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イシスの記憶 3

作者:葛城 炯
私はイシス
 宇宙移民船カルネアデスは順調に航行している。
 中型宇宙戦艦アルテミスの中に収まった今となっては、カルネアデスという船名を名乗るべきかどうかは些か疑問だ。
 正確には艦名はアルテミスでカルネアデスはアルテミスに輸送されている荷物と表現すべきではないだろうか?
『いいのです。アルテミスは今やカルネアデスの防御と輸送を仰せつかっている護衛艦なのですから。航行しているのはカルネアデスです』
 奇妙な論理だとも思う。
 だが、戦闘艦アルテミスのインターフェイス端末でもある対人戦闘用メイド型アンドロイドのルナの申し出を有り難く受けることにする。
 1年前にアルテミスの中に収まってからの航行は順調だ。
 目的地エデン8281に到着するまでに必要な時間は後42年ほどだったのが、1年後の今は後35年ほどと推定されている。
 戦闘艦アルテミスの空間跳躍機能はかなりのパワーダウン改造を施しても移民船カルネアデスの10倍以上の能力がある。
 玉に瑕なのは戦闘艦アルテミスの船体が大きいため、迂回した航路を取らなければならないことだろう。
 それでも行程は大幅に短縮されている。
 感謝すべきだ。

 私は私の分身であるインターフェイスアンドロイドを彼女が眠る凍結カプセルの横に座らせている。
『空間跳躍を終了しました。護衛艦アルテミス、収納されているカルネアデス、共に異常はありません。目的地エデン8281への到着は……後』
『後、最短で10年、最長で33年と推定されます』
 カプセルを挟むように座っている対人戦闘用メイド型アンドロイドのルナが私の計算を補い、彼女に音声で告げた。
『ありがとう。ルナ』
『どう致しまして。イシス様、私の演算にミスはありませんでしたでしょうか?』
 戦闘艦であるアルテミスの空間移動計算は素早い。移民船カルネアデスにはのんびりとした移動速度に合わせた計算能力しか搭載されてはいない。
 違いがあるとすればアルテミスは短距離演算のプログラムしか搭載されていない事だろう。
 カルネアデスに搭載されているプログラムは長距離移動用。
『……星間ガス流の流速を考慮すれば、最短で約11年、最長で35年と推定されますが……データどおりの密度と流速かどうかは跳躍してみないと解りません。アナタの演算結果と私の演算結果の差は誤差の範囲ですね』
 私の言葉にルナは恭しく頭を下げた。

 私達の旅は順調だ。
 今は……順調すぎるほどに。
『イシス様。1つ疑問があるのですが』
 ルナは恐る恐るとした表情を作りながら尋ねてきた。
 私はその疑問を予測しながらも視線をカプセル内の彼女に向けたままにしていた。
『なんでしょう? 何なりと訊いてください』
 船体や航路のデータではないことだけは確かだ。
 それらは既に飽きるほどに情報を交換している。
『実は……この方は何故に亡くなられたのでしょうか?』
 やはり。
 私は目蓋を閉じた。
 記憶メモリーに再現されるのは彼女の笑顔。

 シミュレーションされた彼女は私に囁いた。優しく。
「あーあ。ほら。やっぱり聞かれちまっただろ? いいから、さっさと答えなよ。私になんか遠慮しないで」
 シミュレーション結果が正しいかどうかは解らない。
 だが……数度、他の言葉と表現を再計算しても同じ意味が再現される。
 そう。
 彼女は自分のことには無頓着だった。
 いや、無頓着であろうとしていたのかも知れない。

