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邪神アベレージ  作者: 北瀬野ゆなき
【前篇~邪之章~】
10/82

10:引き籠もり生活開始

 奴隷少女のテナと暮らし始めて4日が経過した。

 初日は色々と驚いてばかりだった彼女も、漸く慣れてきたようだ。

 慣れたと言うよりも理不尽なことや規格外なことに思考を放棄しただけかも知れないが。


 村では母親の手伝いをしていたと言う彼女は一通りの家事をこなせるらしく、私が出来ない料理や掃除を完全に任せきりにしている。

 いや、一応言っておくと私に料理や掃除をする能力が無いわけではない。

 ただ、私が料理をする為に包丁を持つと短刀に叩き落とされ、エプロンを着ようとするとローブに弾かれる。

 身の周りだけでも自分で掃除するかと持った箒すらも駄目、箒は武器扱いらしい。

 ちなみに、洗濯については私が着替えられないので自分の分だけしてもらっている。

 幸いと言うべきか、私の服はどうも加護付与の発動こそ最初の時だけだが着ていると一定時間で状態復元されるらしく、汚れや草臥れは残らないようだ。


 テナは奴隷だが、今のところ私が彼女に主人として命令したのは「私の不利益となる行動をしない」ということだけだ。

 彼女の病気を癒して命を助けた私に対して絶対的な忠誠を抱いたらしく、わざわざ命令を行使しなくても懸命に働いてくれている。



 私は彼女の働きぶりを横目に眺めながら「ステータス」と唱える。


  名 前:アンリ

  種 族:人族

  性 別:女

  年 齢:17

  職 業:魔導士

  レベル:1

  称 号:邪神の御子、ダンジョンマスター

  魔力値:3031504

  スキル:邪神オーラ(Lv.5)

      悪威の魔眼(Lv.5)

      加護付与(Lv.7)

      状態異常耐性(Lv.6)

      闇魔法(Lv.6)

      アイテムボックス(Lv.4)

      ダンジョンクリエイト(Lv.2)

  装 備:悪鬼の短刀

      邪神の黒衣

      堕落のベビードール

      淫魔のスキャンティ

      闇のパンプス

  眷 属:テナ


 新たに「眷属欄」が追加されてテナの名前が記載されている。

 テナに確認してみたが、このステータス画面は私しか見ることは出来ないらしく、テナが私のステータスを見ることは出来なかった。

 また、テナに「ステータス」と唱えさせてみたが、何も見えないらしい。

 私がステータス画面のテナの名前に注視すると、彼女のステータスが新たに表示される。

 テナ自身はステータス画面を表示させることが出来ないが、私の奴隷となった所為か加護付与の所為かは不明なものの、彼女のステータスは私のステータスの一部と見做されるようで、私は彼女のステータスを見ることが出来た。


  名 前:テナ

  種 族:人族

  性 別:女

  年 齢:14

  職 業:魔導士

  レベル:3

  称 号:奴隷、邪神の使徒

  魔力値:60532

  スキル:状態異常耐性(Lv.4)

      闇魔法(Lv.4)

  装 備:邪神の巫女服

  従 属:アンリ


 称号の「奴隷」は仕方ないとして、「邪神の使徒」は加護付与のせいだろうな。

 魔力値は6万ポイント程だが、ダンジョンマスターの平均的な魔力値が1〜2万であることを考えると、人の領域を超えている数値だろう。

 今となっては加護付与前の彼女の魔力値は不明だが、彼女自身に魔法を使える認識はなかったそうなので、この数値は加護付与によって齎されたものと推測出来る。実は本人も自覚していなかった天性の魔法の才能が……という可能性もゼロではないが、まぁほぼ間違いなく加護付与のせいだろう。スキルについても、私の持つスキルと同じ系統があることだし。

 装備の「邪神の巫女服」は加護付与によって変貌した貫頭衣のことだが、それ以外に装備欄に記載が無いのは別に下着や靴を着せていないわけではなく、どうも防御力の無い普通の衣服は装備品扱いされないらしい。別に私がノーパンを強制しているわけではない。

 靴や下着を買い与えた時にテナは非常に恐縮して遠慮していたが、私の精神的安定の為に強引に着させた。通常奴隷にそんな物を与える主人は居ないと言う話だったが、全裸に巫女服なんて倒錯的な格好で傍に居られたら私が落ち着かない。

 なお、邪神の巫女服は特に呪われているわけでは無いらしく、テナは普通に着替えることが出来た……差別だ。




「テナ」

「はい、アンリ様」


 私の前にティーカップを用意するテナに呼び掛けると、テナは即座に答えを返してくる。ちなみに、最初は「ご主人様」と呼ばれたが、落ち着かないので名前で呼んで貰うように変えて貰った。様付けも要らないと言ったのだが、そこは譲れない一線らしく強硬に抵抗されてしまったため諦めた。


 背後に控えようとするテナに自分の分のお茶を用意して対面に座るように言う。テナは私と同席することに戸惑って辞そうとするが、話があると何とか納得させる。村育ちの筈なのに、どうしてこんなに従属スキルが高いのか不思議で仕方無い。


