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Make my day!  作者: ユキ乃
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2 わたしとギャル

「・・・・・・」


わたし、橘菜穂子は非常にイラついていた。

目の前には必死にわたしの課題を写している瀬野和泉だ。

貴重な読書タイムの昼休みがあと5分で終わろうとしている。


「・・・・瀬野」

「ごめんね委員長!昨日あれから課題しようと思ったんだけど、思っただけだった!!!てへ!ごめちょ!!!」

「瀬野」

わたしの低いドスのきいた声を聞いて瀬野は一気に固まった。


「・・・・ごめんなさい」


「・・はぁ。もういいからさっさと写しなさい」

わたしはため息を吐いて、次の移動教室の用意をし始める。


瀬野はささっと課題を写し終えると、

「委員長ほんとありがとう!大好き!」

「じゃあ、早く理科室に行きますよ」

「はーい」


 わたしと瀬野の会話はいつもこんな感じで他の人が見るとおかしな光景だと思う。

 黒髪三つ編みで校則通りの身なり、成績は常に学年トップでしかも運動神経抜群のわたしと、中学時代はヤンキー、今ではチャラ男、金髪で校則違反だらけの身なり、生徒指導と警察のお世話になりまくっている瀬野。誰がどう見てもおかしな組み合わせだ。

 以前わたしたちが付き合ってるという噂も流れていたのだが、キッパリ違うと言い放った。それ以来、わたし達のクラスでは名物カップルならぬ名物コンビになっているらしくて、本当に迷惑な話だ。


――こんな人とコンビだなんて・・・・しかもコンビって何だよ・・・


「いいんちょー。腹痛いから保健室行ってくるね」

「トイレ行きなさい」

「いや、せいr「授業に集中しなさい」


席は何故か隣で、きっと担任が仕組んだものだ。

瀬野は担任の手には負えないらしく、すべてわたしに丸投げだ。


「委員長、いいんちょー」

コソコソと小さな声で瀬野がわたしを呼ぶ。

だが、わたしは実は委員長ではない。ただ見た目が委員長ぽいからという理由だけで、勝手にあだ名が委員長になったのだ。


「瀬野、五月蝿い」

わたしは授業に集中する。もう少しで期末テストだから気が張っているのだ。絶対に学年1位をキープしなければ。


「委員長の頭だったら授業なんて受けなくても1位取れるってー」

「五月蝿い。わたしはもとから頭が良いわけではありません。毎日コツコツと積み重ねて予習復習をですね・・・」

「はーいはい、えらいえらい」


――・・・この人は本当にわたしをイラつかせる天才か

  

「でもさ、委員長。その真面目口調やめた方がいいよー。今時の女子高生がそんな喋り方じゃー親御さん悲しむよー」

「大丈夫です。母は他界、父は家にいませんから」

「そういうシビアなことサラッと言わないで」




 放課後が来た。

 一応わたしは陸上部所属なのだが、活動は週1程度で、ほとんどの日を美術室で過ごしている。この学校は美術部が無いので、放課後は唯一1人の時間を楽しめるのだ。ついでに、瀬野は帰宅部だ。きっと今頃渋谷でナンパかゲーセンで仲間と戯れているだろう。


嗚呼、なんて楽しいひとときなんだ。

夕日が差し込んで赤く染まる美術室で無我無心になって絵を描く。良い!

描くのは大体抽象画で、これを見た瀬野は「わけわかんね」と言い放った。あの人に芸術は分からない。そうだ・・・そうに決まっている。


優雅に絵を描いていた。そのとき、美術室の扉が開いた。


「菜穂子!!!」


ギャルだ。

ギャルが来た。


「・・・・清子さん」

わたしはげんなりした。


「だーかーらー!その名前で呼ぶな!!」

「何でよ。清子さん」

「イマドキ清子って!ダサいじゃん!」

「良い名前だと思うけどな」

「あたしはいやなの!キヨって呼んで!」

「・・・はいはいキヨさん」


このギャル、斎藤清子は生徒会副会長をしている。

ブリーチしまくりの髪の毛、短すぎのスカート、ケバすぎな化粧、華美な装飾品。正真正銘のギャルだ。

生徒会選挙のときに、清子さん・・・もといキヨさんの選挙ポスターをわたしが描いてあげたのがきっかけで時々話すようになったのだ。


「で、どうしたのキヨさん」

「それがー、菜穂子のクラスに本条ってやついるじゃん?」

「あー、2年になってからずっと不登校の」

「そーそー。なんか担任にそいつを学校に連れてきたら生徒会辞めなくてもいいって言われてー」

「いやいや、そもそも何故辞めなければいけないの」

「それが・・・・」

キヨさんはわざとらしく頭を掻きながら、舌をぺろっと出して、

「一昨日補導されちゃってー・・・」

「は」

「いやー、生徒会が終わったあとに夜遅くまでゲーセンで遊んでたら、ね」

「馬鹿ですか・・・・」

「バカでーす!!!」

「・・・・・」


言葉を失う。この人と瀬野がすごくすごーーく被る。

――何故わたしの周りはこんな人たちばかりなのだ・・・。


わたしは気を取り直して話を進めることにした。


「まあ・・・無理でしょうね。彼はあの優しさだけが取り柄の担任がどんなに説得しに行っても一向に来ませんから。」

「え、何で!?どうにかしてよ!何でも出来るんでしょ?」

「ちょっ、何でわたしがそんなことしなきゃいけないんですか!」

「だってあたしみたいなギャルが説得しに言っても、話すどころか家にも入れてくれないっしょ!!!」

「ま・・・まあ確かに・・・」


確かに、いきなりこんなドギツいギャルが家に来たら、気弱な彼はビビッてしまうだろうな・・・。


「ね!ね!菜穂子は何でも出来るんでしょ??」

キヨさんは必死になってわたしに食らいついてくる。


「・・・・・ええと」


何でも出来ることがモットーなわたしにとってはその言葉は・・・


「・・・わかりました。でも1回だけですからね」

「やったー!菜穂子大好き!」

「はいはい」


嗚呼、面倒くさいことになった。



そんな会話を、美術室の外で、もうとっくに帰ったはずの瀬野が聞いていて、何か企んでいることに気づくのは次回。


「委員長が何か楽しそうなことしようとしてる!」





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