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異世界に来たけど戦いません。 作者:カッパ永久寺

北の荒城編

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8.夜更け前

「ゼン、そのとき、ブレイブマンなウルスラはザ・デビルをホワイトホォオオオオオオルで逆に吸収した! ザ・デビルのブラックホォオオオオオルとたいこうするようにして! カッ! ドドドドドド! BACOOOON! ピカァアアアアン! ドンッ! ブ、ブレイブマァアアアアンなウルスラー!」
 隣の部屋の人から苦情が出そうなほどの爆音で音読するユーカ。ユーカは漫画を声に出して読んでいた。英語を勘で訳しているからか、日本語が不安定である。
「すごいですねこの王道ストーリー。まさに王道を行く王道ファンタジーですよ!」
「そうだな。王道展開ってのは神話や昔話に通ずるものだからなぁ」
 英雄譚しかり。聖人の伝説しかり。
 ユーカの読んでいる漫画は『ウルスラ・オブ・ブレイブマン』。勇者ウルスラの冒険譚を描いた漫画だ。さきほどユーカが読んでいたシーンはその漫画のラストシーン、魔王との対決とのシーンだ。魔王は己の無限の力を発揮して、ブラックホールを生成し、勇者ウルスラを亜空間に閉じ込めようとするが、勇者ウルスラ はそのとき、己の力を覚醒させ、ブラックホールと対なす、『ホワイトホール』を展開した。そう、実はウルスラの方にも魔王と同じく無限の力が隠されていたのだ。勇者は最後の力を振り絞り、ホワイトホールで魔王を吸収しようとするが、対する魔王もブラックホールで応戦する。そして、ブラックホール、ホワイトホール、二つの力は相殺(そうさい)され、一つの光となる。その光が消えた後、魔王と勇者ウルスラは消滅したという。まぁあらすじは今日の劇とほぼ同じだ。
 この漫画、および物語にかかれている事実は一体本当のことなのか。100年前に魔王や勇者がいたという話は……真偽はよくわからないが。しかし、その物語の片鱗のごとく、この世界にはちゃっかり魔物というものが存在する。そう考えると、魔王も勇者もこの世界にはいるのかもしれない。あと魔女とか、魔法とかも……あるのかもしれない。
 俺たちがこの世界に来た原因は、魔王の“ブラックホール”のせいなのか?
 しかしなんで俺たちが……。偶然なのか。しかも、その魔王との戦いというのは100年も昔のことだ。今はその100年後。魔王か勇者のホールを通ってやってきたのなら100年前のこの世界にいるはずだが。どうして100年後のこの世界に……。
「先輩! この漫画なかなか面白いですよ! 内容は英語でよくわかりませんけど、絵は昔の少年マンガっぽくて好きですよー!」
 俺はそれを聞いて、読んでいた小説を置いて漫画の方を見る。
 漫画風のタッチの絵は大昔から存在する。戯画や日本の浮世絵などが例に挙げられる。でも、今のようなスタイルの漫画というのは、近代に入ってからのものだ。
 ユーカの読む漫画を見て見ると、いかにもな少年マンガ風の漫画で、コマ割が自由奔放で、擬音や吹き出しがある。このような自由なコマ割の漫画のさきがけは手塚治虫先生の作品であるが、どうしてこの世界に置いてこのような形態の漫画本が存在しているのか……。セーラー服しかり、この世界には突っ込むべき点が多々ある。
 まぁそのことはまた今度考えることにしよう。そろそろ夕食の時間だ。
「ユーカ、飯を食いに行くぞ」
「がってんしょうち!」
 俺たちは部屋を出る。

***

 夕食を食べ終えた俺たちは、部屋へと戻る。ユーカは漫画本を再度読み始め、俺は小説を読む。
 しかしあたりは暗くなっており、ロウソクを明かりにして読むことになる。この世界にはもちろん電球や蛍光灯やLEDは存在しないので。
「くらくてよめないよー!」
 ろうそくの明かりは心もとない。今はまだ夜は更けておらず、真っ暗と言うわけではないが、灯りがなければ物は見えない。
 文明の利器のありがたさが身に染みて分かった。エジソンが電球を発明するまで、人類はこんな暗い夜を過ごしていたんだろう。
「ああ! なんて暗いんだ! せめて懐中電灯くらい欲しいですよ!」
「そうだな。懐中電灯ぐらいなら、この世界の素材を使って作れるかな」
 また明日作ってみようか。暗い夜を過ごすのは目に悪いものだから。
「先輩! 私はもう寝ますから! おやすみなさいです!」
「おう」
「先輩もそんな暗いところで本なんか読んでたら目が悪くなっちゃいますよ!」
「ああ。ほどほどにしておくさ」
 実のところ、暗いところで本を読んで視力が悪くなる――ということはない。長時間、近くでものを見続けると視力が悪くなるだけで、暗さは関係ない。
 まぁしかし、ロウソクも長さが限られているものだし、本を読むのはとりあえずロウソクが尽きるまでにしておこう。
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