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邪神アベレージ  作者: 北瀬野ゆなき
【後篇~神之章~】
46/82

14:謎解き地獄

 私は元の世界でも職に就いていたわけではないから想像することしか出来ないけれど、コールセンターとかの問い合わせ窓口とかは引っ切り無しに電話が掛かってきて戦場みたいになっているのだろうか。


「違います、その問題は左が正解です!」

「そんなん俺が知るか! ちったぁ自分で考えろや!」

「ああ!? 何故左に行くのですか!

 え? 私が左に行くように言った? ……まぁ、そう言う時もあります」

「ったく、分かった分かった。

 調べてやるからちっと待ってろ!」


 問い合わせの対応に追われるソフィアとアンバールの二柱を横目に見ながら、私はお茶を啜っていた。


「忙しそうだね」

「──貴女のせいでしょうっ!?」

「──手前のせいだろうがっ!?」


 怒られた。


 現在混合パーティが攻略している11階層はレオノーラも苦労していたクイズフロアだ。ランダムに出題される10問の3択問題に従って正解の道を選ぶというシンプルなフロアだが、一回でも間違えると階層の入口に逆戻りのため、10問全てに正解する必要がある。

 11階層に突入してからというもの、彼らから二柱に対する問い合わせが引っ切り無しに掛かってきているようで、部屋の中では二柱の怒号が飛び交っていた。

 まぁ、そうなるのも無理はないだろう。なにしろ、勇者勢の方はそう言ったことを得意とする知識に長けたパーティメンバーを置いてきた戦闘一辺倒の顔触れのようだし、魔王勢の方もレナルヴェは戦闘タイプで、ヴィクトだけが知能面で秀でていると言った状態だ。おじ様はよく分からないけれど、少なくとも見ている限りではクイズであまり活躍している様子はない。

 このパーティ、圧倒的に知力が不足している。


「戦闘能力主体でメンバー選出したのが徒となりましたか」

「アイツら、基本的に脳筋だからな」

「ご愁傷様」


 その上、彼らは知恵を出し合って協力して進むということも出来ておらず、勇者勢と魔王勢で殆ど個別にクイズに挑戦している。やはり、両者の確執は大きいのだろう。

 尤も、共に先に進まなければいけないと言う二柱からの厳命があるためか、一応同じ方向には進むようにはしているようだ。先に解いた方をもう片方が追いかけると言う暗黙の了解のもとに、競い合うようにして進んでいる。


『ふむ、この問題はこちらが正解ですね』

『チッ、負けてたまるか!』

『ちょ、ライオネルさん!? そっちは不正か……ああっ!?』

『……また最初からか』

『貴様ら、その莫迦をしっかり抑えておかんか』

『いや、その……すまない』


 あれ、何だか意外と仲良さそうに見えてきた。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 何度も不正解になり振り出しに戻ることを繰り返したクイズフロアに比べると、動く床のような俯瞰的に見ることが出来れば解ける類の仕掛けのフロアについては、光神と闇神の助言によって彼らは然程苦労することもなく順調に進んでいった。


 ……そう、彼らは然程苦労していない。彼らは。


 混合パーティが順調に攻略を進めるその裏ではソフィアとアンバールの涙ぐましい努力があった。


「右、右、下、下、上、下、右、下、上」

「下、左、左、下、上、右、下、下、上」

「下、右、下、下、上、左、下、右、上」

「右、上、下、下、右、上、右、右、下」

「下、左、左、右、上、下、下、左、左」

「右、右、右、右、上、下、右、右、下……で、一番下が出口か」

「はい、これで今の部屋の分は全て書き写せました」


 紙上にダンジョンの大部屋の見取り図を書いて、動く床の矢印を一つずつ書き写していくソフィアとアンバール。彼らは出来上がった図面を中央に置いて、両側から睨んで頭を悩ませ始めた。


「ここから乗ると右に行って下に行って……ダメだ、戻っちまう」

「それならこちらから……これもダメですか」

「本気で面倒くせぇな、飛び越せないのかよ」

「それが出来るならとっくにやらせています」


 図面に書かれた矢印を辿りながら、ソフィアとアンバールは正解の道を探すために話し合っているが、中々正解を見付けることが出来ないでいる。


「大変だね、お茶飲む?」

「──だから貴女のせいでしょうっ!? 貰います」

「──だから手前のせいだろうがっ!? くれ」


 怒りながらもお茶を要求する二柱に、私はお茶を淹れてあげた。彼らが今取り組んでいるような頭を使う作業の時は糖分が重要なので、ちょっと多めに砂糖を入れてあげよう。果たして神族に糖分が要るかと言われると疑問だけど。


「はい」

「ありがとうございます」

「ああ」


 カップを渡すとそれぞれに返答し、図面と睨めっこをしたまま彼らはお茶を口に含んだ。


「──────げほっ!?」

「──────ぶはっ!?」


 次の瞬間、彼らは口に含んだお茶を噴き出した。汚いな。


「あ、甘ぇ……!?」

「貴女、どれだけ砂糖を入れたのですか!?」

「いっぱい」


 お茶2杯で砂糖壺の半分くらいを消費した。


「それより、図面はいいの?」

「え? ああ!? 折角書き上げた図面が……」

「チッ、早く拭き取れ!」


 噴き出したお茶で濡れてしまった図面を慌てて拭くソフィアとアンバールだが、書き込んだ矢印が滲んでしまって当初の目的を果たせそうにない。


「うう、また図面の書き直しですか」

「やってらんねぇ……おい、半分はお前のせいなんだから、手伝いやがれ」

「……仕方ない」


 何故私のダンジョンを攻略するための助言を私が手伝わなければならないのかとも思うが、流石に今回は私が悪い部分もあったので、図面書きだけは手伝うことにした。


「っつーか、そもそもお前が正解を教えれば済む話じゃねーか」

「無理、覚えてない」




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 入り組んだトロッコに乗って移動するフロアやスイッチの切り替えで扉を開閉して先に進むフロアも、光神と闇神が毎回図面を引いて頭を悩ませたおかげで順調に攻略は進んでいたが、見ることは出来ても解き方までは分からない類の仕掛けについては流石の彼らも頭を抱えていた。

