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あらためて申し上げます。
この小説はあくまで「真・恋姫無双」のキャラクターを拝借して、
「三国志演義」を改変した「架空戦記」のつもりです。
したがいまして、こんなのは「恋姫」じゃないと、お思いの方には、
もう一度、お詫び申し上げます。

さて「演義」でも、あまり出番のない、脇役たちですが「正史」「演義」では、
こんなキャラだったりします。
前回から今回にかけてあまり出番を作れなかったので、ここで救済します。

『簡擁』
旗揚げ当時からの古い同志としては、関羽・張飛の武勇の影に隠れがちで、
文官ポジションとしては、後から来た孔明・鳳統に取られている感じだけど、
旗上げ時点では“スポンサー”の1人ということもあって、ある意味では関・張以上に主要なメンバーで、
また、孔明が来るまで、人材不足だった文官ポジションを何とか埋めていました。
何のかんのといって、結局、蜀まで付いて行きます。

『張世平』
馬商人。「演義」では、劉備たちに軍馬と資金を「投資」します。
「正史」の劉備一党は張世平の用心棒だった可能性があり、北方謙三氏などは、この説です。
当時、いい馬を仕入れられるのは、騎馬民族との国境である長城の辺りしかないので、
治安によってはハイリスクでも、それなりのハイリターンのある商売だったでしょう。
したがって、前回の一行が乗って行ったり「4輪車」を引かせたりした馬も、彼の提供でしょう。

『校尉鄒靖』
後漢の武官では、将軍の次の階級が校尉。
「演義」では、彼の立てた志願兵募集の高札が「桃園の誓い」の切欠でした。
最初に、劉備たちが接触する官側の人間になります。
―起―
講釈の三『黄巾の乱賊蒼天を殺し 同志おのおの決意を新たに出陣す』
幽州涿(たく)郡の群城内、その市場に立てられた高札の前、
桃香もとい劉備玄徳が演説している。
「この前は三蔵法師だったが、今度はジャンヌダルクだな」
さまになっているとは、正直言い難い。しかし、何とかしてやりたくなるのである。
後ろから見ている一刀でもそうなのだから、いつの間にか、市場に集まっていた群衆が、ワイワイ集まっていた。
頃合を見て、無論、演説している当人よりは、冷静な同志が合図して、こう決める。
「私たちには、天が味方しています」
ここで、光り輝く「天の御遣い」の出番という訳だ。

「(やっぱり、こんな時代なんだよな)」
「天」とか、そういう何か人以上の力に頼りたくなる様な時代。だから、黄巾なんかもあれだけ好き勝手出来るんだ。
実は、誤解があるのだが。なまじ「三国志」を知っているが故の誤解が。

ともあれ、次第に義勇兵は集まり、持てる者(つまり黄巾に略奪される物を持っている者)
からは資金や物資の提供もあり、次第に軍勢はささやかにしても整い始めた。
ただし、せっかく集まった兵からの脱落者もいない分けでない。何せ、愛紗もとい関羽と鈴々もとい張飛の練兵たるや「フルメタル何とか」の類だから。
逆に、それで「生き残った」兵は、それなりのレベルにある事になる。
それに、ただ闇雲にシゴいている訳でもない。訓練計画を立てているのは伏竜鳳雛だ。
その陣形は、一刀には見覚えがある。そう「三国志」ファンなら知る人ぞ知る「八陣図」だ。
とはいえ、実戦を経なければ、八陣図もダンス同然だけど、それでも「ダンス」はさまになりだし、
軍勢全体も「1個大隊」位は揃ったあたりで、高札を立てた当人から、呼び出しが来た。

