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  烈風のアヤキ 作者:海乃
一章 ~龍の神子~
『始まりの終わり』
「それじゃぁ・・・」

「あぁ。若い女性、大柄な男、それと中年の男が見つかり現在各国で保護されているという状況だ。私からも事情を少し話した上で書状を3国に送った」


俺と一条さんは顔を見合わせて喜びの顔を浮かべた

良かった。少なくともあと最低3人は無事なようだ


「私はこの件で一度精霊台を保持する国で集まって会談しようと思ったのだが他国にもいろいろと事情が在るらしくてな。3国のうち2国しか色よい返事を返してくれなかった。が、それでも無事が確認できただけでも上出来だ」


とりあえず無事が分かったことが唯一の成果だとアルフレアさんは言っていたがそんなことは無いと反論した


「俺たちのためにそこまでしてくれるなんて思ってませんでした。本当にありがとうございます」


深々と感謝の念を込めて何度もお辞儀する一条さんと俺


「気にするな。お前達にしてみれば災難続きだったのだ。突然異世界に飛ばされて頼るものが無いというのも辛いだろうからな」

「いえ、頼るものならできました」


隣にいる一条さんが間髪入れずに即答した

いや、ちょ・・・

何故俺をニッコリと見ているんだい一条さん?


「そ、そうか。まぁいい。とりあえずその辺のことは我々上の人間に任せてくれ。あまり自らの立場が上であることを強調したくは無いのだが・・・」


彼女のような人が居てくれて本当に助かっている

俺たちだけなら絶対にこういった国同士の関わりを持てなくて歩いて各地を旅する羽目になっていたかもしれない


「いえいえ、こういうときこそ貴方という人と知り合いになれていて本当に助かってます」

「何せ王女ですもんね」

「まぁあまり難しいことは私の一存では決められないことも在るが、仮にも私は第一王女である程度の権力はすでに握っているからな。私の親はもう引退間近でいろいろな事を私に任せるようになっているからな」


あれ?フフフフフと笑うアルフレアの背後にドス黒いオーラが見えるのは気のせいか?


「気のせいだよ」

「!?」


一条さんに心読まれた

何この人達!?