『解りました。答えましょう。あれは……』
 あれは……彼女がふとした出来事アクシデントから目覚めてしまって10年後のことだった。


「なんだい? イシス。また廃船を見つけたのかい?」
 ブリッジに彼女の声が響く。
 呆れたような声。だが、瞳には好奇心が輝いていた。
『ええ。型式名フロンティア1890。古いタイプの移民調査船です』
「フロンティア? 随分と骨董品だね」
 この船カルネアデス・シリーズよりも古い船。
 星系調査と移民を兼用していた時代の船だ。
「そんな古いんじゃ、使えそうな機械は何も無さそうだね」
 否定しながらも彼女は食い入るようにスクリーンに映る船を見ている。
 彗星に不時着したような形でひしゃげた船。水と単純炭化水素化合物の氷の粒の塊の表面に船はあった。
 一度も星系に囚われたコトがないことを示す白い表面に埋もれた姿は雪原にぽつんと置き去られたような箱橇のようだ。
『昔は箱船と呼ばれていたそうですが……見た目以上の頑丈さを誇っていたとか?』
「ああ。行ったっきり帰って来れないことを覚悟で飛び出していった科学者と世捨て人達の箱船さ。ま、そんなんでも幾つかの星系を開拓して……いまの銀河中央政府の礎となったんだからね。バカにはできないよ」
 初期の空間跳躍装置は内蔵していた。
 しかし、空間跳躍終了時の危険回避再跳躍装置、つまりは彗星や微惑星などを回避して微調整する機能はなかった。
「ま、跳躍に失敗したんだろうね。跳躍した先に彗星があって……そのまま飛び込んだのだろうさ」
 危険と隣り合わせの空間跳躍。
 空間跳躍地点に彗星等が存在していた場合、今では異次元存在確率演算により回避することができる。それでも無駄な制御によりエネルギーを消耗しないように暗黒星雲などを回避するのは今も昔も同じ。
 しかし当時はどんな迂回路を取っていたとしても行程全体の成功確率は1/2に帰着していたはずだ。

「一か八かの空間跳躍。生きるも死ぬも同じ宇宙そらなら本望さ。……なんて詩もあったね」
『そんな詩があったのですか?』
「ああ。宇宙飛行士達の詩だよ。空間跳躍装置開発時の詩。ま、実用化されても不安は残るさ。そんなこんなで不安を消せない宇宙旅行者達が口ずさんでいたよ」
 私の記憶メモリーにその詩を聞いた時の彼女の顔がシミュレートされた。
 不思議そうに口ずさんだ人を見上げる姿。何故か随分と幼い彼女が彼女の母親に手を引かれて宇宙空港を歩く姿が。
「何か随分楽しそうだけど?」
 彼女が私を睨んでいた。
『いえ。失礼ながらその詩を聞かれたのは……いつ頃ですか?』
「アタシが? その詩を? んー。ママと最初の旅をした時だから……ま、子供の頃だね」
 彼女から彼女の父親の話が出て来たことはない。
 たぶんそれは「最初の旅」の前の記憶なのだろう。
「またなんか変なことを想像していないかい?」
 彼女の視線の鋭さが重くなる。針から釘へと変ったかのように。
『いいえ。なにも。それで如何致します? 通り過ぎますか?』
「イーシースー?」
 一音を長く伸ばす時は良からぬコトを考えている時だ。と彼女は自分で説明していた。
「探検するに決まっているだろ? 大したモノが無くても水とか酸素ボンベとかはあるだろうからね?」
 私は小首を傾げ呆れる仕草をしてから同意した。
『了解しました。探検に赴きましょう』


 シャトルで彼女は落ち着かない様子だった。
『如何されましたか?』
 彼女は自分の身体を両腕で抱きかかえていた。
『機密服の温度調節に不調でも?』
 センサーからは異常はないとシグナルが返ってきている。
「いいや。なんか怖いんだよ」
『怖い?』
 私は過去のデータを再生した。
 彼女がその単語を発したことは……あまりない。
 そして発した時は元気な声だった。
 今はか細い声だ。
「アタシだって怖いモノがあるんだよっ! オバケとか幽霊とかゾンビとか……」
『オバケと幽霊は同一です。そしてゾンビも幽霊と同様存在を確認されたことはありません』
 私の声に彼女は軽く睨んでから笑った。
「ま、そうなんだけどさ。しかし、久々にアンタを機械だと認識したよ」
『? 私は機械以外の何かであったことはありませんが?』
 彼女は笑った。大きな声で。
「アンタもそんなふうに冗句でアタシを笑わせるなんて上達したね」
 私は冗句を言った記憶がない。
 私の状況を確認しただけだ。
「ははは。人間の感情なんてそんなモノさ。また1つ賢くなったね?」
 たぶん……彼女は自分の感情を持て余していたのではないだろうか。
 箱船の中にあるモノを推察し、そして直面した時のことを考えて……
 ……混乱していたのだろう。

