず、供述をもとに犯人は処刑され、それ以上の調査は行われなかった。
今のところ、フェルディナントを脅かす存在は、皇帝ただ一人と言っていい。皇帝は、かつて連邦体制をとっていた大陸北部を一代で平定し、すべて帝国に吸収したほどの豪腕の持ち主である。四将軍に匹敵するほどの強さと先見の明、非情さを伴った行動力を併せ持っていた。だが今は、どういうわけか離宮に引きこもり、政務にはほとんど関与していない。もっとも、影響力は絶大なままであるため、フェルディナントも情報収集に躍起になっていた。
しばらくして、部屋に中年の男性が訪れた。服装は騎士然としていながらも、長く波打つ髪と無精髭が遊び人を思わせた。長身ながらやや細身の体躯からは、四将軍の一人であることは想像しがたい。ファルコ・シュヴァルツ。一たび戦場に出れば、三叉槍を自在に操り、またたく間に百を超える屍を築き上げる歴戦の勇者の一人であった。
「呼び立てて悪かったね。ファルコ将軍。折り入って相談があるんだ」
「これは光栄ですな。フェルディナント皇子から相談をされるとは思いませんでした。少々怖い気もしますが」
「そう改まったものでもないのだけれどね。ただ、今度のフォルディリア侵攻作戦では、私と一緒に来て欲しいのだよ」
「ふむ……。私は留守番だと先ほどの軍議で決まりましたが、その上で、ということですかな?」
「ああ、君ほどの勇者を連れて行かない手はないだろう? 後方の補給部隊ではあるけれど、何が起こるかわからないのが戦場だ。念を入れるに越したことはないからね」
「光栄ではありますが、同じく留守番のラザファムに嫉妬されませんかな」いたずらっぽくファルコは笑う。
「彼がそんな感情を持つことはないだろう。むしろ帝都の守りを任されて奮起していると思うよ。彼は、まあ、……もう少し時期を見て、というところかな」フェルディナントは笑顔を見せながらも、鋭い視線をファルコに向けた。そして話を続ける。
「ファルコ将軍は、先ほどの軍議をどう感じたかな?」
「どうお答えしてよいものかわからないご質問ですな。どのような答えをご希望で?」
「私はね、ファルコ。フォルティリアに攻め込むことには反対なのだよ。三年前も、今もね。今回は表面的には兄上に賛成してはいるけれど、今でもその考えは変わっていない。あれほどの大国ともなれば、力押しで手に入れることは難しい。現に、三年前は失敗しているわけだしね。あの国は外交でなんとかするべきだと、考えているんだ」
「私は戦争屋です。ただ戦場に出て戦うのが仕事ですので、政治のことはわかりかねますな」
「政治云々の話ではないよ。効率の問題だ。フォルティリアは放っておいても内側から崩壊してく国家だ。わざわざ武力で圧力をかけて、逆に結束を高めさせるような真似をするなど、愚かなことだとは思わないかな?」
ファルコの顔が徐々に強張っていく。深入りは危険と思ってはいても、フェルディナントの迫力に押し負けてしまっていると感じていた。これ以上話を続ければ、自分には二つしか選択肢がなくなる。フェルディナントに付くか、それとも――。
「今回もフォルティリアには勝ってもらう。もちろん、あちらには相応の対価を払ってもらうけれどね。あとは沈黙を続ける皇帝陛下、いや、父上次第だが、……どうかな? 私に、協力してはもらえないだろうか?」
意表を突かれた。そろそろ危険だと思った矢先に、二択を迫られてしまった。ファルコの顔から笑顔は消えていた。だが同時に、この男を敵に回すのは得策ではないという思いもあった。いや、既に自分は惹かれている。ゼルギウス皇帝の魅力とは全く異質ながら、遥か高みに立つ者が持つ独特の雰囲気に、ファルコは魅了されつつあった。
「できれば皇帝陛下とは仲良くしていただきたいのですがね。ま、もう逃げられそうもないようですから、観念しますよ」とぼけたようにファルコはそう言った。
フェルディナントは笑顔で答えると、「では細かい話を詰めようか」と言ってファルコに詳細を語った。ファルコは既に心を決めた。今回の戦いでフェルディナントの実力がはっきりする。そして、その実力は本物であるという確信もあった。
