高校入って初めての家庭科の時間。その時間男子は保健体育で、女子と男子は別授業となる。家庭科室に入り、女子生徒全員が席に着いた途端、先生が口を開く。
「窓側にいる女子、黒カーテンと窓きっちり閉めて。廊下側の女子もカーテンとドアに鍵をかけて。」
皆がざわめく。一体今から何が始まるのだろう?
「今日は性、SEXについての授業です。」
先生が言った途端、何とも言えない空気が漂った。中には「え〜、やらしい〜。」と言ってニヤニヤしている女子もいる。かくいう私も驚きがかくせない。そんな私達を軽く無視して先生は話し続ける。
みんなも、年頃で異性に興味持ってるよね?
中には既に付き合っている子もいるでしょう。
中には既にSEX経験済み、という子もいるでしょう。
でも、今日は、性・SEXと真剣に向き合ってもらいたい。
まず、人はなぜSEXをするのか?
子孫繁栄のため。
快楽のため。
愛情表現のひとつ。
理由はさまざまです。
でも、自分のSEXにどんな意味を持たせるのか、それは自分次第です。
まず、みんなは今基礎体温つけていますか?
基礎体温とは何のことか知っていますか?
女性は月経が有り、1ヶ月で体温も変化します。
その体温変化を知ることで、生理周期も把握できるし、妊娠可能日も把握できます。
体温が一番低い日が排卵日と言われていますが、体温だけで排卵日を確実に見抜くのは実はとても難しいです。
排卵日の確率は最低体温日の前日が5%、最低体温日当日が22%、翌日が40%、翌々日が25%
といわれています。
妊娠しやすいのは、この最低体温日から5日間です。
まずは、自分の体を知ることから始めましょう。
一番いいのは、朝起きたらすぐに舌下で体温を測ることです。
そして、それを毎日記録しなさい。
6ヶ月も続ければ、おおよその自分のバロメーターを把握することができると思います。
でも、これからはそれを毎日、結婚して出産するまで毎日続けてほしい。
なぜなら、それは自分の体を護ることにも繋がるからです。
それでは、今からAVを観てもらいます。
そういって先生は私達にAVを見せた。私は初めて観た。衝撃を受けた。映画なんかでみるラブシーンとはまるで違う。綺麗でも何でもなく、もっと生々しくてグロテスクだった。観ているうちに恥ずかしさから体温は上がる。鼓動も早くなる。正直に言えば、下半身がうずうずしてきた。でも、それと同時にお腹の中になんとも言えない、吐き気を覚えた。気持ち悪い。嫌悪感というものだろうか。そんな感情に支配される。男性はこんなものを観て喜んでいるのか・・・。AVの中での女性の扱いはひどかった。
さて、次に観てもらいたいのは、中絶についてのビデオです。
これは実際に中絶をしたことがある女性にインタビューしたものです。
目をそらさず、しっかり見てください。
次にテレビに映し出されたのは、顔にモザイクをかけられた女性だった。望まない妊娠をし、中絶を決意するまでの葛藤・苦しみ。医者とは言え、赤の他人にいろんな器具でお腹の中をかき回される辛さ。そして、中絶した後襲ってくる、途切れることも消えることのない罪悪感。重かった。さっきまでとは一変して、教室はしんと静まりかえっている。時折、あちらこちらから鼻をすする音が聞こえてきた。かくいう私も、目から涙が落ちないよう必至だった。
付き合っている彼氏にSEXすることを求められたとします。
自分も相手のこと好きだし、いいかな?と考えます。
私は、SEXすること事態は悪いことだなんて思いません。
好きな人と付き合えば至極当然の行為だと考えます。
ただ、その時にはっきりきっぱりこう言える人になってもらいたい。
「コンドームを付けて。」
コンドームで妊娠を完全に防げるわけではありません。
だから最初に言ったように基礎体温が大切になります。
安全日に、なおかつコンドーム、これが非常に大切です。
もし、今、みんなが妊娠したとしましょう。
生めますか?
生んでどうしますか?