校尉鄒靖の呼び出し内容は、早い話が出撃依頼だった。
一応、地元では名のある簡擁が代表で聞いて来たところによると、
どうやら「1個連隊」規模の黄巾賊が、接近中であり、
校尉の立てた高札に応じるつもりなら、追っ払ってきて欲しいという事だ。
「依頼」なのは、所詮「私軍」なので「命令」を受ける立場でないという事。
したがって「公認」の軍になれるかどうかも、これからの手柄次第なわけで、それを含めて断る理由は無い。
かくて、初陣の時はきた。
・  ・  ・  ・  ・
郡城の門が開き、まず陣頭に立つのは、3騎の美少女。
そして、にわかか造りの軍にしては、整然とした歩兵の縦列が続く。
その中軍の「4輪車」には、白羽扇を手にした軍師コンビ。
そして、いま1台には、光輝く「天の衣」をまとった「天の御遣い」
軍列の後半は「木牛流馬」と名付けられた(この世界の孔明もしっかり発明していた)
輸送車を連ねた輸送隊を兼ねている。
進軍の先に待つのは、蜀の国か、天下太平か。
――― ――― ――― 
行軍すること数日、おそらく明日は敵に接近する。
その晩、天幕の中では、作戦会議が行われていた。

まず、勝つ。これは絶対だ。
さらには犠牲はなるべく少なく。これも、そんなに変でもない。特に主将が桃香なのだから。
そこで、朱里と雛里の立てた作戦とは、
「まず鈴々ちゃんが突入して、敵の主将か副将の内、先頭に出てきている方を倒して下さい」
「突撃、粉砕、勝利なのだ―っ」
「次です。これで、敵の出足が止まるはずです」
「つまり、主導権を奪う」
「そうです。その間に愛紗さんが騎兵を率いて敵の後ろに回って、今度は前方に追い立てて下さい」
張世平の提供した軍馬と、愛紗たちの練兵で、百騎余りながら、それなりの騎兵が揃っている。
「それだと、本軍の方に追いやる事になるな」
「そうです。そのまま八陣図の中に引き込んで、撃破します」
「だがそれでは、姉者とご主人さま、それにお主らだけの本陣に敵を追い込む事になるぞ」
「やってみせます」
桃香と「天の御遣い」のカリスマからくる士気、これまで鍛えた兵の連度、必殺の筈の陣形、そして伏竜鳳雛の戦術。
これだけ揃えば、鈴々に出鼻を叩かれ、愛紗に追い立てられ、半分崩れた敵位は撃破出来る。
出来なければ、関羽・張飛の武に頼った以上の戦いはこれから出来ない。
「それに、出来るだけ、ここで劉備軍の名を大きく広く響かせる必要があります。桃香様の理想のために」
「流石に全滅はさせられないでしょう。しかし、ここはバラバラに逃げ散ってくれても、目的は達せられます」
「つまり、逃げ散った賊どもが、わが軍の名を宣伝してくれるという狙いか」
「そうです。ただし敵の主将は逃がさないで下さい。気の毒ですけど」
「承知した。では、1つ派手にやるか」
――― ――― ――― 
翌日、八陣図に布陣した劉備軍の前に、主将、程遠志、副将、鄧茂(とうも)に率いられた黄巾軍が出現した。
「なんだ」
どう見ても、自分たちより少ない。おまけに、官軍らしくも無い。
舐めた。こうなると、賊軍である。官軍がそう呼ぶだけでなく、本当に賊が乱に呼び寄せられた集団といっていい。
一気に揉み潰す積もりになった。

「♪蒼天已死♪黄天當立♪歳在甲子♪天下大吉♪」
「♪蒼天已死♪黄天當立♪歳在甲子♪天下大吉♪」

「………」
北郷一刀は、内心ビビっていた。
所詮、平和ボケした国から来た学生に過ぎない。
もっとも、一刀だけでもない。この時代とはいえ、修羅場の経験があるのは、
愛紗と鈴々ぐらいだろう。他は全軍、初陣といっていい。
作戦を立てた、朱里と雛里も「はわあわ」も出ず、白羽扇を握り締めている。
4輪車のそばの馬上、決心をにじませた貌の桃香。
それでも数秒間、一刀と見詰め合うと「靖王伝家」の宝剣を握り締め、抜き放つ。
白羽扇を握り直して、軍師もタイミングを計り始めた。

「♪蒼天已死♪黄天當立♪歳在甲子♪天下大吉♪」
やっぱ、ヤバい方向に宗教が掛かってやがる。これだから、カルトはテロになるんだ。
まだ、一刀は誤解していた。

遂に、宝剣が、指揮棒よろしく振り下ろされ、
「突撃―っ」
鈴々が真一文字に突入し、文字通り「激突」した賊軍が停止する。
もっとも、賊将、程遠志はもう二度と進軍不可になっていた。