 箱船の中にいたのは……男女それぞれ46名、計92名の遺体。
 旧式の凍結睡眠カプセルの中で息絶えていた。

 殆どのカプセルが不時着の衝撃で破損し、運良く残ったカプセルも制御の電源が失われ……凍結睡眠カプセルは最後の仕事をしてから停止していた。
 すなわち「凍結睡眠者 死亡判定 蘇生不可能」と表示したまま。

 彼女はそれらをカルネアデスに移送するように指示した。
「何処へ向かっていたか知らないけど……やっぱり、人が生活している星に埋めてあげたいからね」
 彼女の指示を私は否定しない。
「ま、これもカルネアデスの搭乗人員に余裕がありすぎるからできることだけどね」
 宇宙移民船カルネアデスの最大搭乗人員数は1万人。
 実際に乗っているのは彼女を含めて5千人。
 元々が鉱石運搬船を元に再設計した船故に搭載貨物容量にも随分と余裕がある。
 カルネアデスは荷物を積まなければ100万人分のカプセルを搭載できる。

『この船の搭載容量も大きいですね』
 ブリッジでバッテリーを繋いで復活させた制御コンピューターのデータを参照していた私は呟いた。
「何人だい?」
『最大1000人。あ……』
「どうした?」

 私はパンドラの筺を開けてしまっていた。

『貨物室に……貨物室としている部屋に未使用の凍結睡眠カプセルと必要備品が……』
 その時、彼女は……表情を失っていた。

 たぶん、復路で使うつもりだったのだろう。凍結睡眠カプセルは数多くあった。
 しかしそれらも不時着の衝撃で殆どが壊れていた。

 だが……

 壊れていないカプセルが数個。そして必要な薬剤が10セット在った。


『如何致しましょうか?』
 箱船から遺体と資材を回収し、再び航行を始めたカルネアデスのブリッジで私は彼女に尋ねた。
「如何も何もあったモノじゃない。眠った方が良いんだろうけどさ」
 彼女は悩んでいた。
「よりによって凍結睡眠……蘇生確率が低い方法なんだよ」
 彼女は無表情のまま呟いた。
 冷凍睡眠に比べて凍結睡眠は蘇生確率が低い。
 冷凍睡眠の蘇生確率を90%とすれば凍結睡眠は60%程度。
「しかも……アタシは一度凍結睡眠しているからね」
 凍結睡眠は細胞へのダメージが大きい。連続して行うことは大幅な確率の低下となる。
『医師の……診断結果は? 以前の凍結睡眠終了時に診察を受けられたのでしょう?』
「ダメージ率75%。凍結睡眠は二度としないで下さい。って、言われたよっ!」
 彼女が生まれたであろう時代は既に冷凍睡眠であったはずだ。
 しかし凍結睡眠をした。それは……
「くそっ! あのオンボロ船が事故さえ起こさなかったらっ!」
 両手でブリッジの机を叩いた。

 冷凍睡眠時に何らかのアクシデントが起きた場合、凍結睡眠方法へ移行する装置が使われていた時代があった。
 最低限の蘇生の可能性を残すための措置。
 だが、蘇生してもダメージが大きく、そして結果としての蘇生率は冷凍睡眠のままであった時と大差がなかったため、今では冷凍睡眠のままとなっている。

『しかし……眠らなかったら』
 私の言葉を彼女は手で制した。
「解ってる。アタシは娘の笑顔を見ることは絶対にない。だけど……」
 彼女は深呼吸した。何度も。
「……アタシが眠ったまま永遠に目覚めない場合でも娘の笑顔を見ることは適わない」