「家族に会いたい?」


 いきなり切り込むように投げた私の質問に、予想外だったのかテナが硬直する。

 借金奴隷であるテナは、リーメルの街から少し離れた村から借金のかたとして奴隷商に引き渡されたと聞いている。家族から無理矢理引き離された彼女からしてみれば村に帰りたいのではないだろうかと思い、彼女がどう考えているかを聞いてみることにした。

 私としては彼女が居ないと色々困るから出て行かれるのは避けたいが、ちょっとした里帰りぐらいなら別に構わないので、彼女が望むなら認めるつもりだ。今後長い付き合いになりそうなので、不満を溜めないように配慮しようと思ったのだ。


「会いたくないと言えば嘘になります」

「それなら」

「でも、正直どんな顔で会えばいいのか分かりません。

 多分、家族の方も一緒だと思います」


 まぁ、それはそうか。

 お金の為に売った家族とお金の為に売られた少女、やむにやまれずだったとしても複雑なのは当然だ。


「分かった。

 気持ちの整理が付いて会いたくなったら言って。

 数日なら構わない」

「あ、ありがとうございます!」


 涙目だったが、テナの笑顔はとても魅力的だった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 さて、共に暮らすテナのためにもダンジョンの防衛力強化は最優先事項だ。4日の間にダンジョンはまた少し改装を進めており、毎日1階層ずつ増やしたので現在は9階層まである。際限なく増やすつもりはないが、安全を確保出来るだけの難攻不落なダンジョンにしたいため、30階層くらいまでは増やすつもりだ。

 自分自身で戦うことは考えたくないが、いざという時のため念のために魔力値100万ポイントは残し、一日当たり200万ポイントをダンジョンの強化に費やす。100万ポイントは階層追加に使っているため、改装や強化に使用出来るのは一日当たり100万ポイント。


 初日は居住区の部屋を増やしたり家具の設置に費やした。テナ用の部屋も必要だ。必要最低限のベッドやテーブルくらいしかなかった居住区だが、漸く住居の体裁が整ってきた。少なくとも、浴場がある時点で街の宿屋よりも生活環境としては上だが。


 2日目は各層に転移陣を設置した。

 ダンジョンマスターである私自身はダンジョン内を自由に移動できるのだが、テナはそうはいかない。彼女には街に買い物に行って貰ったりするため、入口まで楽に移動出来るように手段を整える必要があった。幸いにして予め登録された魔力の持ち主しか使用出来ないように設定出来た為、侵入者に使われることは無い。

 なお、居住区以外の各層の転移陣は入口への一方通行のものと居住区への非生物専用の2つを設置している。前者は斃れた侵入者にお帰り願う時に、後者は気絶した侵入者からの強奪品を送る為に使用される。


 3日目は出現する魔物の追加を実施。

 元々レイスと黒鋼ゴーレムが徘徊していたが、新たにスケルトンロードとカオスエレメンタルを追加した。前から順番に物理攻撃が効かない上に強力な魔法を使う死霊、全長3メートルの鋼鉄の塊の人形、大剣を軽々と振り回す骨、光属性を除くあらゆる属性を吸収する瘴気の塊だ。

 勿論、新たに追加された魔物達にも殺人は禁止しておいた。どちらも非生物なので命令には絶対従ってくれる。


 4日目は各層に対して罠を設置した。

 人死にを出さない方針なので、当然即死するような危険な罠は設置していない。トラバサミ、落とし穴、麻痺ガス、睡眠ガス、個人転移陣などがメインになる。ちなみに、最後のが一番えげつない。小型の陣なので転移先は同階層内限定だが、パーティからいきなり1人だけ別の場所に飛ばされるのだ。転移先で孤立したところを魔物に囲まれたらひとたまりもないだろう。


 そして本日階層を増やすことによってダンジョンは10階層まで成長した。10階層というキリの良い数字なので、9階層から降りた先にある部屋に居住区への入り口を守るボスを配置することにした。無限に出没する魔物では無く、1体きりの魔物を生み出したり喚び出したりしてボスとするのだ。

 100万ポイントを1体の魔物を生み出すために全て費やして、ノーライフキングを配置する。豪奢なローブを羽織り王冠を頭に抱いた骸骨状の魔物が姿を見せる。全身から濃密な死の気配を醸し出すその威容はまさにアンデッドの王者の名に相応しい。

 折角なので端数のポイントを使用して彼に相応しい玉座をボス部屋に追加で設置することにした。

 ……これで居住区の入り口を隠し扉にしておけば、ここまで辿り着く猛者が居ても彼がこのダンジョンの主だと勘違いしてくれるかも知れない。


 さて、これで漸くダンジョンとしての体裁が整った。勿論まだまだ強化はするつもりだが、現時点でもある程度は侵入者に対応出来るだろう。

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― 新着の感想 ―
高レベル非殺傷ダンジョンって、パワーレベリングに最適だな。 つーか、んな設定にしてたら冒険者で溢れるぞ?
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