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警告7.飲み物ではありません。
密偵者〜スパイゾーン〜
作:界牢 天



     第三章:実技試験・前編


「さて、今日は一時間目から六時間目まで抜き打ち実技試験があるから、死ぬ気でやりやがれ」
 村川の担任にして元不良教師の砂座来駕さざらいがは言った。
 ちなみに、本日は村川正一が転入してきた初日である。
「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」
 クラス全員が、信じられないような声を上げた。
 いろいろ酷い。大体、転入初日にテストなんて、この学校の授業を受けたことの無い村川にとって、予想もしていなかったことだった。
「ちょ…待てよ先公! 転入生が実技なんて無理だろ! 『天使の歌声エンジェルボイス』とか『十字剣クロスソード』はともかく、『白き翼ウィング』も使えねーだろ! ぶっちゃけ酷くない? 超絶酷くない?」
 そう言ったのは、紅城と同じくらいの年齢に見える、漆黒の髪をもった背が高くごつい青年だった。
「だまりやがれ栗金くりがね。俺様はやると言ったら絶対にやりやがるぞ」
 だんだん、この後どのような会話が来るかは、だいたい分かってきた。
「いや俺黒金くろがねだし。つーかいい加減生徒の名前覚えろ。超ひでーよ」
 やはり、この教師は毎回生徒の名前を間違えてしまうらしい。
「じゃ、一時解散。とっとと準備しろ」


「やっほー。まっさかアンタ転校生だったとはねー」
 今朝の激突少女が、村川に話しかけてきた。。
「おう。とりあえず名前教えろ。そろそろ『激突少女』って表記すんのも飽きてきた」
「? 何の事かわかんないケド……あ、あたし白羽瑠璃しらはるりって言うの。よろしくね」
 激突少女もとい白羽が言う。
「ん。しかしまぁ、このクラス年齢ばらばらだな」
 初めてクラスに入った時から思ってはいたが、やはり疑問だった。
「あー、そりゃあれだ。うちのガッコ学年で分けてないから。なんか上の方は色々と考えがあるらしいぜよ」
 後ろから、紅城が言う。話によると、どうやら年齢に関係なく、生徒の能力の良し悪しで分けられるらしい。
「で、実技って何やんの?」
 村川の問いに、白羽と紅城が同時に言う。

「「何って、そりゃあ、戦闘でしょ」」

「……まじっすか」
 ちなみに事前に調査した結果、黒金が言っていた技のうち、『十字剣クロスソード』と『白き翼ウィング』についてのことは大体分かっていた。
 元々、『超能力』と『魔術』の区別の仕方は、『媒介が必要か否か』である。超能力は何も無くても使えるが、魔術は媒介が必要となる。だからと言っても、超能力が圧倒的に有利なわけじゃない。超能力は『人が科学で作れる物』しか作れないのに対して、魔術は『非科学的な物』も作れる。
 例として、魔術に分類される『白き翼ウィング』は、『光輝く翼』と言う全くもって非科学的な物を作れるが、イメージする物に近い形をしている物が無いと発動しない。それに対して、超能力に分類される物は、媒介が無くても即使えるが、非科学的な物は作れない。たとえば『炎』は作れても『炎の剣』を作ることはできない。木刀かなんかがあれば話は別だが、その前に耐火手袋が無いと熱くて持てないし、木刀が燃え尽きたら話にならない。ちなみに『十字剣クロスソード』は十字架が必要である。
「しっかし、実技の担当って『大天使』クラスの先生でありこの学校最強の教師、銀羽烈ぎんばねれつ先生だろ? 絶対に勝てないってもんだぜよ」
 紅城が言った。
 その台詞を聞いて、村川はもはや絶望していた。
 どんな学校かはよく分からないが、少なくとも簡単に済むことではないだろう。
 そんなこんなで、授業開始10分前のチャイムが鳴り響く。


「これより実技試験を始める。無理せずにリタイアするように」
 うわさの最強教師、銀羽が言った。歳は30〜35ほどに見える。長い銀髪を、時々手で掻き揚げている。
「……リタイアする事前提って、やっぱ手加減なしっすか」
 村川が、ぼそりと言う。どんまい、という感じで黒金が肩を叩く。
 試験の場になるのは、体育館だ。体育館と言っても、中央から半径200mほどが半球の透明なドームに包まれており、ギャラリーでは授業をサボっている生徒が見物に来ている。授業をサボる天使予備軍、と言うのもアレだが。
「では、出席番号1番、さっさと来い。そしてリタイアするなら早めにしろ」
「……へーい」
 返事をしたのは紅城だった。50音順なので、紅城あかじろは最初の方だとは思ってはいたが、少しかわいそうだ。そして、両者はドームの中へと入った。

