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異世界に来たけど戦いません。 作者:カッパ永久寺

北の荒城編

55/102

27.死の舞踏会(メメントモリ) 其の参

「で、先輩。逃げたのはいいんですけどこれからどうするんですか?」
「どうするもなにも、あの骸骨どもを倒すんだよ。そのためにはまず、ブツが必要なんだがな」
「ブツ?」
 後ろで息を荒げているコロにむき、俺は声をかける。
「コロ、この辺りに大きな石とかなかったか? できれば丸くて硬いやつがいいんだが」
「大きい石……。あ、それなら向こうにちょうど丸い石がありますですよ!」

 俺たちがやってきたのは墓地の外れの丘。
 その丘にはどういうわけかいろんな形の巨石が散乱していた。どうやら昔はこのあたりの石を使って向こうの墓地の墓石を作っていたみたいだ。今は墓地自体がだれも来ないところになっているため、ここの巨石も使われなくなっているみたいだが。
「そこに真ん丸い大きな岩があると思いますです」
「ああ、あれだな」
「おお! まるで恐竜のタマゴのようじゃないか!」
 俺たちはその恐竜の卵と形容できるほどの大きさの岩へと近寄った。
「ふむ、これならなんとかなるかもな」
「先輩、この岩を使って何をするんですか」
「さっきも言った通りこの岩で骸骨たちを倒すんだ。しかしこんな大きいのは常人では持てないから、ユーカ、お前これを荒城まで転がして行ってくれないか」
「おう先輩! この岩を転がせばいいんですね」
 ユーカは両手で岩に触れ、腰を入れて岩を力の限り押した。
「おりゃりゃりゃりゃりゃー!」
 ごろん、と岩はゆっくりと転がった。
 ユーカは岩を玉ころがしの要領で転がしていく。俺とコロはそれに付いていく。
 再び荒城へと向かっていく。

「先輩! 荒城の扉の前に着きましたよ!」
「よし、じゃあ扉を壊す勢いでその岩を押せ。というか岩で扉壊せ」
「りょーかい!」
 ごろん――がしゃん、巨大な岩の激突によって入り口の扉は破壊された。
 破壊されたところから見えるのは、荒城のホール。中に入り進んでみると、そこには先ほどの骸骨たちと、目をぱっちりと見開いて驚いている様子の黒づくめ魔女の姿があった。
「な、ななななななななな! なんてことなの! 私のおうちの扉を壊したなぁ!」
 魔女は震える手で巨石を指差していた。
「ユーカ、構わず進むんだ。その岩を転がしていって骸骨たちを蹂躙してやるんだ!」
「じゅうりん?」
「下敷きにして踏み潰すんだ。そうしたら骸骨たちは一網打尽だ」
「おお! とにかく転がして潰してやりますよ! ロードローラーだぁ!」
 ユーカはロードローラのごとく、岩を転がしていく。骸骨たちは逃げる間もなく、そのころがる岩に踏みつぶされ、骨が"粉砕"されていく。
 そう、粉砕だ。粉骨砕身、こなごなにしてやるんだ。
「わわわわ! 私の骸骨たちが粉みじんに! 骨格再起! 骨格再起!」
 だが、骸骨たちは起き上がらなかった。
 俺のもくろみ通りだ。粉々状態では体を構成できないようだ。プラモデルを組み立てるのは容易だろうが、プラスチックの粉から手作りでプラモデルを組み立てるなんてことは困難であるはずだ。
 粉状になった骸骨たちは起き上がらない。
「あぁ……私の骸骨ちゃんが……。そんな……」
 地面に手を付けて失望する黒づくめ魔女。帽子が今にも滑り落ちそうなほど頭を下げている。
「先輩! あと数体でコンプリートですよ!」
「よし、全部まとめてすりつぶしてしまえ」
「おりゃおりゃおりゃ!」
 ユーカはホールの隅に逃げていた骸骨の集団に向かって岩を転がしていく。
 岩はごろごろと着実に進んでいく。そして、
「――止めろ! 私のお人形ちゃんを! 私の仲間を!」
 その尖った声のあと、びりりりりと痺れの音が響いた。
「え――」
 ふと見ると、黒づくめの魔女はすくっと地に立ち、手を天に掲げている。
