11話
今だ無言のままである。
デザートにはちょっと重過ぎやしませんかね。空気が。
二人には悪いが俺はそろそろ退場させてもらおう。
『御堂は東条とはあんま話してるとこ見たことないなぁ……』
『この機会に二人でゆっくり仲を深めてみるのはどうだ?!』
『俺はもう食べ終わったし……失礼するよ』
よし、これでいこう。
「御――」
「皆さん、集まっていますね!? 緊急事態です! 私に付いて来てください!」
一人の騎士が飛び込んで来た。
……。
「なんなんだろ……、とりあえず行こうか、東野くんっ」
「行きましょう。東野くん」
周りの慌ただしさもありあまり聞き取れなかったが、この二人もしかして仲が悪かったりするんだろうか。
「そ、そうだな……」
俺は引き攣る頬で強引に笑顔を浮かべた。
「ここから南にある、ラーグという町に魔物の群れが迫っています。街の防衛にあたっている騎士の数は400。魔術師が僅か10人。周辺の部隊は既にラーグへ。住人は避難を始めてめていますが、もしこのまま戦闘になると、恐らく町は壊滅……全滅の可能性もあります。そこで、皆さんの中から精鋭のパーティーを二組、増援として私たち騎士団の隊と共に一緒に来てもらいます」
「「「「…………」」」」
皆静まり返っている。
俺たちが集められたのは演習場だった。
第7騎士団の副団長を任せれているカースという俺たちとそう歳は変わらないだろう青年が前に立ち高らかに言った。
もちろんクラスメイト達にどよめきが起こり、ざわめき立つ。
いくら訓練をしていたとは言えいきなりの実戦だ。
そんな中でただ一人、俺だけは冷静だった。
なにせ俺は選ばれないからだ。
無条件な安全。
力無く役に立たないが故に、安全なエリアで護られる。
こんな状況だと言うのに、俺はホッとしてしまっていた。
十人の生徒が五人一組のパーティーとして選ばれた。
久山、雲之、小菜、東条、御堂。
高橋、砂原、後藤、美野、小鳥遊。
この十人は能力、実力の高い者の中から選ばれた。どちらにも貴重な回復役が一人ずつ参加している。
久山がパーティーリーダーを務める第一パーティには御堂が。高橋がパーティーリーダーの第二パーティーには美野という女生徒が。
しかし、何だろうか、小鳥遊という名前から溢れ出るヒロイン感が凄い。
話したことはないが、可愛い方な顔の造りだ。
そして先程から高橋がニヤニヤとこちらを見ている。
殴りたい、あの笑顔。
他のメンバーは砂原と後藤という男子だ。
後藤は高橋の取り巻きの一人でもある。
砂原という男子は話したことがない。
丸刈りで、見た目がまんま野球男子のようだ。
「皆さんの装備が整い次第、ラーグへ向かいます。同時に、これは実戦に慣れる、という目的もあります。今回のパーティーの方以外の皆さんも、今後パーティーとして活動してもらうことになります」
最後にそう締めくくり、カースは緊張した面持ちをした精鋭の2PTを引き連れて去って行った。
残された俺たちには、騎士団の兵士が来て、訓練ということで、いつも通り訓練場へとわらわらと去って行った。
こちらもいつもなら騒がしい筈が、誰も口を開かないでいた。
そして、俺は一人、部屋へと戻った。