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6/19前話を一部修正しました。内容に変更はありません。
9.発見―閉ざされた記憶―
「なにぃっ!?蘭君が見つかった?」

捜査一課に響く目暮警部の声。蘭の行方が一向に掴めず焦りの表情を見せていた刑事達の耳に、信じられない内容の声が飛び込んできた。

「……ふむ。杯戸中央病院に運ばれたんだな。それで怪我は?……分かった。すぐにそちらへ向かう。」

電話を切る目暮の元に、話を聞いていた刑事達が一斉に集まって来た。

「警部!蘭ちゃんが見つかったって本当ですか?」
「それで、蘭さんの状態は…?」

早く話を聞きたい佐藤と高木が矢継ぎ早に口を開く。見つかったという安堵感と、行方の手がかりさえ掴めなかった蘭が、あっさりと発見されたという胡散臭さに複雑な表情をしている。

「蘭君は東京近郊の山中で、気を失った状態で発見されたそうだ。特に大きな怪我はないそうだが、念の為に杯戸中央病院へ運ばれたらしい。…まだ目覚めておらんみたいだ。」

集まった刑事達にホッとした表情が広がった。
取りあえず蘭が大した怪我もなく無事に見つかったというのは、不幸中の幸いといったところだろう。
犯人については何の手がかりもないが、蘭が目覚めれば何か分かるかもしれない。

「毛利君に誰か連絡を取ってくれ。佐藤と高木は一緒に病院へ向かうぞ。」








「ん…。」

辺り一面の白い壁。鼻先に広がるツンとした消毒液の匂い。

「蘭、気がついたか?」
「痛いところはない?」

目の前には両親の顔。二人とも泣きそうな顔をしている。

「…お父さん。お母さん。」

どうやらここは病院のようだ。
何だか分からないが、私は二人に心配をかけているらしい。
二人の泣きそうな表情が辛くて、凝り固まった顔を無理矢理動かし笑顔を作った。

「良かった。無事で…。」

お母さんの瞳に涙が光っている。…私は何かしでかしたのだろうか?
必死に思い出そうとするが、頭の中に霧がかかったみたいでうまく思い出せない。

ふと視線を移すと、壁際に目暮警部と佐藤刑事、高木刑事が立っているのが見えた。3人ともホッとした表情を浮かべている。

「…蘭君。身体の調子はどうかね?」
「特に…、悪くはないですけど…。」

目暮警部にそう返しながら、ゆっくりと起き上がる。
蘭、大丈夫?とお母さんが支えてくれたが、多少身体がだるく感じる以外、別に悪い所はない。

「さっそくだが、君の身に起こったことを我々に話して欲しいんだが。」

さっきまでの微笑んだ表情から一変、真剣な顔をして私を見ている目暮警部。佐藤刑事も高木刑事も仕事の顔をしていた。


………私の身に起こったこと?


「…あの、目暮警部。私の身に起こった事って何のことですか?というか、何で私病院にいるの?」

私の頭の中は?マークでいっぱいだ。

何故自分が病院にいるのか。
何故両親がこんなに心配そうな顔をしているのか。
何故目暮警部が私にそんなことを問うのか。

「もしかして蘭ちゃん、自分の身に何が起こったのか覚えてないの?」

恐る恐るというような感じで佐藤刑事が尋ねてきた。

「…何のことを仰っておられるのか、私にはさっぱり…。」

病室の空気がハッと緊張感に包まれたみたいだった。
どうやら私の身に、何かが起きたということだけは予想できた。


「あの、何が起きたか教えて貰えませんか?」






お父さんや目暮警部に教えて貰って分かったこと。

どうやら、私は昨日の学校帰りから行方不明となっていたらしい。
誘拐されたのではないかということで、目暮警部達が私の行方を探していたが、手がかりが全く掴めなかったそうだ。
それが今日になって、どこかの山中で私が倒れていたのが発見され、病院に運ばれた。


―――全く記憶にない。


私の記憶は、日付からするとたぶん一昨日の学校で、園子と今度の休日に買い物へ行こうと計画している所で途切れている。

そう、ここ1〜2日の記憶がないのだ。

思い出そうとするとこめかみにズキンと痛みが走り、それを邪魔しようとする。
頭の中はやっぱり霧がかかっているみたいで、その先がどうしても見えない。


でも、何か大変なことが起こったような気が―――――


「では蘭君。思い出したらでいいから、何か分かったら連絡をしてくれるかね?」

そう言い残し、目暮警部達は少しがっかりしたような表情で帰って行った。



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