できうる限り、がんばったつもりです。
原作ファンの方、こんなもんで許してください。
「最近、エコだとかなんだとかよく耳にするが、俺はそういうのは大嫌いだね。エアコンの設定温度を控え目にしろ? スーパーの無料レジ袋を有料に? 冗談じゃない。絶対に、俺はレジ袋に金なんか払いたくない! 払いたいと思っている奴なんているのか?」
バンッ!
と、そこで黒板の叩かれる音。
手。
「先日、インターネットを見ていて、こんな内容のブログを発見しました。はっきり言って、騙されています」
そう、クラスのホームルームで発表したのは、糸色望こと、絶望先生だった。
「騙されているって… エコに対する誤った考えとかですか?」
と、そう質問したのは小節あびる。それに絶望先生はこう返す。
「違います!」
「違うって… じゃ、なんです?」と、そう日塔奈美が言う。すると、大声で絶望先生はこう答えた。
「スーパーの無料レジ袋は無料ではありません!」
「何それ? 無料レジ袋が無料じゃないって? どっちなのかはっきりしてよ。」
と、それを聞いて言ったのは、木津千里だった。
「だから、有料なんでしょ?」
と、突っ込みを入れる藤吉晴美。
「……どういう事でしょう?」
静かにあびるがそう質問すると、絶望先生はこう説明をし始めた。
「無料で配られても、レジ袋自体は経費に含まれています。店は、当然、利益を出さなければいけませんから、それは商品の価格に上乗せされます……」
少しの間。
その後で、絶望先生はこう叫んだ。
「……つまり、レジ袋が無料である事によって、我々は本来よりも、高い買い物をさせられているのです! これは、間接的にレジ袋にお金を支払っているのと同じです!
牛乳パック一本買うのに配られるレジ袋の価格を、無理矢理に負担させられるなんて、馬鹿馬鹿しい話だとは思いませんか?」
「思います!」
そう即座に同意を示したのは、大草麻菜実だった。
「主婦にとっては、一円の差が重要。知らず知らずの内に損しているなんて、冗談じゃありません!」
「んー 私もレジ袋を我慢して、それだけ安くなるのなら、その方が良いかな?」
奈美がそう言う。
「よりたくさん美味しいもの買えるしね…」
と、横であびるが呟く。
「もし無駄なレジ袋が配られなくなったら、その分余計なゴミも減りますし、石油も節約できる… 当然、社会全体で考えるのなら、更に得ですね。
税金等の負担が減り、物の値段が安くなります」
常月まといが、絶望先生の後ろでそう続けた。
「いたんですか?」
「ずっと」
「とにかく!
こういう事は非常に多いのです。自分では得だと思っていても、長い目、大きな範囲を見てみると、実は損をしているという事が!」
「偽装を行い、その利益に喜んでも、簡単にばれ、会社の信用がた落ちで、大損したり!」
(あの会社とか、あの会社とか、あの会社とか。
ホワイトカラーの犯罪も含め、ですね)
「公共事業で仕事が入ってくると喜んでも、実はそれは国の借金で、しかも金利までつくので、将来的には却って損だったり!」
(つまりは、子供に借金させて、親が暮らしているようなもの、です)
「インターネットや不正コピーで、無料でゲームや音楽を手に入れて喜んでも、その分ゲーム会社や音楽業界の規模が縮小。楽しいゲームや、音楽が減ってしまったり!」
(ゲームの不正コピーが横行している国では、ゲーム産業はほとんど育っていないのだそうです。収益が少なすぎて、産業として成立しないからですが…)
グワッ
「絶望した! 原作と違って、こんな面白くない連想しか出てこない、作者の貧困な発想力に絶望した!」
あびるが突っ込む。
「違うでしょう」
――やり直し。
「絶望した! 得しているつもりで、実は損をしている社会に絶望した!」
・ネットでの反発を招くような批判→擁護論を刺激して、逆効果
・ネットでの明らかにそこの社員だろ?ってな人の宣伝書き込み→ばればれで炎上。もちろん、逆効果
・ネットでの明らかに公務員だろ?ってな人の無理のある公務員擁護→印象悪くなるから、本当に止めた方が良いですよ?