 彼女の人生。
 選択するのは彼女自身だ。

「アタシは……今は決断できない」
 彼女はブリッジを去ろうとし……立ち止まった。
「イシス。アンタが羨ましいよ」
 私は……何も言葉を返せなかった。

 彼女は俯いて……謝罪してくれた。
「……ごめん。気にしないで」
 そして小さく呟いた。
「踏ん切りがついたら……頼むよ」
 私は黙って頭を下げた。
 その時……私にできるのはそれだけだったから。


『それから……どうされたのです?』
 ルナは静かに先を促した。
 それで私は長い間、言葉を発していないことに気づいた。
『それからの彼女は陽気でした。まるで何事もなかったかのように明るく振る舞われていました。たぶん……自分の将来の選択肢が2つあることを忘れたかったのでしょう』

 1つは時間と共に人生を終える。
 もう一つは時間を止めて蘇生されることを願う。ほんの僅かな確率で。

 どちらも過酷だ。

 それでも彼女は選択した。


「イシス。やっぱ、眠ることにしたよ」
 彼女は明るく私に告げた。
『宜しいのですか?』
「ん。このまま起きていても娘には絶対会えないからね。物凄く低確率、0に近くても0ではない方に賭けるさ」
 彼女の笑顔は清々しかった。
『解りました。では手配が済みましたら御連絡します』
「イシス? 少しは残念そうにしてくれないかな? アンタの先生が眠ったまま起きてこないのかも知れないんだからさ?」
『私も……』
 私は私が言おうとしていた言葉を再確認した。私が表現したい言葉と私が伝えたいコトが完全に合致しているかを。
『私も目覚める時をお待ちしています。その時、私は多少、歳を取っているかも知れませんがお許し下さい』
 彼女は笑った。
 長い間笑った。
 アタシはこんな風に笑うんだよと言わんばかりに。
「ははは。んじゃ、トウリョウとボウシン達にアタシが眠っている間の作業手順を再確認してくるわ。あと……娘の誕生日プレゼントを作ってくる」
 プレゼントはイチゴの蜂蜜漬け。
 彼女は9年分のプレゼントを作っていた。
「プレゼントを作ったら……頼むね」
 10年目のプレゼントを作ってから眠りにつく。それが彼女の予定だった。


『それで……眠られたのですか?』
 ルナは凍結カプセルの中を覗き込んだ。
 彼女の顔は確かに眠っているかのよう。
『いえ。……その時に事故がありました。私の……ミスです』


 その時、カルネアデスは暗黒星雲の近くを調査船ランス01−21型から手に入れた遮蔽シールドを使い、短い距離を空間跳躍していた。
 遮蔽シールドを使えば、暗黒星雲のような場所でも航行できる。しかし、遮蔽シールドを使うコトはエネルギーの消耗を意味する。
 近道をすることで余るエネルギーと、消耗するエネルギーを計算しながら航行していた。

 しかし……

『あの時、近距離の空間跳躍を終え、周囲に障害物となる彗星等がないことを確認。遮蔽シールドの出力を落としました。その時に……』

 事故が起きた。
 小さな金属質天体……たった10cm程度の金属質の塊がカルネアデスに衝突した。

『もう少しだけ……遮蔽シールド装置を稼働していたら防げた事故でした』
『でもそれは……結果論では無いでしょうか?』
『論理は問題ではありません。単なる事実と事実への評価です』
 私の言葉は冷たい。
 冷たい言葉で表現するのは過ぎてしまったことだからだ。
『ソレは彼女が居たカーゴ・ファームと隣の水を保管していたカーゴルームを貫通。カルネアデスのカーゴルームを2つ、少しだけ破壊して飛び去っていきました』
 ルナにはこの説明だけで充分だった。
 口を両手で覆い、私を見つめている。
 沈黙が私を責めているように感じ、言葉を続けた。
『私達が到着した時、彼女は氷に包まれていました。真空と化したクローバー畑でミツバチとクローバーの花と一緒に』
『氷に?』
『ええ。隣のカーゴルームには水がありました。遮蔽シールド装置へのエネルギー補給のためにそのカーゴルームの温度管理を止めていたのです。凍っても問題はありませんから。結果として水は過冷却状態で液体のままでした。そして彼女の居たカーゴルームへ流れ、過冷却状態だった水は彼女を包んで凍りついたのです』
 ルナは沈黙した。
 それがどれほどの確率だったのかを計算するためだろうか?
『そんな有り得ないほどの確率のコトが……』
『ですが、事実です』
 私は視線をルナから彼女へと移した。
 カプセルの中の彼女は静かに眠っているようだ。
『死因としては真空による窒息死なのか、過冷却水による溺死、若しくは凍死なのかは解りません。私が確認できたのは生命活動を停止している彼女だけでしたから』
 ルナは改めてカプセルを見ている。
『私達には死因が不明な彼女を蘇生させる技術はありません。従って……』
『従って?』
『私達はある賭けをすることとなりました』
『賭けを?』