フェルディナントは内心でほくそ笑む。これで三人。グスタは半ば人質をとって従えているようなものであるが、それ故に表立って反抗はしないだろう。足場は徐々に固まりつつある。後は――。退室するファルコを見送りながら、フェルディナントは決意を新たにした。
――同時刻。ヴィルハルト帝国 帝都シュルツハウゼン 王宮内のとある部屋の前。
クルトは軍議が終わった後、しばらく部下に作戦を説明した。その後、王宮の外れにある部屋の前に来た。少しのあいだ逡巡した後、扉を叩いた。
明るい声とともに扉が開かれると、嬉しそうな笑顔のローゼマリエがクルトを迎えた。
「先ほどまでグスタ将軍がいらっしゃっていたのですよ」
ローゼマリエのその言葉に、クルトは注意を怠っていたことに気付いた。王宮に来たのであれば、グスタ将軍はここに立ち寄ることは分かり切っていたはずだ。もし鉢合わせしていたら、気まずいどころではない。作戦に影響を及ぼしかねなかったと、反省した。
「お元気そう……ではないですね。少し、お疲れなのではないですか?」
相変わらずよく気が付くものだとクルトは感心しながらも、「大丈夫です」と意味のない答えを返した。
特に用事があって来たわけではなかった。ただ顔が見たくなったのだろうと、自分の事ながらよくわからない感情を、クルトは持て余していた。
侍女を呼び、お茶の準備を始めたその姿を、椅子に腰掛けてぼんやりと眺めていた。
「バーゼルトへは、お戻りになられているのですか?」
急に問いかけられて、クルトは言葉がでない。「いえ」とだけ答えて、黙ってしまった。しばらく沈黙が続く。
バーゼルト王国は、クルトの故郷だった。今は、国家としては存在しない。ヴィルハルト帝国の一地方として存在しているに過ぎない。十年前、連邦国家郡を次々と攻め落としていた帝国に攻め込まれ、帝国に吸収された。両親は殺され、クルトは捕らえられた。十五歳の頃のことだった。父親はバーゼルト王国の国王。クルトは皇太子だった。二年後、バーゼルトが安定したことを受け、一度は返された。その翌年、剣の腕を見込まれて帝国軍の正規兵として徴用されたが、実質はバーゼルトの王家支持派を押さえつけるための人質のようなものだった。それでもクルトは軍で目覚しい戦果を次々に上げ、フェルディナントに推挙されて弱冠二十二歳で四将軍の地位まで上りつめた。それから三年。四将軍の中では、グスタに次ぐ実力の持ち主と評されている。
「ローゼマリエ姫殿下、明日、アンラードへ出発します」
既にグスタ将軍から聞いているはずだ。意味のないことを言ったと、クルトは思った。
「クルト、今は二人きりですよ。そのような話し方は止めてください。昔のように、兄のように語りかけてくれた、あの頃のようにはなりませんか?」
クルトは俯いた。そして、何故ここに足を運んだのかを理解した。
「私は、……私には、そのような権利など、ありはしません。あなた方を、このような境遇に貶めたのは、私にも責任があるのですから……」
あの時は、自分のことで精一杯だった。いや、むしろ両親と母国の敵である男の娘として、クルトは恨んでさえいた。
「貴方に責任などあるはずがありません。すべて私の不徳の致すところ……。なんて、やめましょう、この話は、暗くなってしまいます」笑顔を向けて、ローゼマリエは言った。
またも沈黙が訪れる。それを破ったのは、クルトだった。
「ローゼマリエ様。一つだけ、よろしいでしょうか」クルトはまっすぐにローゼマリエの瞳を見た。
「なんでしょうか?」ローゼマリエはそれに応える。
「私は、フェルディナント様にすべてを託すと、決めました。ですから、……」それを認め、敵対することがないようにして欲しい。クルトは、その言葉は飲み込んだ。ローゼマリエの悲しみを帯びた瞳を見て、それが無駄なことだと理解してしまった。