・一般人が一攫千金を夢見て株→多くの情報を握っている、一部のプロにお金を吸い取られて生活困窮
・仕事を得る為に、低予算で運営を行ない低賃金の慣習を作ってしまった日本初の某アニメ会社→どんなに偉大な人でも、失敗の一つや二つはあるものです
「――合成の誤謬。ね」
そこで教室の扉が開き、そう言葉が響いた。
「智恵先生…」
「合成の誤謬?」と、奈美がそう疑問符を伴った声を上げる。
「一人だけなら適切な行動でも、大勢でそれをやると、不適切な行動になる。そういうのを、合成の誤謬というのよ。
代表的なのは、不景気時のデフレ・スパイラル。企業が得をしようと思って、労働賃金を減らす。ところが、労働者は同時に消費者でもあるので、消費活動を抑制してしまって、企業の収入が減ってしまう。つまり、個々の得をしようとする行動が、全体での損を招くの」
その説明を受けると、絶望先生はこう言った。
「その通りです。例えば、こんな話があります。
ある村に共同の牧草地ができました。一人一人が節度を持って利用していれば、長い間そこを利用できます。しかし、他の人よりも得をしたいが為に皆が利用しまくると、瞬く間に荒地になってしまい、少しの利益しか得られなくなってしまう。
この話の恐ろしい点は、一人だけ不適切な行動を改めても、ほとんど意味がない事でしょうか。その人だけ損をするだけで、結果は変わりません」
間。
目を瞑る絶望先生。
「合成の誤謬。実に、厄介な問題です」
――しかし、そこで声が上がった。
風浦可符香。
「確かに厄介ですね。でも、逆も真なりですよ」
「……逆?」
「はい。個人にとって損だと思える行動でも、全員でやれば得になることがある。これもまた事実です。例えば…」
そこでカフカは教室の窓を開ける。体育館を指し示しながら、
「学校などの、公共施設の屋根。そういう所に、皆でお金を出し合って、太陽電池を設置します。個人にとっては、一見損のように思えますが…」
「全体を観れば、得になると? 一体、どうしてです?」
「分かりませんか? これは、デフレ・スパイラルの逆ですよ。皆がお金を使えば、企業の利益が上がる。企業の利益が上がれば、労働者の給与も増える… 当然、仕事も増えるので、失業者も減ります。言うなれば、インフレ・スパイラルですね。好景気になりますよ」
「ふむ」と、その説明を続けるように、知恵先生が言った。
「なるほど。GDPとは、国内総生産量。太陽電池を生産すれば、当然、国内総生産量も上がる、という訳ね」
「公共施設に設置すれば、それだけ電気料金が浮く。公共施設の電気料金は、税金だから、その分税負担も軽くなりますね。財政難の日本にとっては、良い事です。更に、エネルギー自給率が上がる訳ですから、原油危機対策にもなる」
と、後に言ったのは、まといだった。
「いたんですか?」
「ずっと。……今日、二回目ですよ?」
「なんだかセリフが説明的で、何を目的でこの話を書いたのか、理由がバレバレで、白けるゾ」
関内・マリア・太郎が言った。
「――とにかく、
確かにそれは良い事です。是非とも提言して、この不景気をなんとかしましょう!」
と、絶望先生は宣言した。
――そして。
絶望先生が、新聞を読みながら言う。
「確かに、景気は回復しましたが……」
新聞の見出しには、このように書かれてあった。
“景気回復も、失業問題は顕在”
「何故、まだ失業者がこんなに出るのでしょう?」
カフカが、そこに現れてこう言った。
「一つには、能力のアンマッチですね。例えば、情報技術が求められていたとしても、その技術を労働者が持っているとは限らない。もう一つは、生産効率が上がり過ぎて、まだ労働者が余っている点です」
「ふむ」
と、それを受けて絶望先生は応える。
「しかし、ではどうしましょう? 太陽電池や風力発電の生産も、もうイッパイイッパイです。資源の限界がありますから」
その言葉に、カフカは笑って言った。
「――大丈夫です。
既に、対策は執っていますから」
「対策?」
それから、しばらくが過ぎた。
ある日、絶望先生は、宿直室に帰ってきて、その扉を開けた。すると、いきなり小森霧がこう言う。
「開けないでよ」
「はい? どうしてです?」
少し慌てる絶望先生。それに、霧はこう返す。
「違うよ、先生。扉を開けたら、こう言わなくちゃいけないって仕事を貰ったんだよ」
「仕事? 何ですか?それ」
それから更に奥の座敷へと入る為、絶望先生は襖を開けた。すると今度は、
「すいません! 私のような者が隠れていて、すいません!」
と、いきなりそんな声が。そこには、加賀愛がいた。
「どうしたのですか? 加賀さん」
「すいません!すいません! このように言わなくてはいけない仕事を貰いまして」
「また、仕事?」
「……一体、何なんでしょう?」
首を傾げながら、絶望先生は道を歩いていた。すると、そこに晴美が通りかかる。
「どうしたんですか?先生」
「いえ、小森さんと、加賀さんが妙な仕事を貰ったらしくて、ですね」
「ああ、仕事なら私も貰いましたよ。ウェブ漫画家です」
「あなたも?」
「はい。各人の能力に合わせて、他にも、“ゲッツ!”って言う仕事とか、“間違いない”って言う仕事とか、“残念!”って言う仕事とか、色々あるみたいですが」
それを聞いて、絶望先生は眉をひそめる。
「何が起きているのですか?」
「――失業対策ですよ」
そこに声が。
見ると、カフカが立っている。
「失業対策?」
「どんな事でも、お金を支払えば、それは仕事になり得ます。その能力に合わせた仕事を作って、それを仕事にすれば能力のアンマッチは発生しません。また、言葉を喋れば良いとか、ウェブの漫画家とかなら、資源枯渇の問題もクリアできます」
「なんですかそれは?!
なら、例えば、“モケーッ”って叫ぶのを仕事にするとか、そんなんでも有りだって事ですか?!」
「はい。そこにお金の循環が発生するのなら、何でも仕事になり得ますよ」
「例え失業問題が解決できても、そんな社会は、そんな社会で間違っています!」
数ヵ月後。
「モケーッ!」
「んんー いい“モケーッ”だ。これなら、お金を払ってもいい」
……案外、ウケていた。
「マァ、世の中に、大幅に一発お笑い芸人の割合が増えた感じダナ」
と、マリアが一言。
※ 注:作者はお笑い芸人が大好きです
……もしも、こんな世の中になったら、自分程度でもプロ作家になれるかもしれない、なんて妄想したのは内緒です。
もう少し、毒が欲しかったかもしれませんね。
作中でカフカが語っている理屈の詳しくは、「ソーシャル・エコロミクス」「通貨循環の視点から」で書いていますんで、もし興味を持たれたら読んでみてください。
と。
作中でもばらしましたが、普段こういった事にも興味ない人に、少しでも知識と関心を持ってもらいたいなと思って書いたものです。
さよなら絶望先生は、人気のあるギャグ漫画で、しかも少年誌なのに社会風刺系でこんな話題も頻繁に出てくるから、うってつけだと思って。もちろん、原作が好きってのもありますが~
独特の作風を少しでも小説で表現できていれば嬉しいです。
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