 その掲げる手の手のひらから、暗い紫色した、ぶどう味の炭酸飲料みたいな色の、球体の固まりが形作られていた。
 その球体には電撃が走っていた。その球体は明らかに攻撃的な態度を示していた。触れたものを破壊せんばかりのエネルギーを誇示している。
「行け、死球【タナトスアース】てやぁー!」
 黒づくめの魔女は叫びとともに、球体を掲げていた手を振ってスナップを利かせ、球体をユーカの転がす岩へと飛ばした。
 紫の球体はすぐさま巨岩へと到達し、それに気づいたユーカは。
「はへ」
 と間の抜けた声を出した。その声のあと、球体と岩がぶつかり、岩が球体のエネルギーによって抉られ粉砕された。
 後に残ったのは、粉みじんになった岩だけ。
 ユーカの姿が見当たらないんだが。
「あいつ……まさかとは思うが……」
 昇天したのか。
「はっはっは! 所詮はただの人間! 十人十色の魔女(デカラフルウィッチ)のプルー・アーロン様には敵わないということだ!」
 これは少々厄介なことになったかもな。ユーカの安否はよくわからんが何とかせねば。
「コロ、ちょっとそこで待っていてくれないか」
「え、兎毬木くん!」
 俺はステージ上で有頂天になっている魔女……プルー・アーロンだっけ、に向かっていく。
「あんたが魔女か」
「ん? まだ人間がいたのか」
「一つ訊きたい。どうしてここには魔女はお前一人なんだ。他の魔女は一体全体どこに行ったんだ?」
「…………」
 突然、プルーの声が止まった。俺の質問を聞いて、ぶるぶると震えている。
「一人で、一人で何が悪い!」
「えっ?」
 俺は何か聞いてはいけないことを聞いてしまったのか。
「こ、このぉ! 私が、私が友達がいないことを侮辱しやがってぇ! い、いつも一人でごはん食べているのをバカにして! サバト会と十人十色の魔女の中で浮いていて話の中に入れずおろおろしているのを笑いやがってぇ!」
「えーと」
「そしてここで骨のお友達と遊んでいることを笑いに来たんだろう! そうだろう!」
「とりゃー!」
 突如空気を読まず粉砕された岩の下から現れたのはユーカだった。
「おうゆーか。やっぱりお前は生きていたか」
「先輩! なんかしゃどーぼーる的な攻撃を受けたみたいですが、あれがいわゆる魔法なんでしょうか」
「魔法ねぇ」
 ふとイージスからもらった『MAGIC RULER』という魔法について書かれた本を思い出した。そこには魔法についてのイロハが書いてあった。
 魔法とは、10ジュリィ(魔力の単位)以上の魔力を持つ『悪魔の契約(テスタメント)』を交わした魔女(ウィッチ)もしくは魔法使い(ウィズ)が使えるものだそうだ。
 そしてその魔法の発現方法はと……
「こらぁああ! 私を無視するな!」
 魔女プルーがおかんむりだった。
「私が友達いないからって、自分の友達を見せびらかすなぁ!」
「いやこいつはただの俺の奴隷で」
「いやー先輩と私はもう友達以上の関係でぇ!」
「あああああああ! 私に! 私に見せつけるなぁ!」
 プルーはなぜか頭を抱えてうつむいていた。なんだかめんどくさいやつだ。
「先輩、あの魔女はどうしてあんなに叫んでいるんでしょーか」
「ああ。どうやらあのプルーってやつ、“ぼっち”みたいだぞ」
「ぼっちって、つまり一人ぼっちなんですか。休み時間教室の隅でうつぶせで寝ている人のことですか」
「まぁ、そう言うことだな」
「おお! ぼっちの魔女ですか!」
「ぐわぁあああああ! 私をとことんコケにしおって! こうなったらお前を殺してそっちの男を一人ぼっちにさせて寂しさを味わせてやる!」
 怒りに火が付いたぼっち魔女、プルーは手を天に掲げて、先ほどの紫の球体を形成した。できたそれを掲げたままユーカに狙いを付けた。
「行け、死球【タナトスアース】てやぁー!」
 球体を放り投げる。それはユーカの元へと飛んでいく。俺はすぐさまユーカから離れ緊急回避、対するユーカは……姿が見えなくなっていた。
「とりゃあああ!」