「兎に角、それは置いておいてとりあえず話を伺う限り相当いろいろ合ったらしいな」

「え、えぇ、まぁ」


なんだか龍にさらわれたことよりも壮絶な事に巻き込まれた・・・と思う

龍にさらわれた時はこれ以上驚くことは無いだろうとすら思う驚愕の事件だったのだが、軽くそれを上回った自信がある

それに何せこの手で龍を一匹殺してるからな・・・

そして魂だけのもう一匹は今俺の腰に居るけれども、言葉も聞こえないし俺の声も届いているかどうか

本当に魂が宿ったのか実感があまりわかない

だけど持っているだけで、なんだか落ち着くこと、黒龍を倒したときに出たあの魔法

どうしても完全に宿っていないとは言えないのが今の微妙な現状


「あまり無茶はしないでくれよ。守る方も大変だ。あいつの苦労が伺えるよ全く」

「あ、ははは・・・」


返す言葉もありません。はい

あいつというのはレイルさんの事だろうか


「一段落ついたことだし、これからはどうするのだ?やはりアルデリアへ戻るか?」

「あー、はい。一応そのつもりですけど」

「そうか。ならば何も言うことは在るまい。出立の予定は?」

「えーっと、数日後じゃないかなぁ。ツキの準備も在るし」


俺はもうしばらくしたらツキと一緒にこの国を出る予定である

ツキもクスリを早く持ち帰りたいだろうし俺も一度戻っていろいろと報告したりすることとかある


「ならばついでにこれを持って行ってくれないか?」


アルフレアは一枚の紙筒を取り出した

俺はそれを受け取ったが中身を見るような真似はしない


「それをセレシア、いや、ファルアナリアさんに渡してくれ」

「これは?って聞かない方が良いですよね」

「くれぐれも中身を覗くんじゃないぞ。見たら死ぬぞ」

「死ぬの!?」

「まぁ大事なものだししっかりと頼むぞ。中身はお主も後々分かるはずだ」

「分かりました。しっかりと届けます」


俺はその書状をしっかりと手にして覗かずと届ける事を言うと、隣にいる一条さんの顔を見た


「一条さんはどうするんですか?これからもここにとどまるんですか?」


一条さんは突然話を振られて驚きつつも考えを口にする


「そうね・・・。私は・・・・・今はとりあえずここに残ろうと思う。アーヤんのおかげでちょっとは元気になれたし、今度は私の番かなぁなんて」

「私の番?」

「そ。近いうちにえっとー、そう、湊千尋ちゃんのところに行ってみようかなーと画策中」

「あの小一の?」

「そそ。あの子も一度あってどうするか聞いておきたいしね。いつまでも一人にさせて置くわけにも行かないでしょ?」

「そうですね」

「せっかく会えたっていうのにまた離れることになるけど・・・・いいよね?」

「俺は大丈夫ですよ。一条さんこそ寂しかったりするんじゃないですか?」

「寂しいわよ〜。もう、夜な夜なベッドですすり泣いてやるわ!」


そう言いながら彼女の顔は笑っていた

せっかく遠い場所から予想外の再会を果たして、こうして出会えた

また離れることに、寂しくないと言われれば嘘になる

けれど、気がつけば俺は今はもっといろんなものを見たくなっていた

別世界

何だろうな。この世界に住み続けたい、という感じじゃなくて、こう別の・・・

言葉で例えるならば、「知りたい。見たい。感じたい」

俺はこの世界に惹かれている、というのが正しいのだろうか

この気持ち・・・そう、オラわくわくすっぞ!!って感じだ

俺は世界に興味を持ち、惹かれ、世界の広さを知った

これまでは一つの県の中でくすぶっていた己が爆発したかのようだ


「帰る方法を探すにしても一国でうろうろするよりも手分けしてバラバラの場所から手がかりを探すってのも一つですしね」

「あぁ。・・・・・私はな」


一条さんがうつむいて話し出した


「不安だったよ。内心怖くて怖くてしょうがなかった」


俺もアルフレアさんもその言葉を静かに聞いて、割り込むような真似はしなかった


「でもな、なんだか今では世界が変わったように感じられる。恐怖も、不安も感じていない」


それはきっと一条さんの心の底からの本音のように俺は感じられた


「だから、私は平気だ。だからもう、大丈夫だ」


あぁ、そうか。と俺は思った

彼女の言葉は俺に向けて放たれたものなのだと

一度弱みを見せてしまった

それが逆に俺の枷になると思ったのだろう

だが彼女は言った。もう自分の支えは出来た。だからもう、大丈夫だと

だから俺はその言葉にこう返した


「わかりました」


俺は思い残すこと無く、この地を後にすることを完全に決意した










数日後

目覚めはすこぶる良かった

なんだか清々しいようでいて、そして若干筋肉痛だったりする

いやまぁここしばらくは運動しっぱなしだったわけだしね。登山とか龍退治とか

いろいろあったこの地ももう少しでおさらば、となる

城下でやっていた店達は夜のうちに店を畳んで今ではすっかりいつもの朝の静かな町並みとなっている

そんな城下を俺はバルコニーのような場所から見下ろした

広いな。

これだけ科学や文明が発達していないこの世界でも、こんな巨大な建造物や、これほどまでに大きな町並みが作れるということに俺は静かな驚きを覚える


「凄い・・・なぁ」


人間って、どれだけ凄い生き物なのだろうか

可能性の果てが、今の俺には全く見えない

人間の限界はいったい何処なのか


「何してるの?」

「うぉ!?」


背後から突如話しかけられて俺はびくりと反応してしまう

振り向くと其処には寝衣姿のツキがいた


「おはようツキ」

「おはよう。何してるの?」


2度目の問いかけ


「いやちょっと人間のすごさを実感してただけ」

「??」


俺は再び振り返って城下を見下ろした


「俺さ、別世界の人間だろ。それなのにやっぱり人間は何処の世界でも同じなんだなぁってさ」

「どういうこと?」

「ほら、人間って家を作って家庭を作って子供を育てて、で、その家を造ったり料理を作ったり、技術と知能を使って世界をまわしてる。それって凄いことだよなーって思ってたりしただけ」

「よくわかんないな」

「まぁ俺にも何言ってるかよく分からん!でも、さ。これ見てよ。この街。王都リッドクルス・・・だっけ?凄いな。人間がこういうものを作れるって」


この下に広がるそれを俺は左手でサッとなでるようにしてツキに見せた

ツキも横までやって来て城下を見下ろした

その横顔を見たけど、そこにはいつもと変わらぬツキの無表情な顔があっただけだった


「こんなでっかいもの、ちっぽけな人間が作ったって思うと凄いよな。あのさ、恨むなよ。俺等の世界じゃこれよりも本当にでっかいビルとか、あ、建物の事ね。それを同じ人間が作ったものって思うと、こっちの世界がなんだか劣ってるように感じてしまうこともあるんだ。文明も発達していないし」


