銀河英雄年代史外伝 ケリム星域遭遇戦 予告
銀河英雄伝説の二次創作小説です。舞台はヤンやラインハルトらの時代よりも二十年先の未来。ローエングラム王朝で平和を守るために戦う若き提督たちの物語です。
新帝国暦二一年一月二〇日午後二時三〇分 ヴェルナー・テンシュテット大佐率いるバーラト星系警備艦隊第六戦隊五〇〇隻はケリム星域からバーラト星系へ向かう商船隊からの救難信号をキャッチした。
先のケルン占領以後、大規模だった反乱はなかったものの、通商路を狙った海賊行為はあとをたたなかった。
「まったく、毎度毎度嫌になるわ。何度痛めつければ懲りるのかしら」
艦隊参謀長のナオ・リヒテンシュタイン中佐が腕組みをして言った。
「確かに同感だが、彼らにしてみれば生きるために必要な行為だ。頭から否定することは出来ないさ」
艦隊司令官のヴェルナー・テンシュテットは言った。
「あら?やけに連中の肩を持つのね。ヴェルナー」
ナオは意外という顔をして、指揮シートに座った一歳年少の黒髪の司令官に言った。
「まぁね。海賊に片足を突っ込みかけてる相棒がそばにいるからね」
おどけて言ったヴェルナーであったが、その代償は計り知れないものだった。彼の頭上からナオのげんこつが降り注いだのである。並の男五、六人を相手にしておつりが来るほどの腕っ節を誇る鉄腕リヒテンシュタインの鉄拳である。ヴェルナーは想像を絶する痛みにのたうち回りながら、ナオに抗議した。
「痛いな! 参謀長!! こぶが出来るだろうが!!」
ナオは手に腰をあててふんぞり返った。
「あら、乙女の純情を傷つけた罰よ」
「まったく……三十路過ぎて何が乙女だよ……」
艦橋にいたものは例え遮音防壁越しでもナオの堪忍袋の緒がキレた音が聞こえたであろう。オペレーターたちは艦橋内の空気が絶対零度に近い温度に下がるのを感じた。その次の瞬間にはヴェルナーの悲鳴が聞こえて来た。
「ふふふ。これが楽しみだから、この艦隊は辞められないわ」
オペレーターの一人が言った。
「艦橋名物、司令官と参謀長の夫婦漫才ってね。艦長を見てみろよ。また胃薬飲んでるよ」
もう一人のオペレーターが言った。緊張が少しだけ和らいだが、コンソールに映し出された反応を見て再び顔色が変わった。
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