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邪神アベレージ  作者: 北瀬野ゆなき
【特典之章】
82/82

不死王様の退屈しのぎ

WEB版からタイトル、主人公、視点を変更し全面改稿した続編、

「邪神アトランダム 平均的邪神娘と召喚勇者」いよいよ発売です。

既に今日か明日くらいには店頭に並び始めていると思いますので、

どうぞ宜しくお願い致します。

「……退屈だ」


 ダンジョン「邪神の聖域」の十階層で、玉座に座る者が思わずといった形で呟いた。しかし、人語を話していてもソレは人族ではない。

 蒼きローブを身に纏い王冠を被ったソレは骸骨の異形──ダンジョンマスターであるアンリによって召喚され、十階層のボスを任されたノーライフキングだ。


 彼がそのようなことを呟いた理由は単純で、人が来なくてひたすらに暇だからだ。

 アンリから命じられた階層守護の任務に、彼は一切不服を抱いていない。しかし、侵入者が彼の居る場所まで到達出来ないでいる現在、彼の出番は皆無である。

 アンデッドであるが故に肉体的な疲労などとは無縁の彼ではあるが、退屈ばかりは如何ともし難いものがあった。


「ふむ、何か無聊の慰めがほしいところであるが……」


 そう言いながら彼は部屋を見渡すが、この部屋にある物は今彼が座っている玉座くらいであり、それ以外の物は何一つ存在しない。

 どこからどう見ても、退屈を紛らわせることが出来るような物は無さそうだった。


「むぅ。盤の一つもあれば……ぬ?」


 生前に嗜んでいた盤遊びのことを思い浮かべながら唸るノーライフキングだが、その時、彼の脳裏にひらめきが走った。彼に脳は無いが。


「余は──王だ。数多の眷属を束ねし不死者の王」


 ノーライフキングはおもむろに玉座から立ち上がり、前方に広がる部屋に向けて手を翳すと、厳かに告げた。


「出でよ、我が眷属達」


 王たる彼の召喚に応え、様々なアンデッド達がその場に現出する。スケルトン、ゾンビ、レイス、デュラハン……等々。

 ノーライフキングはそれらの姿を見て、満足そうに頷くと指示を出した。


「両陣営に分かれて配置につけ」


 王の号令に従い、アンデッド達は各々左右に分かれて対峙する。同種のアンデッドが均等に二分されるように、だ。部屋を正方形に刻んで区切って見れば、それはさながら盤遊びの盤面のようだった。


「よし、では始めよ。先手は白からだ」


 否、盤遊びそのものだった。




   ◆  ◆  ◆




「飽いたな」


 しばらくしてから、ノーライフキングは再び呟いた。

 盤遊びを模して戦わせていた眷属達は既に還している。

 眷属のアンデッド達を種類毎に駒割りして盤遊びを模してはみたものの、対戦相手が居ないのだから面白い筈がない。

 なお、眷属達には駒の動きに合わせて本気で攻撃させ合っていたが、基本的に彼らは不死のアンデッドであるため時間をおけば自己修復するので問題はない。


「さて、次は何をするか」


 新たな退屈しのぎを模索するがやはり部屋の中には何も無いため、結局のところ眷属達を呼び出すくらいしか彼の採り得る選択肢はない。

 ノーライフキングは再び玉座から立ち上がり、前方に広がる部屋に向けて手を翳すと、厳かに告げた。


「出でよ、我が眷属達」


 王たる彼の召喚に応え、再びアンデッド達がその場に現出する。


「今度は音楽だ」


 先程のような遊技の場合、意志の薄弱な眷属達は彼の指示に従って動くのみなので、彼自身が双方の陣営を動かす羽目になってしまう。

 当然両陣営を動かすことになるため、一人遊びの域を出ないし、詰まらない。


 そのため、今度は分かっていても愉しめるものを選んだのだった。

 音楽であれば、音という結果を愉しむものであり、それが自身の操作の結果であっても詰まらないということはないだろう。


 しかし、そもそも楽器が無かった。これでは演奏が出来ない。

 仕方がないので、眷属達は骨を鳴らしたり叫び声を上げたりして音を鳴らした。しかし、そんなものは当然ながら不協和音の域を出ない単なる騒音だった。


「ええい、やめよ!」


 とても音楽として愉しめるものではなかった為、ノーライフキングは苛立ちながら眷属達を止め、還した。




   ◆  ◆  ◆




 ノーライフキングは三度玉座から立ち上がり、前方に広がる部屋に向けて手を翳すと、厳かに告げた。


「出でよ、我が眷属達」


 王の召喚に応え、再びアンデッド達がその場に現出する。しかし気のせいか、意志が薄弱の筈の彼らも嫌気が差しているように見えた。


「今度は舞踊だ」


 楽器が無かったために音楽は失敗だったが、舞踊、つまりはダンスであれば特に道具は必要ない。これならばきっと愉しむことが出来るだろう。


「………………」

「どうした? 早く舞ってみせよ」


 すぐには動かなかった眷属達だが、ノーライフキングが促すと渋々といった感じで舞い始めた。


「………………」


 眷属達が舞い始めてすぐに、ノーライフキングは自身の失策を悟った。バックミュージックが無いダンスはダンスに見えなかったのだ。

 これが熟練のダンサーであればその動きだけで魅了することも可能だったかも知れないが、眷属のアンデッド達は当然ながらダンスの素養など持ち合わせていない。ただひたすらに、カクカクと手足を振りながら行ったり来たりを繰り返しているだけだ。


 最早何かの儀式にしか見えなかった。


「……もうよい」




   ◆  ◆  ◆




 その後もノーライフキングは何度も眷属を召喚して色々と退屈しのぎを試した。その結果……。


「出でよ、我が眷属達」


 しかし何も現れなかった。どうやらストライキのようだ。

書籍版「邪神アベレージ」1巻の特典シリーズ第4弾でした。

1巻の特典は以上になります。

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― 新着の感想 ―
[一言] kindleで電子書籍希望します。今なら出来るかも❗
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