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異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!) 作者:ダイスケ

第二十章 冊子を印刷して冒険者を支援します

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第326話 絵描きたちの話

「まず、エランの絵はなかなかいい。絵は独学なのか?」

そう言いつつエランの顔を、次いで手の甲を見つめると、若い。というより、幼いように見える。
人間の年齢は手に出る。顔は誤魔化せても、手に出る年齢を誤魔化すことは難しい。
まだ成人して間もないか、15、6歳ぐらいではないか。

「エラン、今、何歳だ?」

「18歳です」

「正直に言うんだ。報酬を値切るために聞いたわけじゃない」

「・・・15歳です」

と、少し不貞腐れた様子で言う。

「15歳!」

と、隣のサラが小さく声をあげる。
商家を飛び出した挙句、先の見えない冒険者稼業でその日暮らしをしている少年に、自分の弟妹達の姿を見て同情したのかもしれない。
懇願するようなサラの視線を受けて、少しお節介をすることにした。

「それで、エランは冒険者稼業を続けたいのか?もし喧嘩をして戻りにくいだけなら、自分が仲介してもいいが」

商家で下男をしていたのなら、何とか謝って戻り、勤め続けた方がいい。
冒険者稼業は、危険の多い荒事だ。
少数の例外はあるが、体が大きく、背が高く、腕力があり、用心深く気性の荒い者が大成する世界だ。
そして、数年もせずに死んだり不具になって引退する者が続出する厳しい生存競争が待っている。
エランの痩せて背の低い体格を見る限り、どうやっても冒険者としての先があるようには見えない。

エランが黙っているので、とりあえず用件を済ませてしまう。

「まあ、いい。その気になったら、声をかけてくれ。次に、フランツだが。確か、昔会ったことがあったような?」

そう聞くと、フランツは背筋を伸ばして大声で答えた。

「はい!以前、サラさんに店を案内していただきました!」

「そうか。それで、絵は独学なのか?」

「はい!いいえ!村にいた頃、司祭様に習いました!」

農村によっては、教会に赴任した聖職者が教育者となって農民に教育を施すことがある。
だいたいは、現地の農民の無理解と児童も労働力として必要とされる現実の前に、教育が空回りして終わることも多いのだが、フランツについては幸運な例外だったようだ。

「すると、文字の読み書きもできるのか?」

「はい!司祭様に、一通りは習いました!」

「計算はどうだ?」

「あまり大きい数字でなければ、できます!司祭様のお手伝いをして覚えました!」

こいつは、意外な拾い物かもしれない。
しかし、それだけのことができれば冒険者をする必要などないように思うのだが。

「なぜ、冒険者をしている?それだけのことができれば、商家に入るなり、聖職者の道を目指すなり、いろいろできただろう?」

「はい!自分は大食いなので、腹いっぱい食べられる道を選ぼうと思ったのです!それに、体を動かすのが好きなのです!」

と、元気よく大声で答える。
ぷっ、とサラが隣で吹き出す音が聞こえた。
下を向いているので顔は見えないが、肩と赤毛のポニーテールが微かに震えている。

「なるほどな・・・」

絵が描ける人間、ということで募集をしてみたが、この世界では初等教育を受けた人間を集めることのできるフィルタリングとしても働くようだ。
これは、意外な発見だ。

すると、背後に護衛として立っていたキリクが、珍しく口を挟んできた。

「小団長、自分も発言してよろしいでしょうか」

俺が頷くと、キリクはフランツに声をかけた。

「フランツ、剣牙の兵団に来るつもりはあるか。見習いとしてだが、腹いっぱい飯は食わせてやる」

意外なところからのスカウトだった。

「お、おれが剣牙の兵団に・・・」

剣牙の兵団といえば、この街で今や押しも押されぬナンバーワンの一流クランだ。
そこに見習いとは言えスカウトされるとは、駆け出し冒険者からすると目の眩むようなチャンスだ。
フランツの声の語尾が震えるのも、無理はない。

「どうだ?2度は言わねえぞ?」

キリクに促されて、フランツは態勢を立て直すと、背筋を伸ばして返事をした。

「はい!お世話になります!」

せっかく集めた人間を横から掻っ攫われた形になったわけだが、悪い気はしない。
剣牙の兵団は拡大を続けているし、1人でも有能な人間を必要としている。
フランツのように文字が書けて計数ができる人間は貴重なのだ。
それに、長期的にはフランツが剣牙の兵団の遠征に同行して、怪物の絵を描かせるようになるのかもしれない。
キリクのことだから、ジルボアに、そのあたりを言い含められていたのだろう。

「申し訳ありません、小団長」

と、キリクが一応、筋として俺に謝る。

「いいさ、その方が彼にとってはいいことだろうからな」

とは言え、ジルボアは独自に怪物の情報を集めるようだから、それを他の冒険者にも公開する情報としてもらえるよう、後で交渉する必要がでてきた。
どんな交換条件を出されるのか、今から頭が痛い。

そうしていると、先程から黙っていたエランが、土下座をせんばかりに頭を下げて

「ケンジさん、俺を工房で雇ってください!」

と懇願してきた。
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