堕胎しますか?
その苦しみ、どれほどか想像できますか?
中絶が原因で、生涯子どもが産めない体になることだってありえます。
心も体も傷つき、苦しむのは女性だけです。
男性は傷つきません。
腹の中をぐちゃぐちゃかき回されることもありません。
自分の体に変化がおこらないのだから、女性の苦しみも本当のところは理解できません。
一時は、一緒に悲しんでくれるのかもしれない。
でも、男性は間違いなくその悲しみは時とともに薄れます。
でも、女性は実際に自分の体に起きた変化です。
薄れないでしょう。
自分の身を護るのは、他の誰でもない、自分です。
恥ずかしいことではありません。
必ず安全日に、そして必ずコンドームをつけさせなさい。
もし、つけることを拒否するようなやつとは、その場できっぱり別れなさい。
そんな男、付き合う価値ありません。
本当に彼女の事が好きで大事なら、つけられるはずです。
つけたら気持ちよさが半減する、なんて言うやつがいたら、それは自分の快楽しか考えていない証拠です。
ちっとも貴方達のことを大切になんて思ってない。
やりたいから付き合ってるだけ、と考えてもいいでしょう。
自分の価値を下げるようなことはしないでください。
それと、SEXする前とした後の態度が違う人も、要注意人物です。
いい男かどうか見極める基準の1つに入れておいて。
する前はね、結構必至よ。
だから甘い言葉でもなんでも簡単に口にできるの。
でも、した後ってね、男の人はすっきりしちゃうのよ。
これは体のつくりから言っても、仕方がないことだと思う。
問題なのはそれを態度に出すかどうか、ね。
急に冷たくなるような人は、問題ありだと先生は思う。
理性がなさすぎ。
更に言うなら、もっと勇気を出してこちらからつけてあげるぐらいになれればいいですね。
ということで、今日はみんなにコンドームを配ります。
今からつけ方教えます。
コンドームが配られて、一瞬ざわめきはしたけれど、コンドームを試験管につける練習する時、誰も笑っていなかった。皆真剣だった。
今日の授業はこれでお終いです。
あ、そうそう。
今日は帰宅したら自分の性器を鏡でしっかりと観察してください。
今までに1度でも自分の性器をちゃんと見たことある人、いる?
初めて見ると、軽く衝撃を受けるかもしれない。
でもね、間違いなくそこは貴方達の体の一部です。
汚らわしいところでも、厭らしいところでもない。
とても大切な部分です。
たいていの人は、そこから生まれてきます。
中には事情により帝王切開といって、下腹部を切って出産する場合もありますが。
そこは赤ちゃんが外に出てくるための、大切な場所です。
自分の体を、大切にすること。
そのためには、まず、自分の体を知ること。
決して、性をおもちゃにしてはいけません。
自分を卑下してはいけません。
自分の価値を自分で下げるようなことだけはしないでください。
何度も言いますが、自分を護れるのは自分だけです。
その日の授業は本当に衝撃だらけだった。授業が終わっても、皆静かだった。それぞれに思うところがあるのかもしれない。私もあまり話をしたい気分ではなかった。教室に戻ってからも大変だった。隣にいる男子生徒が、廊下にいる男子生徒が、運動場にいる男子生徒が、どうしても敵に見えてしまう。そして、体操服で歩いている男子生徒の足のすね毛を見るだけで吐き気をもよおしてしまう。それはなにも私だけではなかったようで・・・。その日1日、教室内には何とも言いがたい空気が漂っていた。女子はみんな伏せ目がち。男子が話しかけてきてもそそくさとその場を去る。でも、人の心は脆くも強い。翌日には皆いつも通りに戻っていた。私も、翌日は普通に今まで通り男子生徒と接することができた。
