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三十丁目 忍界大戦
やってしまった。とはこのことだろう。長引くかと思われたシスターと巫女さんの闘いは、ほんの数十分で鎮火に向かうかと見える。

なぜだろうか

理由は簡単、親父が帰ってきたからだ

ここで大いに疑問を抱く人もいると思うが、思い出して欲しい、親父の変態的特性を…






「オンアビラウンケンキリソワカ!!!」

五亡星の方陣の中で後光とともに親父…もとい阿倍晴明の経が目には見えないエネルギーとなってシスターと早良さんに襲いかかる

『キャァァァ!』

「な、なんてエネルギー!」

二人は衝撃をモロに喰らい、壁に激しく叩きつけられた。先程から同じようなことを繰り返し、その度に衣冠(本には貴族の正式な衣裳と載っていた)をはためかせ、華麗に陣を組み直す晴明。


「サンお兄ちゃん…家が…」

「ああ…」

三丁目が持ちたるは『あさき◯めみし』

「はっはっはっ、しかしマイブラザー、それは源氏物語だろう?」

「…なんか親父の想像力は日々増強してるみたいだな……」

正式なことはわからないが、ほの暗い空間に五つの松明をくべ、リビングルームは陰明道実演所と化している。あ、また吹っ飛んだ。しかしさっきと同じ経だ。やはり『あさきゆめ◯し』だけでは資料に欠けるのかもしれない


「これで映画見せたらどうなるんだろうな」

「家…壊れちゃうね…」

奇跡的な業者さんの補修能力で、しっかりと塞いだはずの穴が元の木網もいいとこだ。非常に見晴らしがよく、紫雲寺庭で楽しそうに花に水やりをするトーリュがよく見える

「はっはっはっ、父さんはやっぱり面白い!」

一本取られた、という様子でペチンと額を叩く兄貴、遠目で見ているからいいものの、シスターと早良さんはそれどころではない

「早良さんは右から、わたくしは神に祈りを!」

『了解!あんた外したら承知しないからね!』

いつのまにかターゲットが親父になっている。けしかけたのは俺だが、勝ってどうする、とツッコミたい

「オンバサラキリソワカ!」

一辺倒の攻撃に慣れてきたらしい、早良さんとシスターのチームワークは親父を圧倒し始めた、そりゃそうだ、ファミコンのボスだって2、3度負ければ誰だって倒せる。それくらい単調な衝撃波だった。さしずめ第2ステージくらいのボスだ


「なぁぁにぃぃ?」

攻撃が当たらなくなったことに腹を立てたのか、急にタンカをきりはじめる親父、そりゃ歌舞伎だ。だんだん効力が薄れてきている


「神の名の下に……消えなさい!」

シスターは両の腕で大きく十字をきり…

「あ、あれはグランドク◯ス……」

兄貴が両手をわなわなさせながら呟く、なんとなくムカついたので足をふんずけた

「痛いじゃないかマイブラザー」

「うるせえ、それよかどうしよう、コレ」

酷い惨状だ。平和な一家の夕食は、スターリングラード戦線へと、有り得ない様変わりを遂げている。親父に罪はない、あると言えば、親父に変態性を与えたシスターが敬愛している神様だ

「蘭さん呼ぼうか…?」

雨が放心状態で呟く

「いや、山ン中で一番長く寝てただけあって風邪が長引いてるんだと」

「アニマさんは?」

「従業員の群れにやられてモップの破片が体内に絡まったらしい、蘭さんが直せないからダメだ」

「う〜ん…シャウルくんと炎泪氏はどうだい?」

「シャウルは迷子、炎泪さんが今探してる、ついでに言えばトーリュはアニマと同じ理由で今全長40センチだ」

ため息をつく俺と雨、兄貴は現状を楽しんでるとしか思えない、今度はさっきより強くふんずけた

「痛いじゃないかマイブラザー」

「ああもうどーしよーッ!母さんに殺される!」

兄貴を軽く無視して頭を抱えた。親父は圧倒されているものの、まだまだ元気そうだ、誰か…誰か助けてくれ!

