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異世界に来たけど戦いません。 作者:カッパ永久寺

真・北の荒城編

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26.生命(レーベン)の魔女との戦い 其の壱

 次は35階の部屋だ。
 たしかこの北の荒城は36階までで、『魔王の祭壇』までもう少しだ。なんとしてでもたどり着かないといけない。
「次も気合入れていきますよぉ!」
 木刀をビュンビュンと振るユーカ。俺も気を引き締めて階段を上っていく。
「さぁ、次のお相手は誰ですか!」
 森閑。
 しーん、と。部屋が静寂となっていた。
「あれ、ここだれもいないんですか?」
 とぽかーんと口を開けてあたりを見回す俺たち。敵さんがいないならいないに越したことはないんだけど――
 部屋の中はかなり広いものだった。天井が高い位置にあり、首を上げないと天井をおがめない。どれくらいの高さ何だろうか。
 部屋の床の長さは……。おあつらえ向きに、床は正方形のタイルが敷き詰められており、一辺は5メートルで、入口から奥まで10面縦に並んでいる。つまり部屋の平面の縦の長さは50メートルとなる。
 部屋の端から端までの長さが分かればあとは三角法で高さが求まる。分度器の底辺の中点に紐のついた重りをつけ、部屋の端のこちらから部屋の天井の隅へと分度器を傾ける。部屋の天井の隅からこちらまでの一直線を斜辺とした直角三角形を想定し、いわゆる三角法で高さを求める。
 直角三角形の底辺は50メートル、さきほど分度器で測った斜辺と底辺の間の鋭角の角度は15度で、そこから斜辺をRと定義してRコサイン15度は……
 以下略。
「だいたい高さは13メートルってとこか」
「え? 先輩いつのまに部屋の高さを測っていたんですか! 定規もなしでどうやって測ったんですか!」
「ただ三角法で測っただけなんだが」
 ユーカに説明するのは犬に論語なので、放っておくことにする。
 しかし何故にこの部屋はこうも大きいのだろうか。
 そんな疑問を抱きつつ俺たちが部屋の中央まで進んでいくと――中央に、さきほどは気づかなかったが、何か小さなものを見つけた。
 地面に落ちている……いや、生えている? なんだろうと近づいて眺めてみるとそれは植物の双葉だった。
 ユーカもこっちに来て双葉を眺める。
「こんなところに双葉なんか生えるんですか?」
「植物は生命力が強いからなぁ。コンクリートの隙間だろうが、丈夫な植物は育つもんなんだよ」
 しかし、そうはいっても部屋の中に植物の双葉が生えているのは異様な感じがする。ただ単に、ここが植物が育つのに最適なくらい、手つかずで程よい温度湿度だからなのかもしれないが。
 なんて思っているうちに双葉が成長してにょきにょき伸びてきた。
「ぬわっ!」
「ななななななんですか!」
 一体何が。
 と思っているうちにまたも成長する。ぐんぐんぐん。植物はまるで早送りの映像のように秒単位で成長していき、気づいた時には丈が俺たちよりも高くなっていて、茎が人間の腕ぐらいの太さになって、そこからざわざわと大ぶりの葉が生えていた。
 ジャックと豆の木みたいな。本当にファンタジーの世界だ。
 その普通の観賞植物を十倍ぐらいにしたぐらいの大きさの植物は、ある程度まで成長すると背丈を伸ばすのを、葉を伸ばすのをやめる。
 代わりに、植物のてっぺんより花が咲く。サイズはラフレシアほどの巨大な花。ハイビスカスっぽい紅い花。
 その花をじっくりと鑑賞する間も与えられず、植物はさらなる成長を遂げる。花弁がつつまれていき、一つの丸い塊となる。果実だ。赤い色した、リンゴのような、ザクロのような、サクランボのようなもの。植物についてはあまりよくわからないけど、未知の果実が実っていた。
 大きな紅いその果実はコテンと床に落ちる。
「うわぁ! おいしそーな果物ですよ! ちょうどおなかが空いたから食べましょうよ!」
「いやユーカ、お前はちっともこの果実を不審がってないようだけど。この見るからに怪しい果実を食べようなんてよく思ったな」
「だっておいしそーじゃないですか!」
 とまるで知性のカケラもない返答をする。
 全くユーカは。リンゴっぽいからという理由でハバネロを頬張ったりとかしそうだから怖い。アホは怖い。
 しかしなんなんだろう。この果物。
 双葉だったから双子葉類の果物なんだろうか。
「んじゃー……。ためしに割ってみるかな」
「おお割ってみるんですか! じゃー私が私がぱっかーんと割ってやりますよ!」

 大きな果物を切ります。
「とりゃー!」
 ユーカは木刀でその巨大果実を叩こうとする。否――木刀で叩こうとしたのではなく、木刀による素早い振りで真空の刃を発生させそれで果物をズバっと斬った。とても人間業じゃない。
 ぱかっ。
 すると――果物の中から、元気な元気な、
「どぉも、みなさんおひさしぶりぃ」
 きれいなおねいさんが現れた。
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