性にどういう意味を持たせるのか、それは自分次第だと先生は言っていた。なにも男が敵なのではない。皆が皆、悪い男なのではない。毛嫌いする必要はどこにもない。要は自分がしっかりしていればいいだけの話である。そうそう。私は先生に言われた通り、自分の性器をお風呂で観察した。先生が予言したように、ショックを受けた。一瞬、下腹部を切り離してしまいたい衝動に駆られた。その時先生の言葉が甦る。
「そこは赤ちゃんが出てくる大切なところ。」
その言葉を思い出した途端に嫌悪感は消えた。そう。ここは私の体の一部。誰に見せてもいいところではないけど、でも、恥ずべきところではない。私は、私に愛着を感じた。自分を大切にしなければ、と強く思えた。あの授業は私には少々過激で衝撃的だったけれど、確実に私の意識に変化をもたらした。それまで、私も性に対して興味が多分にあった。でも、それは単なる好奇心、遊び的な興味でしかなかったように思う。でも、あの授業以来、遊び半分ではなくなった。
あの授業があってからしばらく経ったある日。同じクラスで友だちの莉緒が元気なく私に相談があると話を持ちかけてきた。昼休み、人の少ない中庭でお弁当を食べながら、もう一人の友だち真奈と話しを聞く。
「実はね、俊ちゃんと別れたの。」
瞬ちゃんとは、私達3人と同じ中学出身で莉緒の彼氏だ。
「え、何でまた?」
「うん。実はさ、あの衝撃的な家庭科の授業があった日にね、また体を求められちゃったの。」
そう。莉緒は私達3人の中で唯一のSEX経験済み。羨望の眼差しで体験談の話しを聞いたこともある。
「私、先生の話はもっともだな〜と反省したの。だから、その日、俊ちゃんにコンドームをつけてってお願いしたの。そしたら即効断られちゃって・・・。何でつけてくれないのか訊いたら、気持ち良さが半減しそうだからって。それで、もう一度『私がつけてあげるから、お願い』って言ったの。そしたら、淫乱ってボソって言われちゃった。」
「ひ〜、先生の言ってたダメ男そのまんまじゃん。」
「うん。前なんかね、海を見に行って、その砂浜でされたことあるの。砂が入ったりして痛くて、途中で止めてってお願いしたけど、その時も『今更無理』って言って止めてくれなかったの。そういうこと思い出して。私、大事にされてないな〜ってようやく気がついたの。」
「それで、ちゃんと別れられた?言っちゃ悪いけど、私、あいつになんとなく粘着質なイメージ持ってるんだけど。」
「うん。とりあえず別れることはできたんだけどね・・・。昨日、靴箱にこんなのが入ってたんだ。」
そう言って莉緒は紙切れを私達に見せた。そこには信じられないような事が書かれていた。
【あんた、コンドームさえつければいつでも、どこでもHしてくれるらしいじゃん。俺溜まっちゃっててさぁ。今日放課後、●●で待ってるわ。よろしく〜。】
言葉が無かった。なんなんだ、これは・・・。私と真奈が俯いている横で莉緒はがまた小さく口を開く。
「それだけじゃなくてね、知らない男の人から電話がかかってきたこともある。最近では廊下ですれ違いざまに知らない男子生徒から『売女』って言われたりするの。」
驚いて莉緒を見ると、莉緒の目は虚ろだった。心が壊れる寸前なのかもしれない。私と真奈は急いで莉緒の手をとり、職員室に向かった。あの授業の終わりに先生はこう言ったんだ。
「何か困ったことあれば私に相談しなさい。私は100%女子の見方だから。他言もしない。自分達だけで抱え込むことだけはしないで。」
私と真奈はすがる思いで先生のもとに急いだ。先生は血相を変えてやってきた私達を見るなり「家庭科室においで。」と言ってくれた。そして家庭科室の鍵をかけて真剣に静かに話しを聞いてくれた。
「私に話しをしてくれてありがとう。私にまかせなさい。そして、貴方、偉いわ。怖がることは何もないのよ。自分を大切にすることに気がついたんだもの。私は貴方を誇りに思う。もう、傷つかないでいいのよ。安心しなさい。」
そう言って莉緒を包み込むように暖かく笑ってくれた。莉緒は先生にしがみつきわんわん泣いた。私も泣いた。真奈も泣いた。次の授業がどうなろうとどうでも良かった。