中軍にいた副将、鄧茂は何とか突撃から停止して乱れた軍列を立て直そうとするが、
その前に愛紗を先頭に敵の側を駆け抜けた騎兵が、今度は後ろから襲い掛かった。
まるで、ドミノの様に前方に押し出される。その前面に、ガッチリ布陣した盾と矛が立ち塞がる。
もはや、軍列も無しに右か、左にバラバラに方向転換するが、
右に行った者は、クランクの様にさらに方向転換させられ続け、左に行った者は、Uターンさせられ、
軍師の白羽扇の振られるままに変化する、盾と矛で作られた迷路の中で、右往左往するばかり。
三々五々、わざと開けられた出口から、吐き出されると、そのまま思い思いに逃走しようとする。
「雑魚はさっさと逃げろ。主将は何処だ」
そう一喝されて、情け無くも鄧茂を何人かが押し出そうとした。
「裏切り者!?!」
ほとんど八つ当たりに、さっきまでの部下を切りたてて、思い出した様にギョッとばかり振り向く。
待っていましたとばかり青龍偃月刀が引き裂いて、それで全て終わった。
後は、蜘蛛の子を散らすように、生き残りは逃げ散って行った。
――― ――― ――― 
派手にやった。ええ、まったく。
凱旋してくると、簡擁とか、張世平とか、桃香の母とかは大歓迎だったが、鄒靖はというと、唖然としていた。
「信じるしかない。あんな女子供の率いる雑軍がこんなに強いなどと…」
しかし、それでも、校尉までは出世する男である。
早速、この戦勝を報告することにした。それも、出来る限り自分の手柄として。
とはいっても、それほど面の皮の厚い方でもない。それは両方の幸運だったろう。劉備軍の誰かの性格からすると。
ともかく、適当に「義軍」の機嫌はとるつもりの校尉に対し、この郡での窓口である簡擁を通して、申し出られた要求に対して、むしろ「それでいいのか」と言いながら、応える事にした。
――― ――― ――― 
校尉鄒靖から手に入れたのは、あちらこちらの官軍への紹介状。
「本当にそれでよかったのか」
愛紗などは「はわあわ」に問い直すものだった。
「すみません。確かに桃香様のふるさとではありますが、それでも桃香様の理想は涿郡だけを救う事では無い筈です」
「そうね。もっと多くの人のために、この国のもっと遠くまで行かないと」
「ですから、これから私たちは、この国の中で黄巾賊に苦しんでいるあちらこちらの地方で戦いながら」
「桃香様の理想を実現する好機を探していくことになります」
「そのために、当面役立つのが、この紹介状です」
・  ・  ・  ・  ・
一日、桃香は楼桑村に帰って、母娘のときを過ごすことになった。
一方、志願してきた義勇兵の中には、故郷を守りたい。あるいは、守りたい人がいるから、志願してきた者もいる。
そうした者たちは、この際、置いて行く事にした。
幸い、校尉鄒靖はこの時代の「官」としてはマシな方らしい。少なくとも、任地を捨てて逃げ出すことは無いだろう。
前回の大勝もあって、しばらくは涿郡は安全そうだった。
「しかし」愛紗などは、せっかく鍛えた兵が減るのに、不平がないわけでもない。
「その点は、余り心配することも無いでしょう。少なくとも、今回の勝利とその評判で、兵はむしろ増える筈です」
――― ――― ――― 
郡城の城門、前回よりはやや少なくなった「義軍」が、前回よりも名残惜しそうな人々に見送られて、出発していく。
これが、見納めとなった者もいただろう。
・  ・  ・  ・  ・
進軍することしばし、いつのまにか、あちらから「1個小隊」またあちらから、という感じで現れては、
黄巾をむしり取って、平伏する。
「なる程、これも計算の上で逃がしたのか」
それに、校尉から木牛流馬に乗せられるだけの当面の物資はパクって来ていたのも。
・  ・  ・  ・  ・
さて、とりあえず行く先を決める段になって、少しばかり揉める事になる。
校尉から紹介状とともに各地の官軍についての情報も仕入れてある。
無論、鵜呑みにはせず、わが軍師が分析して正確度を上げてある。その情報によると、
「敵の首領、張姉妹はずいぶん、移動し続けているな」
したがって、敵の本陣を狙う(現時点での実力がある無しは置いといて)という戦略では、狙いを絞れない。
「(俺の知っている話しだと、張角は故郷で本拠地の冀州鉅鹿から余り動かなかった筈なんだかな。布教のためかな)」
まだ、一刀は誤解に気付かない。