「なにぃ!」
 ユーカはステージ前まで駆けていた。木刀を正面に構え、階段へと足を運ぶ。
「あんなひねりのない投擲、避けるのは朝飯前だぁ!」
 ユーカは階段を素早く駆け上がる。対するプルーは攻撃が避けられたことに驚き予想外の展開に震えていた。
 そしてユーカは階段の最後の段を上がり、ステージ上へと着いた。そのままプルーに向かって突っ込んでいく。
「てやぁあああああ!」
「かかったな! 骨格再起【ボーンリボーン】!」
 ステージ脇より突如骸骨が起き上がり、ユーカの方へと向かっていった。
「なにぃ! 骸骨だとぉ!」
 骸骨の数は十体。その十体がユーカの手足胴体をとらえ拘束した。
「くそぉ! 離せ! 離せぇ!」
「飛んで火にいる夏の虫め! お前のでっかい岩で潰したのはホールにいた骸骨だけだ。このステージ上の骸骨はまだ粉みじんにはなっていなかったのさ!」
 失念していた。まさか、まだ骸骨がいたとは。
 ユーカは必死になって骸骨の拘束から離れようともがくが、一体の骸骨の頭を飛ばしても、ほかの一体がカバーし、その一体が倒されても、ほかの一体が……という、連携プレイでどれだけ攻撃しようとも意味がない。
「さーて、私を侮辱したあんたには裁きを下さなきゃねぇ」
「うぉおおおおお! 離せぇ! 骸骨しか友達いないくせにえらそーなこと言うなぁ!」
「どうやら反省の色が見受けられないなぁ。それなら――あんたは死刑だ!」
 ユーカに死刑判決が下された。死刑判決が下されたのは人生で2回目だ。
「死刑って何をするつもりだぁ!」
「幻死時計【デッドタイム】! お前は30秒後に死ぬ!」
 プルーはそう言いながらユーカに対して指を差した。
 一体何が起きたんだ、と思った瞬間、ユーカの頭の上にローマ数字で書かれたエメラルド色のネオンサインのような光の文字が浮かんだ。
 その数字は30から29、28……と数が、いや残り時間が秒単位で減っている。
「その数字がゼロになったとき、あんたは生命活動を停止して、死亡してムクロになるんだ!」
「ななななななななんですってぇ!」
 そんなこと言っている間に数字は20を切った。
「ぐ、くくく……苦しいです先輩! 何なんでしょうかこの首を絞めつけられる感じは……はぁ、息が……ぁ……」
「ユーカ……」
 俺は階段を上り、ユーカのいるステージへと駆けて行った。
 しかし、ステージ上には骸骨がいて、進行を妨げられた。
「はっはっは! どうだそこの男! この女を死なせたくなかったら、土下座でもしてみるんだなぁ。もっとも、何をしても魔法は解いてやらないがな!」
「こいつのために土下座なんか、死んでもしないぞ」
「いいのかぁ、そこの女はあと10秒で死ぬぞ?」
 ユーカの頭の上に浮かぶ数字は10を切った。
「先輩! なんだかよくわかりませんけど私しんじゃうんですかぁ!」
「ああ。頭の上にある数字がお前の秒単位の寿命だ」
「いやぁあああわたししにたくなぁあああああああい! どうせ死ぬなら先輩の腕の中で死にたいですよ! こんなガイコツに囲まれて死ぬなんて縁起がわるすぎますよー!」
 ユーカはかつてないほどのわめき声で、泣き声で叫んでいた。そりゃあ、死の危機が迫ったらだれでもこうなるだろう。
「ユーカ、お前のために土下座はしないが、お前は俺の大切な戦力だ。だから生かしてやる」
「せ、先輩! ってもう3秒!」
「おいぼっち野郎」俺はつぶやいた。
「な、何だ貴様! この期に及んで私を侮辱するのか!」プルーは俺を指さした。
「いや俺がつぶやいたんじゃなくてだな、ユーカがイタチの最後っ屁ということで悪あがきでつぶやいたようだが」
「なにぃ! お前がつぶやいただと!」
 プルーはユーカに対して指を差す。わめくプルーの動作に合わせるようにして俺は携帯端末を取出し、『再生』シンボルをタップした。

《「幻死時計【デッドタイム】! お前は30秒後に死ぬ!」》

ユーカの頭に浮かぶ数字は1を描いている。