先生の言った通り、莉緒に関する変な噂は瞬く間に消えた。莉緒は日に日に元気を取り戻していく。でも、私も真奈も怒りがおさまらなかった。俊のやつに仕返しをしてやりたい。そこで、私達はクラスの女子にこう言った。幸い、莉緒と俊が付き合っていたことを知る人は誰もいなかった。だからできたことだけど。
「3組の如月俊って人、女をおもちゃにしてるらしいよ。好意を寄せてた女の子にふられた時、腹いせに暴行したんだって。」
あることないこと言ってやった。それはあいつがとった手段。目には目を、だ。家庭科のあの授業を受けていたせいか、我がクラスの女子は一斉に俊のことを毛嫌いし始めた。廊下ですれ違う時、心底毛嫌いした目で見る。時折「さいて〜」と言ってすれ違っている女子も見かけた。そして、あの授業を受けたのは、私達クラスだけではない。他のクラスの女子にも噂は広がり、そして俊に対する対応は瞬く間に冷たいものとなっていった。それは何も知らない人、傍から見てもあからさまにわかる変わりようだった。女子から嫌われ、遠巻きにされているやつとわざわざ友だち付き合いするような、もの好きな男子生徒もそうそういない。1ヶ月も経たない内にやつは孤立無援となっていた。ざま〜みろ。
でも、私と真奈はある日家庭科室に呼び出しをくらった。
「あのね、あんた達のくやしさや怒りはわかるけど。あいつと同じことして同じ土俵にあがってどうすんの!!だから私にまかせなさいって言ったでしょ。もう、金輪際こんなばかなことするんじゃないわよ!!」
こっぴどく叱られた。それでようやく私も真奈も目が覚めた。私と真奈は俊のところに謝罪に行った。今更謝ったところでどうにもならないとは思うけど。でも、意外な反応が返ってきた。
「俺、されて当然のことしたから。むしろ罰を与えてもらって感謝してる。」
青ざめて生気のなくなった顔をしてはいたけど、以前のような粘着質な感じはなくなっていた。俊は俊なりに成長しようと踏ん張っているらしい。
私は今22歳にして遅めの初体験を迎えようとしている。高校2年の時、彼氏ができた。1歳上の背の高い格好いい人だった。大きな手で頭を撫でてくれるのが大好きだった。でも、いざSEXしましょうとなった時、彼もまたコンドームを拒んだ。そして別れた。別れてから思い返すと、実は結構な自己中野郎だったということに気がついた。恋は盲目とはよく言ったもんだ。あのまま付き合っていても、きっと私は幸せには浸れなかったように思う。そして現在の彼に至るまで、付き合ったことはなかった。
「あの、お願いがあるんだけど。」
私は一歩も譲れない、真剣な顔で話しを始める。「今からSEXしましょう」という時の顔ではないとは思う。ロマンチックでもなんでもない。ムードもへったくれもない。でも、これは譲れない。
「一応今日は安全日なのだけれども、コンドームは絶対につけてください。」
顔に血液が集中してくるのがわかる。色気も何もあったもんじゃない。
「うん。そのつもりだったよ。俺もまだ学生だし。もし貴子に子どもができたとしても、産ませてあげられるか正直わからない。」
それから私達は格闘した。彼は初めてではなかったみたいだけど「あんまり経験豊富じゃないからごめんね」と言いながら、常に私を気遣ってくれた。そのおかげなのかな。話で聞いて想像するより、全然痛くなかった。終わった後シーツを見ると、出血もしていなかった。これには少し焦った。「処女じゃないじゃん」って責められるかと思ったから。別に処女を売りにしてるわけではない。単に「嘘つき」呼ばわりされないかと心配だった。
「あれ、出血してないみたい。」
「あぁ。出血あんまりしない人もいるって聞いたことあるよ。」
彼はにっこり笑い「体、痛くない?大丈夫?」と気遣ってくれた。先生、私今すごく幸せです。
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