その張姉妹を探しつつ、戦っている、官軍中の遊軍ポジションと言うべき軍を率いている将軍を、盧植と言う。

盧植
この当時を代表する儒学者にして、エリート官僚。
中華帝国では伝統的にこの両者は一致する。
しかし、王朝末期の迷走のあおりで、一時失脚していた時、
地方で私塾を開いていた。その頃の門下に、劉備がいたという。
その後、黄巾の乱が起こったため、再び将軍として呼び戻される。

当然、桃香としては、どこかの官軍に合流するなら、恩師を助けに行きたいところだが、
「なあ、桃香。盧植先生という人だけど、もしも、前線を視察に来た宦官とかがさ、賄賂を要求したら、
 適当に機嫌をとるとか、出来る人かな」
「演義」では、そのため、罪をかぶせられて護送される盧植に劉備一党が出くわして一騒動、という場面がある。
「桃香の恩師には気の毒だけど、多分そういう騒ぎに巻き込まれる事になるんじゃないかな」
「うーん、でも…」
朱里や雛里に一緒に説得してもらっても「もしも、水鏡先生だったら…」などとスネられ、愛紗にまで加勢してもらって(鈴々はこういう場合、場の和ませ役である)ようやっと納得させた。

では、何処へ行くかと言うと、
冀州から移動した張姉妹は、後漢帝国の中心近く、
人数的にも主力と言うべき、最も多くの黄巾賊が暴れているあたりへ、向かった様だ。
その後を追走する様に進軍すれば、地道にかつ着実に戦功を稼げそうだ。
――― ――― ――― 
そして、地道に着実に黄巾賊を追い払って功績をあげ、同時に自軍の経験値を上げる。
開放した街や村から、感謝とともに、補給を受ける。
故郷を無くした者や、降参した元賊で、兵を補充する。
時には、いい経験程度に苦戦する。
…  …  …  …  …  
そんなこんなで転戦していたところへ、新しい情報が入手できた。
やはり、盧植は将軍から失脚したらしい。
それでも、無実の罪は帝都に召還された後で晴れた。
しかし、将軍には復帰できず、帝都で文官になっている。
そこで、代わりに推挙されたのが、地方軍閥の1人で、かつての門下の1員、公孫賛だとか。

公孫賛
白馬をそろえた騎兵「白馬義従」を使いこなし、
騎兵の本場、長城の向こう側の異民族からも「白馬長史」に気を付けろと言われた。
流浪の傭兵隊長、劉備があちらこちらで雇われた群雄の中では、比較的最初に組んだ相手。
盧植門下の兄弟弟子、故郷に近い幽州の軍閥と言う地縁などから、自然な選択だったのだろう。

ほぼ、同じ理由で、反対意見は出なかった。
何時かは、どこかの官軍か、官命を受けた軍閥に合流するなら、公孫賛が無難だろう。
という事で、公孫軍に合流して、今度こそ恩師の敵を討つ、という事になった。
・  ・  ・  ・  ・
公孫軍に合流した、劉備軍がやがて進軍していく先では、
さらに、2軍が合流することになる。
「義」を掲げるこの軍に対し、
「覇」を掲げる軍と、
「絆」を掲げる軍。
風雲は英雄を呼び続ける。
次回は、オリキャラがいる陣営に力点がいくつもりです。

それでは続きは次回の講釈で。
次回は講釈の四『治世の能臣官命を受け 乱世の姦雄野望に焼ける』の予定です。

― 蛇足 ―

「一刀が誤解している」と書いている通り、この「外史」でも「役萬姉妹」です。


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