 19階層の仕掛けはまさにそのような仕掛けで、2つの入れ物の水量を均等に調節することで先に進むための道が開かれるというものだ。


 10の容量が入る2つの水槽の片方に満杯の水が入っており、もう片方は空の状態。この状態で3の容量が入る桶と7の容量が入る桶を用いて、両方の水槽の水量を5ずつにすれば先に進めるようになる。スイッチを押せば水槽の水は最初の状態に戻るため、やり直しは幾らでも可能だ。


「ええと、これで宜しいですか?」

「大丈夫」


 テナに頼んで、丁度いい大きさの入れ物を2セット用意して貰った。19階層の実際の仕掛けとは大きさが異なるが、縮尺は合わせてあるため解き方を考えることには十分な筈だ。

 映像越しでは勇者や魔王達が同じように仕掛けに取り組んでおり、桶で水槽から水を汲んで移し替えたりと施行錯誤を行っている。

 用意した4つの入れ物をそれぞれソフィアとアンバールの前に置き、入れ物の一つにテナが液体を注いでいった。


「何故私達がこんなことを……」

「言うんじゃねぇ、気が滅入るだろが」


 苦手な部類の仕掛けであることを既に察したらしく、ソフィアとアンバールの表情は暗かった。しかし、溜息を吐きながらも謎解きに取り組み始めた彼らだが、すぐに違和感に気付いたようで怪訝そうな表情をする。


「この匂い……」

「って、おい! これ酒じゃねぇか」


 そう、先程テナが入れ物に注いだのは水ではなくお酒だ。匂いで気付いたソフィアとアンバールは微妙にそわそわとし始めた。

 宗教とお酒が切っても切り離せない関係にあるのはこの世界でも同じようで、ミサではお酒が供される。私は飲んだことがないので分からないけれど、神族というのはお酒が好きというのが一般的な認識らしい。

 なので試してみたのだが、明らかに二柱とも気になって謎解きに集中出来なくなっている様子が窺えた。

 彼らの姿に、私は長期戦になりそうな予感を感じて休憩することにした。


「テナ、お茶のお代わりをお願い」

「はい、かしこまりました」


 自分でも淹れられないことはないが、やはり彼女に淹れて貰った方が美味しいため、テナにお代わりを頼む。ほどなく渡されたカップに口を付け、ほぅっと息を吐いた。


「あの、アンリ様? アンリ様は何故あの方達に協力されているのでしょうか。

 ダンジョンが攻略されない方が良いのですよね」


 テナが二柱に聞こえないようにするためか、小声で聞いてきた。

 確かに、勝負のことだけを考えれば私がソフィア達や混合パーティの手伝いをする必要はなく、むしろ妨害をする方が自然だと言える。お酒で集中力をかき乱したりはしたけれど、妨害とも言えないような些細な悪戯でしかない。

 どのみち彼らが仕掛けを解くのは時間の問題という考えもあるが、一番の理由は勝負の後のことを考えてのことだ。


「彼らとはなるべく関係を深めておいた方が、今後の安全に繋がるから」


 一年間の猶予期間を得ることには成功したが、逆に言えば一年しかないのだ。

 神殿の周囲は店を中心として建築ラッシュが起きており、この国は急速に発展を続けている。しかし、現状ではどう贔屓目で見ても国家と呼べるまでには至っていない。精々これまでは村だったものが漸く街になり掛けたくらいだ。おそらく、一年後を考えても街レベルであって国レベルまでには到達していないと私は思っている。

 そうすると、下手をすれば一年間の猶予期間が終わった瞬間に各国から攻め込まれて窮地に陥る危険性すらある。それを防ぐためには各国と国交を結んで攻め込まれない程度に関係を深めておく必要があるのだが、そのために最も有効なのは、彼らの神であるソフィアとアンバールに取り持って貰うことだろう。

 一応既に仲を取り持って貰うことについては頼んでいるのだが、彼らとの関係が深ければ深い程、各国は攻め込めなくなると思うので、なるべく仲良くしておきたい。


「まぁ、それだけじゃないけど」


 尤も、そういった打算を抜きにしても彼らとの会話を結構楽しんでいる気持ちがあるのも確かだ。元の世界では一人っ子だったが、もしも兄や姉が居たらこんな感じだったのかなとか想像してしまった。

矢印の方が見易いでしょうか。

上から入って下に抜けます。

こんな感じの部屋が幾つも連なっている階層です。


→ → ↓ ↓ ↑ ↓ → ↓ ↑

↓ ← ← ↓ ↑ → ↓ ↓ ↑

↓ → ↓ ↓ ↑ ← ↓ → ↑

→ ↑ ↓ ↓ → ↑ → → ↓

↓ ← ← → ↑ ↓ ↓ ← ←

→ → → → ↑ ↓ → → ↓


ちなみに、上のは総当たりで確認していけば誰でも分かる筈ですので置いておくとしまして、水量調節の仕掛けの方も特に回答募集などは致しませんので感想欄への回答書き込みなどはご容赦願います。

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[良い点] 久々に読みに来ましたがやはりこの作品は楽しいですね。出来が良いとかいうより、楽しい。褒め言葉の「アホ」。
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