「ハジメテクダサイ」
 無機質な電子ボイスが流れた時、紅城が叫びながら首に下げていた小さな十字架を構える。
「『神よ、我が偉大なる戦の神よ! いまこそ我が十字架に敵を貫く力を』ッ!」
 呪文詠唱と共に、紅城の十字架が巨大化、大きな剣へと姿を変える。直後、目の前の敵に向かって走る。
「…『我が白き翼は天へ飛び立つべく羽ばたかん』」
 銀羽は、真っ白に輝く一枚の羽を掲げ、呪文を呟く。銀羽の背後に、純白の翼が形作られる。

「…ん? お前のより光が強くないか?」
 ドームの外から見物していた村川が白羽に言う。
「え? ああ、あれね。アレはほら、媒介が『天馬の羽ペガサスのはね』だから。ちなみに私がこの前使ってたのはただの白い鳩の羽」
 どうやら媒介の質によっても威力が変わるらしい。
「ふーん…」
 
「おるぁぁぁぁぁぁぁッ!」
 雄叫びを上げながら『十字剣クロスソード』で斬りつける紅城の背後に、銀羽は即座に回り込み、呪文を詠唱する。
「『我が氷結の柱は全てを停止させん』」
 銀羽の呪文を聞くなり、紅城の顔が一瞬で引きつる。
「いぎっ……! 『我が火炎の槍は全てを貫かん』ッ!!」
 銀羽の方へ振り返り、詠唱する。直後、銀羽の前方に空気中の水分が集中し、その後凍りつき、紅城の元に冷気が襲い掛かる。その冷気を、紅城の手から飛び出した火の槍が迎撃する。
「ぜぇっ……ぜぇ…」
「ふん。なかなかだな。70点だ。『大いなる神の拳よ、前方の敵を打ち砕け』」
「うぇ……っ!!」
 直後、見えざる真空の弾丸が、紅城の腹部をぶん殴り、ドームに叩きつける。
「そこのサボり組、こいつを保健室に。次、2番」

 
 どうやら紅城は頑張った方らしい。2〜6番は、最初の一手を防げず、即座に吹き飛ばされていた。
「次、7番」
「おう」
 黒金が何か楽しそうな顔をしながら立ち上がる。
「俺は23秒もったぜよ。さぁ、この超記録をこっせるっかな?」
 いつの間にか保健室での治療を終えた紅城が、満足げな表情で言った。
「はっ、俺はんな超記録を超える超『絶』記録を立ててやるよ」
「………その前に勝つ努力をしようよ」
 紅城と黒金の会話に、白羽が言う。

「ハジメテクダサイ」
 電子ボイスと共に、黒金は小さな盾を構える。
「『我が聖なる盾は、全てを無効化せん』っ!!」
 直後、黒金の体を中心に、球状の、ガラスのような質感の、透明な壁が出現した。
「ふむ、『絶対防御フルシールド』か。さて、そんな未熟な経験と貧弱な媒介で何処まで持つかな? …『神よ、我が偉大なる戦の神よ! いまこそ我が十字架に敵を貫く力を』」
 銀羽が『十字剣クロスソード』を作り、透明な壁を斬りつける。凄まじい爆音が、辺りに響き渡る。
「『天を貫くわれらの十字架よ、今こそ眼前の敵に裁きを』」
 そう言うと、銀羽は十字剣を上に投げ捨て、後方に3歩下がる。
「じゃ……『裁きの十字架ジャッジメント・クロス』!? クソッ!」
 呪文を聞いた直後、黒金は両手を上に挙げ、上方に壁を集中させる。
 刹那、宙に放たれた十字架が光り、そこから、

 光の柱が、黒金の壁に激突する。

「くぉぉぉぉぉぉ………ッ!」
 黒金は苦悶の表情を浮かべ、必死で耐える。ドガガガガガ、と言う音は、ドームを振動させるほどだ。

「おいおい……お前のときと力が違う気がするのは気のせいか?」
 村川が紅城に聞く。
「ああ、アレは一応人によって『死なない程度に』手加減してるらしいぜよ。あいつは『盾』の魔術に長けているからあのくらい平気だろ、ってな感じ?」
 と言いながら、紅城は忌々しげに舌打ちする。
「全く、『究極炎弾ボルケーノ』使う前に『神の鉄槌ゴットハンマー』使われたら話しになんないってもんだぜよ」

 光の柱を受けてから10秒もしないうちに、『絶対防御フルシールド』は消滅した。その直後に、光の柱も消えた。
「ぐはぁぁ……ごめ、リタイア」
 黒金は、床に突っ伏したままそう言った。
「うむ。80点だ。次、8番」
 そうして試験は続く。


続きます。











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