ツキが目線を城下から俺へと移した

自分の世界が劣っていると言われた事に腹を立てたか、それとも言った俺に腹を立てたのか

はたまた腹を立てているのかどうかすら今の俺では無表情のツキの顔からは読み取れない


「だけど、俺はこの世界が好きだ。劣ってるっていっても実際はそうじゃない。あちらの世界にあるものがこちらの世界にないだけでそれを劣っているとか言うのは間違ってる。こっちの世界には向こうにはない魔法っていうチョー便利なものとかあるしね」


ただ、そう感じてしまうだけ

この世界は何一つとして劣っていない

むしろ良い世界だ

自然が多く、人々が生き生きとしている

まるでみんながみんな、あの小さかった頃の夏休みを思い起こさせるような目をしている

自分が勝手に、ただそう感じているだけ


「一概にどっちが凄いとか偉いとか優秀か劣等かって言うのは判断できる事じゃないし、したらいけない事だと思ってる。でも、その世界に住む人間は変わらないなぁって感じてたんだ。ここからこの景色を見たときに」

「・・・・そう」


それだけを言ってツキは部屋へと戻っていった

着替えをするのか、二度寝をするのか

よく分からなかったけど戻るツキの後ろ姿を見て、着替えをするツキの姿を脳内に思い浮かべた時点で俺は自分を思いっきり殴った

所詮自分もそこら辺の男なのかぁ、と思って頬をさすりながら力を込めすぎたことを後悔した


「痛てぇ・・・・」








「それじゃぁ、ありがとうございました」

「うん。また合おうね!」

「あぁ。またな!」


また合えると思うから、彼女はさようならを使わなかった

俺もそれに答えた

そして一条さんにツキを襲わないようにと釘を刺された

俺にそんな度胸も勇気も無いよと全否定した。そりゃもう全力で全否定

そしてアルフレアさんと意外にもその母オリシアさんも見送りに来てくださった

その後ろにはレイルさんとシェルディさん

セルディアさんは最初に出会った場所でやっていた遠征へと戻っていったらしい

オリシアさんとは合う機会は無かったが一目で彼女がアルフレアさんの母だと言うことが分かった

同じ髪の色に目元も若干似ているように感じた

やっぱり親と子は似るんだなぁと思いながら俺は手を振った

一条さんはもう少ししたらリーナへと向かうらしい

其処にいる小一の湊千尋ちゃんに合うのだとか

俺も出来れば寄ってみたかったがツキはクスリを運んでいるからあまり時間は取れないらしい

それにこれから旅を共にする渡商人の集団はファンダーヌを経由しないでアルデリアに行く集団であるためそれもかなわない

俺と一条さんは最後に握手を交わした

柔らかく、繊細な感じがした

たった一度握手しただけで俺はなんだか力をもらえたような気がした

彼女の目はもう、弱さを感じさせてはいなかった

しっかりと俺に語りかけるような目で俺の瞳を見つめていた

その瞳には、彼女の希望の支えが映っていた

もそれに答えて、再会を約束した

そして俺とツキはアルデリアへと向かって荷馬車を走らせた


「またね・・・か」


荷馬車はゴトゴト揺れて道を行く―――




















また、いつか会えるだろう

その時までに、果たした約束を果たせるようになっていられるように

きっと、また出会うそのときが訪れることを祈って

この地に別れを告げよう

少年は決意をしました

次に彼を待つ出来事は?

さぁさ行ってみようかお次の話

物語はまだまだ続く

まだここは始まりにすぎない

これから起こる大きな出来事の、ほんの序章なのである




 
第一章 龍の神子 これにて閉幕
これでとりあえず第一章、龍の神子編を終わりたいと思います。なんか微妙で曖昧な表現とかも多くて見苦しかったりする場面が多々ありましたがまぁ気にせず突っ走っていきたいなーとw(気にしろや)正直章名になっていた龍の神子の話に乗れたような乗れなかったような話になっていたり居なかったり・・・。(伏線がどれだけ出来ることか)作者は正直作った話を見返したりしなかったりと矛盾とか多々出てくるかも知れませんがそう言うのがあったら是非ご一報を(いっぱい来そうで恐い・・・)。設定とかはほとんどうろ覚えで書いてます!!(断言)ちまちまと読み返して変なところとかあったら直して行きたいですが正直乗り気になるときしかそう言うことはしないんですよね。面倒くさがり屋とはこういう人のことを言うんですよね。はい。すいません。そうこうして長かったような短かったような微妙な感じで一章終わりました。これも皆様の応援あってのものです!第2章、『アクリス武闘大会』もよろしくお願いします!


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