ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
14.必要なもの
『ハーイ、クールキッド!お久しぶりですね。』

電話口から聞こえるハイテンションな声の持ち主―――ジョディ先生に思わず微笑んだ。

「久しぶりだね。ジョディ先生も元気そうで良かった。」

FBI捜査官、ジョディ・スターリング。
これまでも度々組織の奴らとの対決で、ジョディ先生と協力をしてきた。
同じFBI捜査官の赤井秀一が死んでしまってから、表面上は落ち着きを取り戻してはいたが、内面、悲しみに暮れていたことは知っていた。

『…コナン君が電話をくれたってことは、何かあったのね。』
「ジョディ先生は話が早くて助かるよ。」

さすがはジョディ先生。
全てを言わなくても、すぐに察してくれる。
でなきゃ、FBI捜査官なんて務まらないか…なんて考えて思わず苦笑した。

『コナン君?』

苦笑した雰囲気まで伝わったのだろうか?いぶかしげなジョディ先生の声が響く。
………察しが良すぎるのも問題だな。

「あ、ごめん。何でもないよ。…実はね、協力して欲しいことがあるんだ。」


俺は、昨日、今日と立て続けに起こった出来事を全て話した。

蘭が組織に誘拐されたこと。
灰原宛てに、奴らからのメールが届いたこと。
蘭を助けるために、灰原が組織に戻ったこと。
蘭が無事に発見されたこと。
その蘭はこの数日間の記憶を無くしていて、何があったのか全く覚えていないこと。

…俺達の正体のことについては何も言わなかった。灰原のことに関してはある程度感づいてはいるだろうが、俺のことについてはどこまで知っているのか、イマイチ確信が持てなかったからだ。

『…そう、哀ちゃんが…。やっぱり私達が護衛につくべきだったわね。』
「仕方ないよ。FBIの護衛がついたら、余計に目立っちゃうからね。とにかく、早急に会えないかな?」
『ええ。早く哀ちゃんを助けてあげないとね。…ジェイムズに連絡するわ。』

FBI長官のジェイムズ・ブラックさんに連絡が取れ次第、こちらへ連絡をくれるように頼んで電話を切った。

ふぅっと大きく息をつく。


本当は、静かに連絡待ちをしていられる程の気持ちの余裕はない。
すぐにでもここから駆け出したかった。

こうしている間にも、灰原は危険な目に遭っているのかもしれない…。

そう思うと気は焦るばかりで、じっとしていられなくなる。
しかし、作戦も何もない状態で気持ちだけで突進していったとしても、俺ばかりか灰原までも、更なる危険に晒してしまうだけだろうということは安易に想像できた。
こういう時こそ冷静にならなければならない。

幸いにも、俺には協力してくれる味方がいる。
切り札も用意できた。
それに何より、俺には「灰原を守る」という大事な約束がある。


―――『守って、くれるんでしょ?』


そうさ。俺達は運命共同体。
生きるのも一緒。死ぬのも一緒。…そう言ってたのは灰原だったな。
幼児化なんてありえねー運命を共有し、誰も俺達の間には入り込めない。
…たとえ、それが蘭であっても。

「え…?」

今、俺は何を思った?
何かとんでもないことを思わなかったか?


―――俺達の間を、たとえ蘭でも邪魔されたくない―――


「…ハハ、まさか…。」

俺はずっと蘭だけを見つめてきた。
他の女になんて興味なかったし、いつも蘭が隣にいてくれてたから、蘭以外に目を移すことは必要なかった。
蘭は、すげー良い奴だと思う。
男女分け隔てなく優しいし、困っている人がいれば手を出さずにはいられない。
みんなの人気者で、常に周りに人が集まって来る。
そんな蘭だから惹かれた。
ずっと、俺が守ってやりたいって思ってた。

…だけど。
だけどいつの間にか、灰原のことが気になっていた。
常に冷静沈着なアイツ。
可愛くない物の言い方しか出来ないアイツ。
周囲から一歩引いて、自ら独りになろうとするアイツ。
本当はすごく優しいくせに、それを隠そうとするアイツ。

今まで俺の周りには、灰原みたいなタイプの人間はいなかった。
だからそんな灰原に対して、どう接していけば良いのか分からなかった。
でもいつの間にか、ホントにいつの間にか「素」で接している自分がいて。
蘭には見せることが無かった自分の弱さも、灰原には隠さず晒してきた。
そんな俺に灰原は「仕方ないわね」の一言で、分かりにくい優しさを与えてくれる。
そして、それに癒されている自分がいる。

「あー、そういうことか…。」

何で今まで気付かなかったんだろう。
組織の事とか、解毒剤の事とかそんなことは関係ない。
「灰原を守る」の約束に、そこには特別な理由はない。


―――江戸川コナンには灰原哀が必要―――


ただそれだけ。
ただそれだけなんだけど、一番大切な想い。

「灰原、待ってろよ。」

ならば、取り返さなければならない。
博士の為に、探偵団のみんなの為に、……………そして俺の為に。

「ぜってー連れ戻す。」


明美さん。
俺が灰原を助け出すまで、アイツを見守っててくれよ。
貴女が守りたかった妹は、俺が絶対守り通すから。
明美さんには悪いけど、まだ貴女に会わせるわけにはいかないから。
灰原哀として、宮野志保として、今までたくさん苦しんだ分、これから誰よりも幸せにならなければならないから。


『頼んだわよ。小さな探偵さん。』


最後に聞いた明美さんの声。
それが再び俺の耳に届いた気がした。

今月中に引っ越し+転職の為、今後の投稿が遅れる可能性があります。
投稿できる分は、近日中にやってしまおうとは考えていますが、どこまで更新できるか…(^_^;)
あー、引っ越しめんどくさい…。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。