挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
異世界に来たけど戦いません。 作者:カッパ永久寺

北の荒城編

32/102

4.街の人形劇 上

 酒場にて人身売買を行う男たちを懲らしめ、その男たちを自警団へと突き出した後。
 俺たちは再び街の広場に向かっていた。
「先輩! またお買い物ですか!」
「そうだな。まだいろいろと物を買っとかないといけないしな」
 街の中央の石畳が円形に広がる広場。広場には先ほどと変わらず店が並んでいる。
 広場を歩いていると、小さな子供たちがぽつぽつと、広場の中央へと向かっているのが見えた。子供たちは「もうすぐ劇が始まるぞ!」とたがいに叫び合って走っている。
 ふと、街の中央へと目を向けた。中央には子供たちの人だかりができていた。
「ん? 先輩、劇に興味がおありなんですか?」
「ああ。この世界の劇なら、なにか貴重な情報とか手に入るかもしれんからな」
「じゃー劇を見に行きましょうか! レッツゴー!」
 子供たちの流れに付いていくようにして、俺たちは広場の中央へと向かった。

 広場の中央の子供たちのたかりの中心に、小さなステージがあった。
 それはおそらく人間用のステージではない。それよりも小さなもののためのステージだろう。黒い幕で覆われた箱型のステージのバックには、『ブレイブマン・テイル』と一枚の紙の上にかかれていた。
「えと、ぶらべたれ? なんだかおかしな名前の劇ですね……」
「ブレイブマンテイル、勇者の物語だ」
「ほー勇者の物語ですか! なんかいかにもファンタジーって感じですね」
「ああ。どうやらこの世界には勇者という存在と、魔王と言う存在がいたようだ」
「勇者と魔王ですか!」
 魔王……そういえば、カールの街を出る前の日にあの黒づくめのやつが“魔王の復活”がどうとか言っていた。
 その魔王と、それを倒したであろう勇者について知るためにも、俺はこの勇者ゆかりの地、ウルスラグナの街に来たのである。
 子供たちは「にんぎょうげきがはじまるぞぉ!」と叫んでいる。どうやらここで行われる劇は“人形劇”のようだ。
「まぁユーカ、子供たちの話によると、ここで人形劇が行われるみたいだ」
「人形劇ですか! 人形劇なんて生で見るの初めてですよ!」
 かくいう俺もテレビ以外で見るのは初めてである。一体どんな劇が展開されるのか、童心に戻った気分で(まだ年齢的にはギリギリ子供だろうが)期待に胸を膨らませる。
 おもむろにオルガンの音が鳴った。どことなく懐かしい雰囲気の音楽に乗って、一体の人形が小さなステージを歩いてきた。もちろん、人形が自ら歩いてきたのではなく、遠くからでは視認できないくらい細い糸で、黒い頭巾をかぶった黒子に操られてきたのである。
 その一体の人形は黄色い髪……というか毛糸が生えていた。漫画のように極端なきりっとした顔立ちをしている。服は白い簡素な布服を纏ったものの上に、マントを付けたものを取り付けている。材質はフェルトっぽい。そして背には剣を携えており、おそらくそれが『勇者【ブレイブマン】』の人形なのだろう。
 勇者の人形がお辞儀をすると、ステージに黒幕が下がり、ステージ内が隠される。子供たちが固唾を飲んで次の展開を待つ。
すると、のどかな音楽とともに、黒幕がゆっくりと上がっていった。ステージの背景には“森の中の小屋の中”の絵が描かれていた。その絵の手前には小屋の中の家具(もちろん人形に合ったサイズのもの)が並ぶ。そして中央のベッドの上には、黄色い毛糸を生やす人形が眠っていた。
「むかーし、むかーし、王都より西の辺境の村に一人の男の子が住んでいました」
 優しい口調の語り部の声がした。ベッドの上の“一人の男の子”は眠ったままだった。
「ぐぎゃー!」
 突然、獣のような声が聞こえたかと思うと、ステージの両サイドから、オオカミの顔をしたモンスターの人形が現れる。たしかあの容姿の魔物は『ワーウルフ』という名の魔物だ。
 ワーウルフの人形の襲来により慌てて起きだす男の子。男の子にかぶりつこうとするワーウルフ。そこに、お父さんお母さんらしき人形が現れて、男の子の盾となる。「おとうさん!」「ウルスラ! お前は逃げるんだ!」「でも!」「いいから早く!」結局逃げ出す男の子。
 そこから場面が変わって、背景も変わって、荒廃した村の情景が現れる。
「ワーウルフの襲来により、男の子の村と、村に住む人たち、そして家族を失って、男の子は一人ぼっちになってしまいました」
 突然のシリアスな展開に子供たちは静かになった。
「一人になった男の子は途方に暮れて、森を歩いていきました。食べるものもなく、着る服もぼろぼろに、体もぼろぼろになって、地面に倒れ込んでしまいました」
 男の子の人形がステージの床に水平に倒れる。悲しい音楽がバックグランドで流れる。
「そこに一人の老いた剣士、リュー・ブレイドが現れました」
 白髭のしわの付いた顔の男の人形がステージ端から現れた。それはゆっくりと進行し、男の子の前に着くとかがみこんで男の子を介抱する。
 そこで場面が変わる。
「リューは男の子を小屋で寝かせました。男の子はリューにお礼を言い、そして自分の村のことについて話しました」
「リューは、そのワーウルフは“魔王オルフィリウス”が送って来たもので、このトータルグランド(注:今俺たちがいる大陸)全域が、魔王オルフィリウスの手によって支配され、人々が苦しんでいることを教えました」
「そう。100年も昔の世界は、魔王オルフィリウスによって征服されていたのです」
 だだだーん、とオルガンが恐怖のメロディーを奏でた。その百年の昔の世界を再現するように、おぞましい背景を前に、様々な魔物の人形が人々を虐げるシーンが展開された。子供たちの大半が、その情景に感嘆して声を上げていた。
「ぎやああああ! 魔王によって世界が制服されちゃいますよ!」
「お前は子供か」隣のユーカも子供と一緒になって叫んでいる。
「男の子はそんな世界を憂えて、村と家族の仇を討つため、魔王オルフィリウスを倒すことを決意しました」
「リュー・ブレイドに剣の手ほどきを受けてもらい、男の子は剣の腕を高めていきました。小さな男の子は日に日に強くなっていき、その剣の腕は師匠のリュー・ブレイドを越えるほどになりました」
「男の子は自分の幼い名前を捨て、“ウルスラ”という名を名乗りました。そして、師匠のリュー・ブレイドのもとを離れて、勇者となって、魔王オルフィリウスを倒す旅へと向かいました」
 『ウルスラ』と言う名の黄色の髪、いや、金髪なのか? の勇者は草木の生い茂る森を、荒廃した砂漠を、湖畔の草原を、険しい山々を、火を噴く火山道を、歩いていく。手書きの背景がスライドしていく。
「途中で、魔女と出会い、仲間となり、強大な敵と戦い、困難に立ち向かい、苦難し、時に仲間と笑いあい、あ、あとこのウルスラグナの街に立ち寄り、ちょっとしたエピソードがあって……」
 ここからの話はなんかグダグダとしているので中略ということで。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