「ぎゃー私何も言ってないですよ、ってわたしもうすぐで死んじゃういやーもっとおいしいものたべたかったのにもっとおんなのこっぽくオシャレとかしてみたかったのにしにたくなぁああああああい! ……って、あれ?」
 ユーカの頭上の数字が一瞬消え、すぐさま同じ光の数字が浮かび上がる。今度は最初と同じように『30』のローマ数字が空中に描かれる。
「な、なにい! なんで! あの女の頭上に浮かぶ数字はあと1秒でゼロになるはずだったのに! どういうことなんだ!」
「魔法の上書きだ」
「上書きだと!」
「『WIZARD RULER』という魔法の本には、魔法は対象を手、杖または陣で指し示し、口頭で呪文(コード)を唱えることで発現するみたいだな。この携帯の『録音再生アプリ』を使ってあんたの声を録音して、あんたの魔法を再現してやったんだ」
 俺はこの前充電で蘇ったスマホを見せびらかした。『録音再生アプリ』という、声を録音し再生するアプリの画面が開かれている。
「な、なんなんだその妙な板は! それで私の声を発して……あたかも私が魔法を唱えたように仕向けたのか!」
「あんたの唱えた幻死時計の魔法を、もう一度ユーカにかける。魔法をかけるには術者が対象を指し示す必要があるから、あんたを挑発してユーカに対して指を差させるように仕向け、そしてあんたが口を動かすのと同時に録音した音を再生させ、あたかもあんたが魔法を唱えたように見せかけたんだ。そして魔法が発動し、幻死時計の魔法により、『1秒後に死ぬ』状態のユーカに対して『30秒後に死ぬ』魔法を上書きさせたんだ。これでユーカはもう30秒間生きられるというわけだ」
「お前、いつのまに私の声をその板に取り込んだんだ!」
「あんたの気づかないうちに録音したのさ。とにかくユーカはまだ死んでいない」
「わ、私まだ生きてるんですか!」ユーカがこちらに向かって叫んだ。
「ああ。もう23秒で死ぬみたいだが」
「ええ! なんでこう私は死のフチにいるの!」
 ユーカにはまだ死の危険がある。まだ油断はできない。
「こ、この野郎! 原理が分かればどうってことない! それならそこの女が死ぬまで私が口を動かさず、手で指し示さず、じっとしていればいいだけの話だろう!」
「あ……そうだった」
 そうだ。問題はそこだった。魔法の上書きはあくまで魔法が使えるプルーにしかできない。そのプルーの声をスマホでただ再生しても、プルーが対象物ユーカを指し示していなくて、口を動かしていないのなら魔法発現の条件は満たされず、魔法は発現されない。
「はっはっは! これでそこのやかましい女はムクロになるぞ! 満足満足大満足だ!」
「そうだな、あいつがやかましいってとこには同感だな」
「せ、せんぱいも死にゆく私に非情なこと言わないでくださいよ!」
 ユーカの頭上の数字は20を切った。
「まぁしかし、ユーカ、男が一度言ったことは曲げるべきじゃないから……。お前は助けてやるぞ」
「先輩!」
「だから希望は捨てるな。お前はいつものように前を向いていろ」
 俺はしゃがみ、正面の骸骨の足元へと手を伸ばした。
「そこだっ!」
 俺は骸骨の足の付け根、体を支える“アキレス腱”を手に取って外した。
 すると案の定骸骨はガラガラと崩れ落ちた。
 アキレス腱は体を支える最も強い最大の腱だ。そこが切れると人は支えなしでは立てなくなる。
 同じ要領で骸骨たちのアキレス腱をとっていく。骸骨たちは積み木を崩すようになだれ的に崩れていった。
 これでユーカをとらえていた骸骨はなくなった。
「おっしゃ! これで拘束は解けたぁ!」
「な、なにをぉ! こっかくさい……」
 ユーカはすでにプルーの目と鼻の先にいた。
「めぇーん!」
 大きく振りかぶって、プルーの頭蓋に向かって木刀を振り降ろした。プルーの三角帽は瞬時にひしゃげ、布越しに硬い音が響く。
「はぇえー!」
 魔女にも物理は効くようだ。無防備であったプルーは面うちを脳天直撃され、脳震盪を起こしたのかそのまま天を仰ぐように背中から倒れていく。
