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異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!) 作者:ダイスケ

第二十章 冊子を印刷して冒険者を支援します

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第319話 分水嶺

「お話をまとめると、技術が未成熟、技法が定まらず書き手が育っていない、道具開発にかける費用に回収の目処が立たない、ということですね」

と、ミケリーノ助祭は、俺の話をまとめた。
あらためて列挙すると、酷い話だ。

「そうなります」

「だが、惜しい」

と、ミケリーノ助祭は声を漏らした。
手元の羊皮紙には、小さいながら活き活きと描かれた魔狼の姿が印刷されている。

「私はこれまで魔狼というものを直接に見る機会がありませんでした。ケンジさんと農村まで往復した折にも、声を聴くだけで、それは怖ろしい想いをしたものです。もし、このような絵姿を見て、事前に知識を持っていれば、全く違った印象を持てたことでしょう」

以前、ニコロ司祭との取引でミケリーノ助祭を含む3人の助祭達を農村まで教育実習のような形で連れて行ったことがあった。
その際には、ひ弱な文官エリートであった助祭達を鍛えるために、怪物の脅威を煽ってずいぶんと脅したものだ。
あの時のことを、未だに少し気にしているのかもしれない。

「私も、この技術を埋もれさせるのは惜しいと思います。ですから、独占して禁止するよりも、公開して奨励してはどうでしょうか?」

ミケリーノ助祭は、俺の提案に面食らっていたのか少しの間、言葉を失っていたが、椅子に座りなおすと

「詳しく聞かせてください」

と言った。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「教会の印を管理する部門としてできることは、男爵様の絵にお金を払うことです。逆に、それ以外のことはするべきではありません」

と、俺は結論だけを先に言った。

「他にするべきことは?」

「それだけで十分です」

俺の投げかけた結論と背景を解釈しようとミケリーノ助祭はしばらく考えこんでいたようだったが、やがて諦めたように溜息をつくと、先を続けるよう促した。

「理由を言ってください」

俺は頷いて続きを話し始めた。

「この銅版画という技法には将来性があります。いかに欠点があったとしても、印刷された絵を見ればわかります。これはミケリーノ様も賛同いただける点だと思います」

ここで視線を合わせると、ミケリーノ助祭は頷いた。

「教会は、この絵の支援者スポンサーになるべきです。そうして絵の描き手である男爵様を称揚し、印刷された絵の部数に対し、費用を徴収し、男爵様に払うべきです。そのために教会の印の部門の権能を使うべきだと思います」

「なぜ、そんなことをするのですか?」

と、ミケリーノ助祭が聞いてくる。

ここからが、この会合で最重要な部分だ。
言葉を区切り、ハッキリと説明をする。

「利点は2つあります。1つ目の利点として、この絵が社会的評価を受ける上に利益があがる、となれば、これまで教会の宗教画を手がけていた工房や新進の絵かき達が、競ってこの技法を極めるべく参入してくるでしょう。そうすることで書き手の育成と技法の向上が期待できます。
2つ目の利点として、教会が後ろ盾になった上で絵の権利を代行することで、部門として、教会の印を管理して利益を得るのと同じ種類の利益をえることができるようになります。つまり、教会の印を管理する部門の新しい利権です。技術を制限するよりも、遥かに良いではりませんか?」

と投げかけてミケリーノ助祭を見ると、彼は目をつぶり、俺の提案をうけて考え込んでいる。

緊張のあまり乾きかけた上唇をこっそりと舐める。
この世界で著作権が認められるかどうか、その分水嶺にいる、という自覚があった。
明日は18:00と22:00に更新します
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