頼るのは良くない、ああそれはわかってるさ!ある意味原因は『あ◯きゆめみし』を持ち出した俺にあるのだから…だがこれを止められるやつが他にいるか?いいやいない!肝心なときに千軒町変態同盟は使えない!よしんば使えたとしてもただのゲームオタクだけだ!



そのときだった…

「これでとどめです!」

『ヤァァァァッ!!!』

二人が親父を挟み混み、ようやっと決着がつこうとした…しかし!

「な!」

『きゃあ!』

二人の腕をつかみ、力を受け流すカカシせんせ……いや!あれは…!


ジジ…ジジジジ……

電気を放電させ、不敵に微笑む男が一人!

「よう…」

髪は逆立ち、鋭い眼光を光らせ、ここに一人の…

「ケガはねーかよ?ビビりくん?」

「黙っとけ」

なぜか一宮金次郎がいた


「おまえなんだそりゃ!なんかバチバチいってんぞ!!!」

体から放電が止まらない、少し欝陶しい

「ああ……生まれ変わった気分だ…チャクラの動きがよく見える…」


酔ってるのか?

怪訝な顔で恍惚とする一宮を冷ややかに見る

「マイピューピル!今だ、千◯を!◯鳥を使え!」

二回言うなクソ兄貴、伏せ字の意味がないんだよ!

「くっ、呪印が…」

ガクッと膝を落とし肩をおさえる、お前は何をしにきたんだ。っていうか…

「お前が止めなきゃ終わってたんだよ!」

状況を悪くするという点ではクールな二枚目忍者よりも意外性ナンバー1忍者の方である

「…ッ、つながりがあるから苦しいんだ!お前は一体なんなんだッ!!」

野郎…あくまでもそのネタで通す気か……いいだろう乗ってやる!

息を大きく吸い込む三丁目


「友達だッ!だから俺は…全力でお前を止めるんだってばよ!!!」


「サンお兄ちゃん…」

雨が…ふぐっ…そんな冷たい目で……

「はっはっはっ、マイブラザー!僕に似てきたぐぼぁっ!!!」

螺◯丸、もといコークスクリューを兄貴の腹に叩き込んだ

「一宮!!!なんだかわからんがその三人を止めてくれ!!!」

「お前…やっぱり…うざいよ…」


テメェーーーーッ!!!!!!!!

イライラが最高潮に昇りつめ、頭をかきむしる三丁目、家族以外でこれほどにイライラしたことは無い、というか今すぐそのせつなげに微笑んだ顔を殴りたい!!!

「行くぜ…!千鳥!」

言っちゃったよ

バリバリバリ…!

助走をつけ、我が家の床を右手に纏った電気の塊で傷つけて行く一宮、お前は…ほんっとに!クソッ!

もはや怒りを表現することすら困難だ

「千鳥!」

「ふん」

親父が一宮の右手をいとも簡単に掴んだ。

「なに!?」

「足りないからだ…憎しみが…」

親父ぃぃぃぃぃ!!!

どうやら一宮に感化されて裏切りの兄になってしまった親父。お前は読んだことないだろうが、アンサートーカーか!?

「ただいまー、ねぇねぇ今日私の高校時代の初音ったらねー?」

さて良い子のみんな!オチは見えたかな?

「お母…さ…ん…」

兄が声にならない声を振り絞り

「やりますね、早良さん…」

『ふっ、西洋もたいしたもんじゃない…』

早良さんとシスターが闘いを仕切り直し

「うぉぉぉ!◯鳥流し!」

「万華◯写輪眼!!!」

一宮と親父が著作権的にも危ないことをやらかす、先程コークスクリューで吹き飛ばした兄貴の姿はとっくに消えていた


「さんちゃん」

「なんでしょうお母様」

「今日は紫雲寺さんのとこに泊まってくれないかしら」

「おおせのままに」


母はお土産をどさりと床に置き、指を鳴らし始めた。両手を伸ばせば、キッチンにあるはずのものが袖から盗賊の七ツ道具と言わんばかりに飛び出す

「…雨」

「…うん」

雨の手をひき、逃げた。こわくて、後ろは振り返れなかった
すみません…最後あたりに『兄』じゃなくて『雨』のとこがあります…御了承を…


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