第二十四話
旅籠屋から臨む日本海。
斜陽の茜色が空を白波を、おのれを染める。
肥前国の国衙の長官は親切であった。
父の招集に応じ、近隣の国から数多くの武者が駆けつけた。
これは祖父の代からの家人たちであった。
祖父正盛の築いた基礎を確実なものにするべく、忠盛も伯耆国をはじめとする西国の国々を知行し、勢力を拡大しつつあったのだ。
そして、以前の海賊討伐を通して、西国武士団との間に主従関係も生まれていた。
それが、今回の追討使に忠盛が選ばれた所以であった。
「船だ」
清盛はつぶやくように言った。
陽もだいぶ傾き、光りの当たり具合で黒々と染まった異国船は、お伽ばなしの怪物のような、威圧的な雰囲気をかもし出していた。
「高麗の船かな」
彼は目の上に手をかざした。
停泊している場所も遠く、船についての知識もないためよくわからないが、少し違う気がする。
「あれは唐国の船だ」
父だった。
清盛は体ごとふり向いた。
「唐土との貿易は富をもたらす。芸術品から書物、香料、薬品までもだ」
忠盛は清盛を見た。
「わしがなぜ、異国との貿易に着手していると思う」
なぜ。
清盛は目をそらさずに見返した。
博多、敦賀、そして限られた院領にしか来航せぬ貿易船。
日中の正式な貿易は行われておらず、唐土の商人は土地の官人との間で私貿易を行っていた。
「国を豊かにするためですか」
「国?」
「国が豊かになれば人も栄えます」
はっはっはっ、と忠盛はいきなり笑いだした。
清盛は唖然とした。
笑われるようなことを言った覚えはない。
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