 その倒れるプルーに電光石火の速さで近付き、下敷きのようにプルーの背に潜り込むユーカ。
 ユーカは足と手でプルーの両の手を拘束した。その間にある胴も固定され、プルーは足しか動かせなくなる。もっとも、足が動いても、カマキリの捕縛からはそうやすやすとは逃げられない。
「な、何をする! 離せぇ!」
 じたばたともがくプルー。足を地面に叩きつけるも、空しい音が響くだけ。
「おじさん直伝の技! 地獄絞めぇ!」
 ユーカの二本の足がプルーの右手を絞めつけ。
 ユーカの右手がプルーの左手を絞めつける。
 そうしてプルーの両手が水平になり、ちょうど体が十字架を描くようになる。処刑されるキリストのように。
「がぁああああああああ! 腕がしぼられるぅううううう! や、やめろ! この万力女!」
「私のマホウを解いてください! そーでないとさらなるパワーを加えますよ!」
「ま、魔法はとか……ぎやぁああああ!」
 ユーカの頭の数字は10を切る。
「ユーカ、時間がない。こうなったら奥の手だ。プルーの腕をプルーの顔へと向けるようにするんだ!」
「あいあいさー!」
 ユーカは合点し、プルーの右手を無理やりまげて、顔の方へと向ける。
「がぐがぐがぐ!」プルーはちょうど良い具合に口をパクパクさせている。
 俺は苦しむプルーに向かってスマホの画面を見せつける。画面には録音再生アプリが表示されている。
「再生ボタンを押せば、お前が口をパクパクさせているから魔法は発動される。そして魔法をかける対象は、手が自分の方に向いているから、自分自身にかかることになる。つまり、自分に死の魔法がかかるということだ」
「そ、そんなぁ……」
「自らの魔法でお前が死ぬんだ。そうなるのは嫌だろう」
「こ、この! “死”の魔女たる私を愚弄するのか!」
「じゃあ再生するぞ」
 俺は迷うことなく再生ボタンへと指を運ぶ。
「ま、待て! やめろ! やめるんだ!」
「俺たちに散々なことをしておいて、今さら命令するな」
「や、やめてください! どうか、どうか!」
「どうせお前はぼっちなんだろう。ぼっちなら誰も悲しまない。誰も苦しむことはない。それなら何の問題もない。その辺の虫をつぶすようなものだ」
「わ、わたしだって! い、生きたいんだぁ! 好きで一人ぼっちになっているんじゃないんだぁ!」
 プルーは涙を浮かべている。登場したときは、勝気な感じだったが、その化けの皮がぼろぼろと剥がれ落ちていき、ひ弱な顔を浮かべている。
「いきたい……か。それならお望みどおり地獄へ逝かせてやるぞ」
 俺はボタンをタップした。
「やめろぉおおおおお! 魔法は取り消しだぁ! 解除【ゴーストップ】! これで魔法は取り消した! だからぁ!」
 スマホのスピーカから音は……流れなかった。
 ボリュームをミュートにしていたので、ボタンをタップしても流れないようになっていた。
「なにはともあれ、これでユーカは死に損なった……いや、生き延びたか」
 ユーカの頭にはもうローマ数字は浮かんでいない。ただアホ毛が生えているだけだ。
「やった先輩! 私なんとか死にませんでしたよ!」
「そうだな。お前はそうやすやすと死ぬような奴じゃないと信じていたからな」
「先輩助けてくれてありがとうございます!」
「おう。あとで救命費用を払っておけよ」
「え、またお金が絡むんですか……」
 俺はロハでユーカ助けはしない主義なんでな。
「あ、あのー。私、魔法解いたんで……そろそろこの拘束を解いていただけませんか」
 プルーがひきつった顔でつぶやいた。しかし俺たちはこいつを許さない。
「ユーカ、こいつをしばらく動けないくらい絞めつけてやれ」
「おっしゃぁ! 地獄絞め再開です! てやぁああああ!」
「あががががががががががががががががががががががが!」
 プルーは泡を吹いて停止した。
+注意+
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