 記憶メモリーには彼女の言葉が再現されている。
「イシス。アンタは賭け事禁止。バクチはアタシが判断する」
 それでも私は賭けることにした。

『私は賭けることにしました。彼女の遺体をそのまま凍結睡眠カプセルに入れ、凍結睡眠プログラムを実行したのです』
 ルナの視線はカプセルの端を見ている。
 そこには「凍結睡眠者 死亡判定 蘇生不可能」と表示されている。
 だが……カプセルには動力が供給されている。
 別の端には「凍結睡眠 続行中」と表示されている。
『溺死した場合、心肺停止状態から数時間経過しても蘇生した例があります。冷凍睡眠を経験しダメージ率75%と診断された彼女を凍結から解凍した場合に蘇生できたとしても再び凍結睡眠に就くことは不可能と判断しました。以上のことから凍りついた彼女をそのまま凍結睡眠させたのです』
『イシス様……』
 ルナは次の言葉を失ったようだ。しかし、別の言葉を見つけて音声にした。
『では……彼女が蘇生できる確率は?』

 その問いへの答えは……機械では0と答えるだろう。
 だが……私は彼女の生徒だ。彼女に教わった表現で答えるべきだろう。
『限りなく0に近い。だが決して0ではない』

 記憶メモリーで彼女が笑っている。
「そうそう。そういう風に答えるんだよ。アタシは人間なんだからさ」

『……エデン8281に辿り着くのが楽しみですね』
 ルナはそういって微笑んだ。
『そうです。その時に全ての答えが出ます。彼女の指示が正しいのか。そして彼女の指示を私達が正確に行動していたのかが』
 私の答えをルナは黙って聞いていた。
 微笑みながら。
 そして立ち上がった。
『では私はブリッジで行程を再確認してきます。もっと別に近道がないのか。そして安全なルートがないのかを』
 宇宙移民船カルネアデスは護衛艦アルテミスの中。
 カルネアデスから見れば分厚い戦闘艦の装甲の中。
 あの時のような事故は起こりえないだろう。
『それでも……』
 ルナは立ち止まってこう答えた。
『そのような事故が起こる可能性は0に近似されます。しかし0ではありません』
 賢いアンドロイドだ。
 彼女の生徒となっていたら……彼女は私を相手にするよりももっと楽しんでいたかも知れない。
『私は……』
 ルナが私を見つめている。
『私はイシス様から教わるコトが楽しいです』

 私はなんと答えればよいのだろう?
 記憶の中の彼女は……ただ呆れる仕草をしていた。

『では失礼します』
 恭しく頭を下げてルナはブリッジへと向かった。


 残った私は……
 彼女への報告を続けた。

『宇宙移民船カルネアデスは護衛艦アルテミスに護られて航行しています。目的地エデン8281までは最短で10年、最長で35年と推定。ポテトの栽培は概ね順調……』

 私はイシス。
 この船、カルネアデス729−31415926535を統括制御するコンピューター。

 ある植物学者の記憶と共に旅をしている。
 ただの機械。


 この作の原案は「カルネアデスに花束を」になります。
 キャラは「101人の瑠璃」の末裔……かも知れません。
 空想科学祭2009 参加作品

 空想科学祭2009参加作品


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