「クルト、フェルディナントお兄様の目指すべきところは、私達も理解しているのです。ですが、手段を選ばぬそのやり方を、認めるわけにはまいりません。お兄様がやろうとしていることを、貴方は本当に理解されているのですか?」毅然と、言い放った。これまでの柔らかな雰囲気は、微塵も感じられない。
「無論です」その言葉は、すべてを断ち切った。クルトは立ち上がると、「貴女こそ理解してはいない。フェルディナント様は、手段を選ばないのではありません。最善の手段を選んでいるが故に、誤解されているのです」そう言って、振り返ることなく、部屋を後にした。
「そう、最善の手段を選んでいるのですよ。そしてそれは、多くの人にとって、最悪の手段なのです」ローゼマリエは、閉じられた扉に向かって、そう呟いた。
――同時刻 アンラード地方 ドミの森
男は走る。月明かりの届かない森の木々をすり抜け、生い茂る草むらを踏み越え、緩やかな坂道を転がるように、ただひたすらに走る。手にした剣は折れ、身体は傷つき、仲間二人も失った。
(あれは一体なんだ?)何度も繰り返した言葉を、心の中で叫ぶ。
男はアンラード地方に移動しつつあったヴィルハルト帝国軍の動向を調査する目的で、仲間とともに帝国軍の陣営に潜入した。情報は集まった。主力部隊のすべてが展開されているわけではないようだが、規模も、陣容も、指揮系統も、大筋は把握した。後はそれを持ち帰り、協力者を通じてフォルティア王家に伝えればいい。現在の王家に期待はできないが、情報は渡すに越したことはない。少なくともアンジェリーヌ王女に伝われば、うまく使ってくれるはずだ。男たちはそう考えていた。
だが、今はその情報を持ち帰ることができるかどうか、わからない。
オォォォォッーーー!
後方から、雄たけびが聞こえてきた。それは、先ほど男の仲間二人を巨大な戦斧で叩き潰した怪物に間違いない。長身の男を遥かに超える大きさの怪物は、頭が雄牛という異形の巨人だった。
追いつかれるわけにはいかない。あのような怪物がいること自体、フォルティリアにとっては脅威でしかない。この情報をこそ、伝えなければならない。あれは、帝国で造られたものだ。
男は必死に走った。
男とて剣技には自身を持っていた。だが、人の域を遥かに超えた怪物相手では分が悪かった。善戦はしたものの、斬りつけても剣が通らなければ勝ちようがない。そのうちに戦斧で殴りつけられた。剣でなんとか受けはしたが、剣は折れ、身体も傷つき、撤退を余儀なくされた。アバラが数本折れていた。吹き飛ばされた際、背中にも外傷を負った。痛みに耐えて走ってはいるが、それも限界に近付いてきた。
オォォォォッーーー!
再び雄たけびが聞こえた。先ほどよりも近くなっている。痛みで目が霞む。意識が途切れそうになるのを必死の思いで繋ぎとめる。だが、その先には絶望が待ち構えていた。
――ッ!
木々が途切れた先には、何もなかった。
足元を見下ろすと、絶壁の下に月に照らされた急流が見えた。ドゥルージェ河に続く名もない川の一つだろう。川幅はそれなりにあるが、水流の勢いからすると水深は期待できない。そもそも、この怪我で急流に飛び込むのは自殺行為以外の何者でもない。だが――。
迷いはなかった。迫り来る怪物は、眼下に広がる光景よりも絶望的だった。
男は、ある少女のことを思い浮かべた。一族の宿願を背負い、たった一人、旅立った少女。ただ一人の、自分の本当の家族。死ぬわけにはいかない。あの少女の幸せを見届けるまでは。
矛盾した想いを胸に、男は、濁流目掛けて飛び込んだ。
一羽の梟が、それを見ていた。大きく羽ばたくと、月に向かって飛び立った。
早速言い訳で申し訳ないのですが、調べ物などで時間を取られ、ペースが少し落ちるかもしれません。
なるべく週二話のペースは保ちたいとは思っていますが、ちょっとずれるかもです。
誤字・脱字、矛盾点等々、お気づきの箇所がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。
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